Health2.0論の新展開

Health2.0コンファレンス主催者であるマシュー・ホルト氏が、新しいHealth2.0論スライドを公開した。これは、HHS(米国社会保険福祉省)のNCVHS(National Committee on Vital and Health Statistics)およびAHRQ(Agency for Health Research and Quality)の会合でプレゼンテーションされたものである。

プレゼンテーションの相手が医療統計などに関わるセクションであるためか、医療統計のデータソースというアングルからHealth2.0を捉えているところに、いささか違和感を覚える。やはり従来と同じく、冒頭部分はWeb2.0から説き起こされているのだが、これも現在ではいささか古色蒼然という感もある。しかし一方では、これまでのHealth2.0論にはなかった新しいアイデアもいくつか散見される。 続きを読む

ビジョンなき「IT戦略」

政府は経済危機に対応した「IT新戦略」を準備しているようだ。その四つの重点分野のうち「医療現場のIT環境強化」というのがあるが、これは明らかにオバマ政権の医療IT強化政策を模倣したものだろう。その中身は次のように報じられている。

医療分野の目玉は、電子化した個人の健康情報を各地の医療機関で共有する『日本健康情報スーパーハイウェイ構想』(仮称)。医療機関同士をつなぐ光ファイバー網を新たに整備。画像診断情報などを瞬時にやりとりできるようにすることで、地域医療や救急医療の改善にもつなげる。(日経3月2日朝刊)

この『日本健康情報スーパーハイウェイ構想』とやらは、そのネーミングのひどさは置いておくとして、どうやらPHRをコアとする新しい医療情報ネットワークを指すらしい。たしかにPHRは、これからの医療情報システムのコアを担うことは間違いない。従来、電子カルテやEHRなど医療機関にフォーカスした情報システムばかりが注目されてきたのだが、医療機関から消費者個人へと優先順位を転倒したPHRの発想は、単に情報システムだけではなく、今後、医療全体が進むべき方向性を指し示していると考えられる。今後の医療は、ますますパーソナル化を強める方向に進化するであろう。 続きを読む