医療情報の流動性

BoozAllenHamilton

昨年末頃から、米国のHealth2.0コミュニティ周辺で「医療情報の流動性」(Health Information Liquidity)という言葉を見かけることがしばしばあった。しかしTOBYOの仕事に没頭していたこともあり、この背景を調べることまで手が回らなかったのだが、なぜか「これは重要な言葉だぞ」という直感があった。

というのは、特に日本で医療情報利用の問題を語るとき、過度に「プライバシー&セキュリティ」というクリシェが持ち出される傾向があり、これに対し少なくない違和感を持っていたからである。むしろ日本では、医療情報のフロー的側面よりも固定的ストックの側面が強調されるあまり、EMRなどクローズドな医療情報システムしか普及しない土壌が出来上がってしまったのではないだろうか。これは「Information wants to be free」というweb2.0以来の新たな情報観に照らしてみて、明らかに逆行する時代遅れのものである。 続きを読む

PHR市場の現状と近未来

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今後のHIT(医療情報技術)の中核的システムは一体何か?。この問に対して少し前なら米国政府のNHIN構想やRHIO、あるいはEMRやEHRを持ち出す人が多かっただろうが、マイクロソフトのHealth VaultやGoogleのGoogle Healthの登場によって、PHRこそがこれからの医療の中心的な情報システムになるとの見方が多くなってきている。またこの背景には、クラウドコンピューティングの台頭という技術トレンドも大きく影響しているだろう。

一昨日、米国ChilmarkResearch社から、PHRの現状と近未来を大胆に予測する素晴らしいプレゼンテーション・スライドが発表されたので早速紹介しておきたい。今後のHITとPHRに関心を持つ人には必見のレポートである。

  1. 今日、PHR市場の現状はどうなっているか
  2. ヘルス・クラウズ(Health Clouds)の登場
  3. 予測

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今年もこだわっていくこと

 先週末予告した通り、1月10日土曜日にTOBYO事典のブログ検索サービスを公開することができた。収録闘病サイト数も1万1千件を超え、これで当初から構想してきたTOBYOの基礎は一応出来上がってきたと言える。闘病ネットワーク圏がどの程度の大きさを持っているかはわからないが、TOBYOがこの闘病ネットワーク圏のディレクトリや検索エンジンとしての役割を果たすことができれば、あるいは闘病ネットワーク圏を構成するサイトや闘病者の交流促進に寄与できれば、これ以上に嬉しいことはない。 続きを読む

明日10日、バーティカル検索エンジン「TOBYO事典」(ブログ検索)をリリース

TOBYO_Dic

TOBYO事典は、ウェブ上の闘病ネットワーク圏に蓄積された闘病者の知識と体験を横断的に全文検索する検索エンジンとして構想した。昨年5月末からブログ以外の一般サイト検索テスト運用を開始し、徐々に検索対象サイトを増やしてきた。12月に入って検索対象はTOBYO収録一般サイト2061となったが、これら一連のテスト運用で、一般サイトについてはほぼ満足のいく検索サービスが提供できるようになった。

だが問題はブログ検索であった。秋口から独自検索システム開発に着手してきたが、予期せぬ事態が多発し、大幅に開発計画は遅れてしまった。試行錯誤の末、ようやく明日公開できる段階まで来たが、まだまだ今後改善しなければならない余地を残している。とりあえず一般サイト検索とブログ検索をスイッチで切りかえる形で公開することになったが、これもいずれ一本化しなければならない。ユーザーは、一般サイト検索とブログ検索を区別しているわけではないからだ。またクローラーや本文抽出機能の精度の問題もあり、取得データ件数がまだ十分ではない。これも徐々に積み上げをはかり改善していくしかない。 続きを読む

ウォルマートのリテールクリニック: Walk-In Telemedicine Health Care

昨夏、ウォルマートのリテールクリニック「Walk-In Telemedicine Health Care」がヒューストンでオープンした。先行する他のリテールクリニックと違う点は、医師が待機する拠点センターと診療所をオンラインで結び、消費者にリアルタイム遠隔医療を提供するところ。患者はオンラインで直接医師と会話することができる。

「遠隔医療が新たな展開をみせている。今や、買い物ついでにドクターに診てもらえるようになった」。CNNビデオニュースが伝えている。

以前のエントリでも触れたが、このような消費者ニーズ発想が、日本の医療に最も欠落しているものである。また、いくら消費者志向を強めようとしても、規制やギルドの抵抗などが自由な業態開発を妨げている。

「希望の国のエクソダス」(村上龍)の例のセリフを借りて言えば、次のようになるのか。

この国の医療には何でもある。でも、消費者発想だけがない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.