PHR市場の現状と近未来

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今後のHIT(医療情報技術)の中核的システムは一体何か?。この問に対して少し前なら米国政府のNHIN構想やRHIO、あるいはEMRやEHRを持ち出す人が多かっただろうが、マイクロソフトのHealth VaultやGoogleのGoogle Healthの登場によって、PHRこそがこれからの医療の中心的な情報システムになるとの見方が多くなってきている。またこの背景には、クラウドコンピューティングの台頭という技術トレンドも大きく影響しているだろう。

一昨日、米国ChilmarkResearch社から、PHRの現状と近未来を大胆に予測する素晴らしいプレゼンテーション・スライドが発表されたので早速紹介しておきたい。今後のHITとPHRに関心を持つ人には必見のレポートである。

  1. 今日、PHR市場の現状はどうなっているか
  2. ヘルス・クラウズ(Health Clouds)の登場
  3. 予測

このレポートは以上の三つの視点から構成されている。そのうちやはり目を引くのは「ヘルス・クラウズ」という言葉であろう。これは端的に言ってPHRというものが、クラウドコンピューティングを活用した医療情報システムの方向へと進化することを指し示している言葉だ。

さてこのプレゼンテーションの中で、Health Vault、Google Health、Dossiaの三大PHRがそれぞれ評価されているのだが、現状では次のようにHealth Vaultの先行と優位性を指摘している点が注目される。たしかにパートナー企業群の獲得において、Health Vaultは大きな差を競合につけ始めている。

  • Dossia: どこにあるんだ?
  • Google Health: 行き詰っている
  • Health Vault: 拡大

特にGoogleに対してだが、「彼らは真剣に医療に取り組んでいるのか?」とかなり辛辣な批評を加えている。Dossiaに至っては「徐々に消えて行く」とまで酷評している。またPHR市場の発展段階を「四世代」で予測し、第三世代でクラウドコンピューティング技術を活用した医療情報アグリゲーション・サービスが始まり、第四世代では「Convergence」とのコンセプトで「消費者個人への諸医療情報サービスの集中収束」というイメージを提起している。

最後にプレゼンテーションは、PHRという言葉自体がもはや時代遅れになっていると指摘しているが、たしかに過去の紙やスタンドアローン・アプリケーションのPHRとクラウドコンピューティングを活用したシステムを同じ名称で呼ぶことが、最早難しくなっていることは間違いないだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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