PHR: MS「Health Vault」の利用イメージ

MS「Health Vault」の使用イメージ

マイクロソフトのPHR「Health Vault」は、Google Healthよりも約半年早く、一昨年秋にリリースされた。その後の両者の競争状況を見ると、Health Vaultがやや優位に立っているのではないかと評されることが多い。だが、一般消費者には両者の差異は分かりづらく、「結局、大差ない似たようなシステムではないのか」と疑問を呈するブロガーまで出てきている。

独自性の明確化と差別化が求められているのだが、その意味もあってか、マイクロソフトはHealth Vaultのプロモーションビデをいくつか発表している。上のビデオは、そのうちの「Health Vault in Action」と題された一本。実際に家庭で、どのようにHealth Vaultが使われるのかをわかりやすく見せている。血糖値、血圧などの家庭用計測デバイスとHealth Vaultが連携する様子がよく分かる。PHRのデータ取り込みについては、どうしても医療機関側のEMRやEHR経由を想起しがちだが、糖尿病、高血圧症といった慢性疾患では家庭用計測デバイスが活躍する。ビデオでは、いずれのデバイスもワイヤレスでPCと交信しているが、このあたりちょっとしたことなのだが、使用感は格段に違うと思う。

考えてみるとこれまで日本でも、万歩計や体重計からPCへ、さらにネット経由でセンターにデータを集めるようなサービスはあったのだが、これらとHealth VaultなどPHRはやはり別次元のものだと思える。なぜならHealth VaultをはじめPHRが実現しているのは、すべての医療シーンを串刺しするような個人医療情報利用なのである。たとえば家庭用デバイスで集められた個人医療情報は、一度PHRへ集約され、さらに今度はあらゆる医療機関で医師によって呼び出され利用される。あるいは逆に医療現場で計測されたデータは、PHR経由で、家庭からいつでも消費者によって呼び出すことができる。

これまでのEMRやEHRが実現してきたのは、せいぜい特定医療機関内、あるいは医療界に限定した個人医療情報フローであった。一方、上に述べた万歩計や体重計によるデータサービスのデータフロー範囲は、家庭とサービス事業者に限定されていたのである。PHRはこのような両者のデータフロー範囲の限界を打破し、すべての関係者のすべての医療シーンにおいて、シングルソースのデータを利用可能にするのである。そのことによって「ケアの継続性」が確保され、医療重複を省くコストダウンが実現される。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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