先週、Google Healthが正式に発表され、これで「PHR三大プラットフォーム」が出そろったことになる。Google Healthについてその後、次の諸点が明らかになっている。
・広告は掲載しない
・米国以外の海外市場への進出予定は、今のところない
・パトートナー団体が続々決定
Google Healthのビジネスモデルは、今のところまったく視界不良だ。昨秋の段階では、マリッサ・メイヤーVPが一部有料化まで示唆していたが、この可能性はもともと低かった。次に広告モデルであるが、プライバシー団体からPHRに対し「プライバシー&セキュリティ」追及の動きがあり、これを刺激するような広告モデル採用は得策でないと判断したようだ。また、海外市場展開であるが、これについてエリック・シュミットCEOは「他の海外市場は国営医療制度が多く、規制障壁が高い」と述べ、当面、米国以外の展開を否定している。またパートナー企業だが、リテールクリニック、医療機関、保険会社、医療支援団体、検査ラボなどが続々と決定しているようだ。
一方、Health Vaultだが、参画パートナーのPHA(Personal Health Application)開発を容易にするため、「Google Health」公式発表に先駆け、次のような三段階の開発計画を先月発表した。
- すべての多様な環境に対応し、PHA開発を促進するための「包装されていない」(オープンな)多数のライブラリーを創造する。これらのライブラリーは、HealthVaultのために新しく構築されたCodeplexプロジェクトに収納されるだろう
- 今年の春中に、HealthVaultグループは完全なソフトウエア開発キット(SDK)をCodeplex上に公開する
- 同グループは、完全なHealth VaultプラットフォームのXMLインターフェイス・プロトコルをリリースする。これはすべての仕様書公開を含む。
これら従来にないオープンな開発計画によって、マイクロソフトはHealth Vaultパトナー企業(PHAベンダー)にPHA開発を容易にするためのフレクシビリティと開放性を提供しているのだが、また一方、他のプラットフォームでも動くPHAを開発するようにシグナルを送ってもいる。つまり、Google HealthでもDOSSIAにおいても動くアプリケーション開発をほのめかしている。Health Vaultのチーフ・アーキテクトであるショーン・ノーラン氏は、HIMSSでGoogleHealthの展示ブースを見て、「誰もが皆、われわれがそれ(Google Health)をどう思っているかを聞きたがるんだ。むしろ逆だね。彼ら(Google)が(Health Vault)をどう思っているかを聞きたいぐらいだ。(中略)私はGoogleに、是非ともわれわれのインターフェイスを採用してもらいたいと考えている。」とブログ「Family Health Guy」に書いている。
Health Vaultに限ってみると、マイクロソフトは従来にないオープンなコラボレーションを追及しているように見える。だが、Googleが彼らのインターフェイス・プロトコルを採用する見込みはなさそうだ。今回の正式発表で、Google Healthは「プラットフォーム」と説明されているが、そのPHRサービス自体は単体で十分に機能するものである。それに対し、HealthVaultは本来の意味での「プラットフォーム」を目指しているから、それ自体で動くPHRではなく、誰か第三者のパートナーが、何がしかのサービスを開発してくれなければ如何ともしがたいのである。このあたりの両者の差異が、今後のPHR市場競争にどのように影響してくるか、非常に興味深い。
三宅 啓 INITIATIVE INC.