英国CHIの遺産

HC

昨日(7月15日)の朝日新聞夕刊を食卓でぼんやり見ていると、「変わる英国医療。押し寄せる市場化の波2」という記事が目にとまった。「公的機関が満足度調査」という見出しがついたその記事は、保険医療委員会(HC)が実施している「患者満足度調査」を紹介し、英国政府の医療改革が、患者による病院選択の拡大などを通じて、医療の市場化を促進するものと報告されている。 続きを読む

稀少難病疾患SNS、RARESHARE登場

 RareShare

昨日のエントリでPatientsLikeMeに関連して触れておいたが、稀少難病疾患を対象とした患者SNS「RARESHARE」 が先月ローンチされている。すでにRARESHAREでは、600疾患のアクティブ・コミュニティが立ちあげられているが、これを秋には1000まで拡大するとのことである。トップページにも書かれているが、稀少疾患とは言え、それら患者すべてを米国とヨーロッパで合計すると3000万人近くになる。つまり医療のロングテールに着目し、それら稀少疾患患者をネット上で一定のボリュームを持つコミュニティに集め、新しいサービス提供機会を作り出そうとしているのである。 続きを読む

患者SNS「PatientsLikeMe」の概要


現在、数ある患者SNSの中で最も異色であり、しかも最も成功しているとされる「PatientsLikeMe」の概要を伝えるスライドを入手した。昨年末に発表されたもので、すでにほとんどの事柄は周知されているとも言えるが、手短にその特徴を把握するには便利だ。また先日、「Social Uses of Personal Health Information Within PatientsLikeMe, an Online Patient Community: What Can Happen When Patients Have Access to One Another’s Data」と題された本格的な論文がJMIRに発表されたが、いずれ紹介したい。

PatientLikeMeのように難病にフォーカスした患者SNSといえば、先月、米国でかなり大規模なSNSがローンチされている。日本でも一部で難病特化型SNSの試みが始められているようだが、この分野は今後非常に注目される分野である。TOBYOでは、以前から「疾患のテール部分」に位置する難病の闘病記や医療情報に注意を払ってきた。この分野は今後の医療フロンティアでもあり、今後、新機軸をいくつかTOBYOに投入したい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

500エントリ

一昨年の年末から書き始めた当ブログは、今日めでたく500回目のエントリをポストするに至った。思えばこの一年半の間に、従来にない新しい波が世界の医療シーンに押し寄せてくる様を、幸いにもわれわれはリアルタイムで目撃してきたのではなかったか。その意味ではこのブログは「幸運なブログ」だったと思う。

当初はこのブログのタイトルが示すように、われわれの新規事業「TOBYO」を開発する上で必要な情報をメモする程度の考えでスタートしたのだが、同時に伝わってきたアメリカのHealth2.0の盛り上がりに刺激を受け、「世界の医療変革ムーブメント全体の見取り図をつくろう」などと大それたことまで考えるにいたった。だが、そのようなマクロな透視図を作る作業は、結果として、われわれの「TOBYO」を客観的に評価し位置づける上でも必要なことであった。

また、世界の動向を見ることによって、日本の医療を相対化する視点を獲得することができたと思う。従来からの「連続体」として、あるいは所与の動かぬ環境として日本の医療を見るのではなく、Health2.0というまったく新しい視点から「日本医療」を批判的に検討することができたと思う。そしてその上で、TOBYOが果たすべき役割も次第に明らかになったのである。

また振り返ってみると、2005年あたりを境として、当方の情報収集方法は著しく劇的に変わった。それ以前は新聞やニュースサイト中心の情報収集であったのが、2005年以降はブログ中心の情報収集に変わったのである。さらにブログを始めてからは、海外のブログを毎日大量に読み、その中で重要な出来事をピックアップし、それを素材として自分の考えをエントリにまとめる。このように「ブログを読み、考え、ブログを書く」というサイクルを日課とし、「情報を集めながら情報を配信する」というスタイルを継続することになったのである。これによって、確かに自分の中で「何か」が大きく変わったような気がする。

この世界には、実際にやってみなければわからないことは多い。その中でも、ブログは最たるものかもしれない。日本ではHealth2.0もPHRもまだほとんど知られていないが、これらに関心を持つ人なら、とにかくまず自分のブログを立ち上げよう。「プディングの味は、食ってみればわかる」。海外のHealth2.0シーンを見ても、そのメインの活動ステージはブログである。日本でHealth2.0をテーマとするブログが多数登場することを期待したい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

新しい患者像と患者SNSをめぐって

ときどき「患者SNSはどうあるべきか?。またそのフィージビリティは?」という議論をすることがあるのだが、米国の状況を見ていると、PatientLikeMeのような特化型患者SNSが成功しているのに対し、いわゆる一般的な汎用患者SNSはさほど成果を挙げていないようである。この点をどう読むかが、患者SNS開発の一番重要なポイントであるだろう。

患者SNSに対するユーザーニーズは、どうやら「似た者同士の交流」というような、誰もがすぐに思いつくものとは、まったく違うものとして考えなければならないのではないだろうか。「心の安らぎ」とか「慰安、癒し」などをシェアする場としてではなく、先日、ニューヨークタイムズがPatientLikeMeの紹介記事にいみじくも付けたヘッドライン「Practicing Patients」が示すように、「アクティブに病気を克服する実践的な活動の場としての患者SNS」という新しいイメージを持つことが、いまや必要になっていると思うのだ。 続きを読む