開発中「がん闘病CHART」のフィルタリング機能

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現在、クチコミ検索エンジン「がん闘病CHART」デモ版を開発中(上図:サイト数等ダミー)。まだデザインなどはラフなイメージ段階だが、ネット上に公開されたがん闘病サイトのうち「乳がん、胃がん、肺がん、大腸がん」について、「検査・診断、治療法、薬、病院、闘病生活」の各ジャンルで、患者が最も話題にしているクチコミ・キイワードをランキング・チャート形式で可視化する。

チャートインしているキイワードをクリックすれば、バーティカル検索エンジンの検索結果が表示される。さらに、検索結果をそれぞれのジャンルに応じた絞りこみ項目でフィルタリングすることができる。このフィルタリング項目の設定が、このサービスの肝になると考えている。

たとえば薬CHARTでは「副作用、費用、処方」のフィルタリング分野を用意している。「副作用」分野を見ると「吐き気、嘔吐、アレルギー反応、発熱、食欲不振、倦怠感、下痢、便秘、腹痛、脱毛、口内炎、白血球減少、手足のしびれ、皮膚や爪の黒ずみ、貧血、関節痛」など、かなり細かくフィルタリング項目を設定している。検索結果画面には各フィルタリング項目ごとのヒット件数も表示される。一口に「副作用」といっても、実際の患者体験に基づくクチコミをここまで細部まで可視化するのは、おそらくはじめての試みではないかと思う。 続きを読む

仮想対談:「 ビッグデータ、Patient Portal」

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客) ようやく、春らしくなってきたね。

主) 今朝、石神井公園を歩いたが桜はまだだ。新宿と違って、こっちは梅はだいたい終わったね。あちこちでウグイスが鳴いていたな。

客) ところで、TOBYOの収録サイト件数も3万4千件まで来たね。当初、「闘病ユニバースは約3万サイト」と推定していたけれど、もうそれを越えてしまった。

主) 今の時点で、だいたい5万サイトまで見えている。昨年あたりから、ブログで闘病体験を書く人は増えていて、中身も充実したものが多いような気がする。最近、特に印象に残ったものでは、先日、3月11日名古屋ウイメンズ・マラソン2012を走った乳がん患者の「メモ」というブログがある。これは質・量ともにすばらしい。

客) タイトルが「メモ」と素っ気ないが、中身はすごいね。乳がん患者になった人に、まず読むようにすすめているブログだ。

主) 最近の闘病ブログは全体としてかなりクオリティが上がってきている。自然発生的にネット上に生まれた「闘病ユニバース」だが、やっぱりそれ自体の歴史というものがあり、進化してきているのかもしれないね。

客) 誰かが最初に開発した闘病ドキュメントのフォームがテンプレートとして利用され、やがて、次々に新しい工夫が加えられるような「継承と発展」みたいなことが起きているのか。 続きを読む

TDR:TOBYO Document Research

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ようやく新宿にも春がきた。新宿御苑は梅が満開だが、ところどころ桜も咲き始めた。今なら、梅と桜を一挙両方観る贅沢が味わえる。昼休みにお弁当を持って行こう。

さて現在、先のエントリでも触れたように「がん闘病CHART」の開発を進めているが、実は同時に昨年来やり残していた仕事に再度取り組んでいる。dimensions開発の過程でカスタム・ソリューション・サービスを構想していたが、そのまま放置してしまっていたのだ。

dimensionsは、TOBYOプロジェクトで可視化した闘病ユニバースのデータをさまざまな観点から見ることができる汎用ツールである。ユーザーの目的に応じて、ユーザーがいろいろな使い方ができるように作ってあるのだが、「ツールよりも、結論をまとめたレポートが欲しい」という声もあちこちで耳にした。

また「ソーシャル・リスニング」ということ自体がまだ一般の企業には馴染みがなく、困惑する向きも少なくなかった。「リスニング」の基本文献であるステファン・ラパポートの”Listen First”だが、電通ソーシャルメディアラボが翻訳し、やっと来月4月12日に出ることになった。とにかくこういう基本テキストが出てくれなければ、なかなか社会的認知も進まないのであるが、だからと言って、これでただちに認知や理解が一挙に進むわけでもない。 続きを読む

患者学習ツール: 「がん闘病CHART」

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ある日突然、医師から「がん」を告知されたらあなたはどうするだろうか。まず突然の告知に驚き戸惑うだろう。その様子は「がん」のどの闘病ブログにも記されている。次に、あなたは医師から告げられた病名や病態や病期を調べるために、とりあえずそれらの言葉をGoogleで検索するだろう。あるいは、何をどのようなキイワードで検索すればよいかということ自体がわからず、途方にくれるかもしれない。そしてネット上には膨大な量の医療情報、闘病ドキュメントがあふれており、ひと通りそれらに目を通すだけで徹夜仕事になるかも知れない。そして次の日、あなたは書店や図書館で自分の病気のガイドブックを紐解くかも知れない。

おおむね、患者が最初に取る行動は以上のようなものだろう。これら一連の情報収集活動が何を意味するかを考えると、それらは「自分の病気についての学習行動」と言うこともできるだろう。さらにこの「学習行動」の中身をよく見てみると、その「学習」は自分の病気に関する医療分野の専門用語や固有名詞など「言葉の学習」であることに気づく。つまり患者は、最初にこのように自分の病気についての「基本単語の習得」という問題に直面するのだ。とにかく「基本単語」がわからなければ、Googleで検索することも、誰かに何かを訊ねることもできない。

この初期学習過程で十分な基本単語習得がなされなければ、患者は医療者とコミュニケーションすることができないし、自分の意向に沿った医療を選択することもできなくなる。つまりこの初期学習過程は、実は、その後の「患者の意思決定」のポテンシャルを決定する重要なファクターなのだ。そしてこの学習は、学習一般がそうであるように、誰かに代わってやってもらうことはできず、あくまで患者自身が自分でおこなわなければならない。

だが、患者に与えられた時間は少ない。治療方針を医師と協議するまでに、自分の病気の疾患概要、検査方法、治療法、薬剤など専門用語を習得し、自分の意向と選択方針を明確にしておかねばならない。しかもこれは、告知の衝撃さめやらぬ不安定な精神状態でおこなわれるだけに、余計に患者に取って大きな負担を強いることになろう。 続きを読む

続々開催される医療ITカンファレンス

Announcing Medicine X 2012 from Larry Chu on Vimeo.

前エントリでも少し触れたように、ここのところ徐々に「Health2.0」という言葉は、単に特定のイベント興行ブランド・ネームへと格下げされたかのような感が強い。なぜ「格下げ」が起きたかというと、Health2.0以外に多数の医療ITカンファレンスが続々と実施され、さまざまなムーブメントも立ち上がってきているからだ。その中でも、若者中心のスタートアップ企業が大挙結集して注目を集めたのがRock Health主催の“Health Innovation Sumit” で、今年1月サンフランシスコで開催されている。

また、最近注目されているのがこの9月開催される“Stanford Medicine X”。プロモーションビデオ(上)が公開されているが、自分のICD(植え込み型除細動器)データへのアクセスを主張して話題になったe-PatientのHugo Campos氏も参加する予定。

ちなみに、夏までに開催が予定されている主な医療ITカンファレンスは下記の通り。

Healthcare Experience Design Conference

TEDMED

Sage Commons Congress

Innovations & Investments in Healthcare

Mobile Health 2012

Digital Health Summer Summit

Kauffman Life Science Ventures Summit

三宅 啓 INITIATIVE INC.