メンタルヘルスSNS: Mental Health Social

MentalHealthSocial

メンタルヘルス患者、関係者、業者を対象としたSNS「Mental Health Social」が今月からローンチされた。標準的なSNS機能を一通り揃えているが、ターゲットをメンタルヘルスに絞りこんだこと以外に、これという新機軸は無い。

2006年のDailyStrengthから始まり、米国ではここ二三年の間に多数の医療SNSが登場したが、それも一通り出尽くした感がある。PatientsLikeMeとSermoのめざましい躍進がある一方、昨年発覚したDailyStrengthの行き詰まりと身売り、今年5月のTruseraの撤退など、医療SNSシーンは徐々に明暗をわけはじめている。イスラエルのiMedixなども、英語圏を中心に国際的な集客をしているのだが、今ひとつ伸び悩んでいる。 続きを読む

医療関連サイトの国際基準:HON

先週はクラゲサイト(テンプレサイト)などスパマーについて触れたが、これらが出現する背景として、医療関連サイトが準拠すべき基準が日本ではまだ確立されていないということもあるだろう。

海外ではHON、URAC、Hi-Ethicsなどの医療関連サイト基準があるが、最も普及しているのはHONコードだろう。HONコードは、医療関連サイトが守るべき原則として次の8原則をあげている。

  1. 医学的な/健康に関するアドバイスは、医学/健康に関する教育を受け、資格を持つものが提示していること。ただし、専門的な教育を受けていないものによるアドバイスであることを明確に示している場合を除く。
  2. 提示する情報は、患者と医師の関係を支援(support)するものとして設計されているものであり、これに置き換わるものではないこと。
  3. 医学/健康ウェブサイトを訪れた患者や個人の情報に関するプライバシーを、その身元も含めて、尊重すること。ウェブサイトのオーナーは、そのウェブサイトおよびミラーサイトが置かれている国の、医学/健康情報のプライバシーに関する法律が要求する基準を尊重し遵守すること。
  4. 必要であれば、そのサイトに含まれる情報は、明確な情報源が示され、可能であれば、そのデータへのHTMLリンクが設定されること。最終の更新された日付を(たとえば末尾に)明確に表示されていること。
  5. 特定の治療、商品、サービスの利点/性能に関する疑問に対して、上記の第4項に示された方法により、適切な偏りのない証拠で答えること。
  6. Webサイトの設計者は、できるかぎり明確な方法で情報を提供するように心がけ、追加情報やサポートを要求する訪問者のために作成責任者の連絡先を提示すること。Webmasterは、その管理するすべてのページに、そのメールアドレスを明確に表示すること。
  7. そのWebサイトへの財政、サービス、物的支援を行っている民間企業、非営利組織がある場合は、そのことを明確に示すこと。
  8. もし、広告がその資金源である場合は、そのことを明確に宣言すること。ウェブサイトの所有者の広告に関する方針を、そのサイトに表示すること。広告やその他のプロモーション情報は、それを見た人に、そのサイトで作成されたオリジナルの情報と容易に区別できるような方法と文脈で、提示されていること。

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中心空洞論

ここのところ日本のウェブ医療サービスについて、その過去から現在までをあらためて見直したりしている。細かいことは置くとして、結局、一言要約すれば「『ど真ん中』がポッカリ空いている」という感想に尽きる。

日本のウェブ医療サービスの先行ポータル組は、なぜか総合医療ポータルへは進化せずに、「病院検索サイト」というカルデサックへ迷い込んでしまったようである。そのために日本においては、いまだにYahooや楽天やmixiなどと肩を並べるブランド認知を持つ医療・健康ポータルは登場していないのである。なぜか日本のウェブ医療サービス界は中心が空洞のまま、さしたる話題もなくこの10数年を過ごしてきたのである。なぜこうなったのか。

たとえば近年、米国でWebMDに果敢な戦いを挑んだスティーブ・ケース率いるRevolutionHealthだが、開発投資総額は約5億ドルであった。これに対し日本のウェブ医療サービスでは、まとまった開発投資をするプレイヤーが結局いなかったということか。3-4年前に商社などが参画して立ち上げ、少しばかり話題になった「医療・健康ポータル」でも、たしかRevolutionHealthの投資総額と比べると2ケタほども違いがあったような・・・・・。 続きを読む

「ノイズとクラゲ」を除外するバーティカル検索エンジン

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TOBYOプロジェクトは「ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にする」ことをめざしている。徐々に可視化作業は進んでおり、すでに約800疾患、1万8千件の闘病体験ドキュメントを整理分類し、近々、そのうち1万4千件が検索可能になる予定だ。ネット上の闘病ドキュメントはおよそ3万件程度存在すると推定しているが、これは毎年約4千件から5千件づつ増加していると見ている。

ネット上の闘病ドキュメントのほとんどは、主に個人サイトとブログを通じて配信されているが、最近、Twitter、YouTuve、Googleブックスなどで配信されるケースも増えてきている。今後、TOBYOはこれらの情報も収録していく予定だ。そこでとりあえず、Googleブックスの闘病記について収録を開始した。Googleブックスの闘病関係書籍は約6百数十点登録されているが、そのうち本文をプレビューできるのは110点ほどである。そのほとんどは自費出版本であり、メジャー出版社から出されている書籍のほとんどはプレビュー不可となっている。これは著作権をめぐる出版元とGoogleの調整がまだ決着していないためだが、長い目で見れば、いずれリアル本の闘病記のほとんどをネットで閲覧できるようになるだろう。Googleブックスの収録状況を見ていると、書籍のみならず、雑誌に掲載された闘病体験記事などもスキャンしているようだ。 続きを読む

読売新聞の医療サイト「yomiDr.」(ヨミドクター)

yomidr先月29日、読売新聞は医療・介護・健康情報サイト「ヨミドクター」を開設した。新聞社の医療情報サイトはこれまで各紙が展開してきているが、この「ヨミドクター」はいくつかユニークな特徴を打ち出している。なかでも「病院の実力」は「病院選びの強い味方」をキャッチフレーズに、アウトカム情報に一歩近づいた医療評価データを提供しており注目される。

全国約3,000病院の独自調査をもとに、病名と地域を選ぶことで、病院ごとの患者数や手術件数、専門スタッフなどが一覧で見られるサービスです。データを自由に並べ替えることができ、地方発の病院情報もネットで初めて提供する目玉コーナーです。(プレスリリース「読売新聞が、頼れる・役に立つ医療サイト「ヨミドクター」をオープン」より)

これは上の画面写真のようなスプレッドシート形式で、病名・疾患ごとに病院の治療状況を一覧比較できるもの。画面写真はおそらく「乳がん」治療の実施状況の画面だろうが、全摘手術から温存療法までの各治療法構成比率を、病院間で比較することができる。これまで、単に手術件数を病院ごとに集計するムックなどはあったが、この「病院の実力」はそこからさらに踏み込んで、詳細な病院ごとの治療状況を提供している。 続きを読む