中心空洞論

ここのところ日本のウェブ医療サービスについて、その過去から現在までをあらためて見直したりしている。細かいことは置くとして、結局、一言要約すれば「『ど真ん中』がポッカリ空いている」という感想に尽きる。

日本のウェブ医療サービスの先行ポータル組は、なぜか総合医療ポータルへは進化せずに、「病院検索サイト」というカルデサックへ迷い込んでしまったようである。そのために日本においては、いまだにYahooや楽天やmixiなどと肩を並べるブランド認知を持つ医療・健康ポータルは登場していないのである。なぜか日本のウェブ医療サービス界は中心が空洞のまま、さしたる話題もなくこの10数年を過ごしてきたのである。なぜこうなったのか。

たとえば近年、米国でWebMDに果敢な戦いを挑んだスティーブ・ケース率いるRevolutionHealthだが、開発投資総額は約5億ドルであった。これに対し日本のウェブ医療サービスでは、まとまった開発投資をするプレイヤーが結局いなかったということか。3-4年前に商社などが参画して立ち上げ、少しばかり話題になった「医療・健康ポータル」でも、たしかRevolutionHealthの投資総額と比べると2ケタほども違いがあったような・・・・・。

次に、昨日も指摘したが、医療界側のウェブに対する取り組みがきわめて消極的である。このブログでは再三指摘してきているが、病院サイトなどはいまだに看板かパンフレットなみの扱いであり、品質の高い医療情報の提供や便利な機能の提供などは皆無と言ってよい。闘病者・消費者に役立ちわかりやすい最新の医療情報提供は、圧倒的に不足しており、その空隙を狙ってスパムサイトや「クラゲ」サイトが大量発生している。昨日、医療情報のバーティカル検索エンジンの必要性を論じたが、よく考えてみると、日本では品質の高い消費者向け医療情報の検索対象サイトは数少なく、これでは検索エンジンを立てても、ろくな検索結果は出てこないかもしれない。

当方のTOBYOプロジェクトは巨大ポータルをめざすものではないし、むしろ重厚長大なる「1.0的ポータル」とは違う道を指向しているのだが、しかし、この中心の空洞ぶりというのも、考えてみると奇妙な事態である。「健康」、すなわち人間にとっての普遍的ニーズに対応するウェブサービスが、こうも中心空洞であってよいのだろうか。

一方、医療界側のウェブの取り組みだが・・・・・。「期待は失望の母」という格言が、やけに説得力をもって聞こえる今日この頃である。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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