バザールとしての次世代医療システム:

まずは訂正から。先日エントリで、厚労省の資料から「日本の総患者数2,674万人」としたが、あとでよくよく考えてみれば、この資料はうつ病など精神疾患が抜けており、実際の総患者数はもっと多いはずだ。だがいずれにしても、闘病ユニバースの推定サイト3万件というのは全患者数から見て少ないことに変わりない。

昨日、TOBYO収録サイト数は1万7千件に達した。以前よりは収録ペースを落としているが、今後も収録数を増やし、いずれ闘病ユニバースの全体像をユーザーに提示できればと考えている。これまで過去に何回か「量的拡大の限界」ということを立ち止まって考え、「量から質への移行」など模索してきたこともあった。だが「推定3万件」という闘病ユニバースのサイズを考えてみると、十分に手の届くサイズであり、このまま全体像に近い規模まで収集を続けていきたい。 続きを読む

個別化細分化する闘病情報ニーズ

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夏から、闘病体験バーティカル検索エンジン「TOBYO事典」の改善&アップデートに取り組んできたが、先月リリースの予定がまたまた遅れてしまった。もうしばらく時間がかかりそうだ。今回の改善&アップデートでは、検索精度の向上と検索インデックス拡大を目指している。しかし、検索インデックスが増加するにつれ検索結果の量も増えるわけで、これは「目指す情報に最短で到達したい」というユーザーニーズに反することになる。海外のバーティカル検索エンジンでは、検索結果にフィルタリングオプションをつけるなど様々な工夫があるのだが、TOBYO事典も将来はこれらを導入していきたい。

当面の問題は、検索対象が増加すればするほど検索結果のSN比が下がり、ユーザーの求める情報にたどり着きにくくなることだ。たとえば乳がんの闘病者が、乳がん治療抗がん剤の副作用を調べたいと考えているとしよう。現状、「TOBYO事典」ではすべての検索インデックスを対象に検索を行っているから、乳がん以外の双極性障害や1型糖尿病の闘病ドキュメントまでが検索対象に含まれる。乳がん闘病者は、当然、乳がん闘病ドキュメントだけを検索したいはずなのに、現状では他の疾患の闘病ドキュメントにたまたま書かれた乳がん抗がん剤のページまで検索結果に表示されることになる。 続きを読む

闘病体験配信の多様化: GoogleBooks、Twitter、ビデオ

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TOBYOプロジェクトが目指しているものについて、これまで様々な観点からこのブログでは言及してきたのだが、あらためてシンプルに言ってしまえば

「ネット上のすべての闘病体験ドキュメントを分類整理して可視化し、すべての人が簡単に利用できるようにする」

ということになる。これをめざすべく、私たちはこれまでネット上約1万7千件の闘病サイトや闘病ブログを可視化し、そのうち約1万サイトを横断的に全文検索できるようにした。今後も、ネット上に約三万サイトはあると推定される闘病サイトを、最終的にはすべて可視化していくことになるが、最近、個人サイトやブログだけでない闘病体験の配信が出現してきている。闘病体験配信は多様化しつつあるのだ。TOBYOはこれらについても、いずれ整理分類し可視化し、すべて検索できるようにしていきたい。

まず、Googleブックスがリアル闘病本のネット配信をはじめていることに注目したい。たとえば「闘病記」で検索すると、まだ検索ヒット件数は108点にすぎないが、いくつか興味深いリアル闘病本をオンラインで読むことができる。これらのリアル闘病本は、今のところ文芸社など自費出版を専門に扱う出版社から自費出版されたものがほとんどだが、今後、一般の出版社のリアル闘病本もネット上に公開されてくると思われる。また、本文のうち部分的に割愛されて公開されているものも多いのだが、本文をキイワード検索できるなど、リアル闘病本にはないデジタル化の恩恵を活かしたメリットもあるわけだ。 続きを読む

日本の総患者数2,674万人と闘病サイト

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闘病サイトを開設し、闘病ドキュメントを公開している人は、すべての闘病者のうち、どの程度の割合になるのだろうか。ふとそんなことを最近考えることがある。これまで闘病ユニバースを構成するサイト数を、およそ三万件と想定してきたが、ではこの三万件という数字は、いったいどう見るべきものだろうか。「三万件も」とそのサイズの大きさを言うべきなのか、あるいは「三万件しか」とその小ささを指摘すべきなのか。

こんなことを考えてみたのは、当方は「闘病ユニバース」という括りで闘病サイト群を見てきたのだが、ではこの「闘病ユニバース」というものは、日本の闘病者全体の中でいかほどの位置を占めているのか、ここがどうしても気になるのだ。そこでまず「日本の全闘病者」だが、これは厚労省が定期的に発表している「患者調査」から概要を把握することができる。最新版は「2005年患者調査」である。この調査報告書の「第12表:主要な傷病の総患者数」を見ると、主要傷病の総患者数は約2,674万人と推定されている。ちなみに、ここにおける「患者」とは「医療機関で受療している人」のことを指している。そして疾患別の患者数ベストテンは次のようになっている。 続きを読む

闘病記とPHR

あるテーマで週末から企画書を書いていた。その中で触発される形で、これまで考えてきたことを改めて点検したり、今後の方向性を想定してみたりしていたが、闘病記あるいは闘病ドキュメントについていくつかのポイントを確認できたように思う。

当初このブログは、闘病記とその価値をさまざまな観点から考察していたのだが、徐々にその中身は変わってきたと思う。特にストーリーや物語性という点で闘病ドキュメントを見ることから段々と離れて行き、「体験事実とデータ価値」という側面を重要視するようになってきた。人が「闘病記」に求めるものはさまざまである。だが、米国のPatientsLikeMeなどの影響もあるだろうが、「病気を治すデータ」という見方へと当方の闘病ドキュメント観は変わってきている。人は闘病記を書くために生まれてきたのではない。できれば闘病記を書かずに人生を送った方が幸せだろう。 続きを読む