DFC進行状況

3月も今日で終わり、早いもので明日からもう4月。TOBYOプロジェクトはここ3ヶ月の間、DFC商品化のための検討とテスト制作、そして検索エンジン「TOBYO事典」新規クロールの二つに取り組んできている。TOBYO事典は来月4月半ば頃にバージョンアップできる予定で、現在1万4千サイト300万ページの検索対象をさらに増量し、闘病体験可視化領域を拡大する。このように検索エンジン側の可視化領域が拡大すれば、DFCでハンドリングする解析データも増え、一層精緻に医薬品等の消費者体験&評価を提供することが可能となる。

DFC(Direct From Consumer)商品化だが、これは医薬品、医療機器、医療機関などを消費者体験から分析する”Fact Finding Tool”を目指している。たとえばある医薬品について、それを実際に体験した消費者の声を公開された闘病ドキュメントから集め、その医薬品がどのように消費者から体験されたかを分析する素材を提供するものだ。まだ詳細を公開できる段階ではないが、このDFCは大きく二つのパートから成る。 続きを読む

現状認識と展望

最近の海外のHealth2.0シーンだが、かつてのような勢いが見られないのはどうしたことか。マシュー・ホルトあたりは「Health2.0シーンは落ち着きを見せ始めてきた」みたいなことを言っているが、逆にWebMDの「2.0化」みたいな動きも出てきている。ある意味では定着期なのだろうが、わくわくするようなニューカマーがもっと登場してきてほしい。

翻って日本を見ると、こちらのほうは残念ながら依然として今一つ盛り上がりが足りない。二年前、当方のTOBYOをはじめライフパレットやオンライフがほぼ同時期にサービスインし、次いでシェアーズやイルネスなども出てきたのだが、とにかく医療分野のスタートアップはまだまだ数が足りない。人にたずねてみると、医療分野ということだけで敷居が高く感じられてしまうとのことだ。技術や知識の問題よりも先に、越えがたい心理的なバリアーが問題になっているようだ。

二年間TOBYOプロジェクトに携わってきて、やはり実際にやってみなければわからなかったことが多いというのが正直な感想だ。プロジェクトスタート時点と二年経った現時点では、かなりあちこちに差異が生じてきていることも事実だ。当初構想していたことがワークせず、結局、別の手法を使わねばならなかったこともいくつかある。また当初あまり重要視していなかったことが、後で決定的に重要になったこともある。だが、様々な試行錯誤を経てみると「医療だから・・・」というある種の構えた意識も次第に薄れていき、ただ価値あるサービスをつくることだけを考えるようになってきたと思う。 続きを読む

対話型ドキュメントと独白型ドキュメント

MedHelp

9日火曜日、米国のナンバーワン医療ポータルのWebMDがコミュニティベースの医療情報共有サービス“Health Exchange”を公開した。これまでいわゆる「Health1.0」の代表格と目されてきたあのWebMDが、まさに2.0的なUGCサービスを開始することに対し注目が集まっている。

ところでこの”Health Exchange”が想定している競争相手は、患者コミュニティ最大手のMedHelpだろうといわれている。MedHelpは15年前に創設された最古の患者コミュニティであり、現在では月間訪問者数950万人、収録投稿数430万ページを擁する文字通り全米最大の患者コミュニティに成長している。だが当然、WebMDはMedHelpを研究しつくしているだろうから、今後どのような新機軸を投入してくるかが注目される。 続きを読む

「評論家」や「啓蒙家」を超えて行け

critic

今日、TOBYO収録の闘病サイト件数は2万件を超えた。二年前、2千件でスタートしたときには、まさか2万件も収録することになろうとは思ってもみなかった。だが決して平坦な道を一目散に疾走してきたわけではない。実はこの間、何度も逡巡を繰り返してきた。「量的拡大だけで良いのか」という問が常にあったからだ。しかし、やがて「ネット上のすべての闘病体験を可視化する」とのプロジェクトミッションが出来上がり、さらに「コアデータに基づく事業化」という事業戦略が明確になってみると、以前のさまざまな逡巡は徐々に吹っ切れたわけだ。

「量から質へ」などと方向転換についてこのブログで書いたこともあった。だが、やはり十分な量の確保がなければ、質だけを抽出することは現実問題として不可能である。このことは直接「闘病ドキュメントの評価方法」の問題に関わってくるのだが、「なるだけクオリティの高いものを選び出したい」と思う反面、自分たちが選考するよりもユーザーに委ねるべきだとも思えた。何度も、このような相矛盾する観点の間を往復し逡巡していたわけだ。 続きを読む

バザール型医療情報サービスへ

bazaar

TOBYOプロジェクトでは今、DFC(Direct From Consumer)商品の試作品製作に着手している。いろいろ検討したが、当面、統合失調症関連のいくつかの医薬品についてDFCレポート試作品を作る予定だ。今後アイテムを増やしていき、最終的に有料サービス「DFCライブラリー」にまとめ上げる予定。まず医薬品から患者体験によって可視化していくが、今後、医療機関、医療機器、治療法、検査法などへ展開していく予定。

さて、これらDFCとDTCによる事業化のほかに、もうひとつどうしても実現したいことがある。それは「バザール型サービス」である。このブログではこれまでたびたび「伽藍とバザール」というテーマでエントリを書いてきたが、これは言うまでもなくエリック・レイモンドによるオープンソースのソフト開発についての同名の論文 、そして2007年に開催された第一回Health2.0カンファランスにおけるスコット・シュリーブのスピーチに触発されたものである。 続きを読む