対話型ドキュメントと独白型ドキュメント

MedHelp

9日火曜日、米国のナンバーワン医療ポータルのWebMDがコミュニティベースの医療情報共有サービス“Health Exchange”を公開した。これまでいわゆる「Health1.0」の代表格と目されてきたあのWebMDが、まさに2.0的なUGCサービスを開始することに対し注目が集まっている。

ところでこの”Health Exchange”が想定している競争相手は、患者コミュニティ最大手のMedHelpだろうといわれている。MedHelpは15年前に創設された最古の患者コミュニティであり、現在では月間訪問者数950万人、収録投稿数430万ページを擁する文字通り全米最大の患者コミュニティに成長している。だが当然、WebMDはMedHelpを研究しつくしているだろうから、今後どのような新機軸を投入してくるかが注目される。

このニュースを読みながらあらためて思ったのは、MedHelpがここまで来るまでに15年という時間を要している点だ。インターネット初期におけるサービス開始という点ではWebMDも同じなのだが、やはり患者コミュニティで量を集めるためには相当の時間を要するということか。またMedHelpの収録投稿数430万ページだが、これは15年間の累計数としてみた場合どう評価すべきなのだろうか。たとえばTOBYOは現在300万ページの体験ドキュメントを可視化しているが、これも過去10数年間に闘病ユニバース上に蓄積されてきたものだ。TOBYOの場合、まだ闘病ユニバースのうち一部分をキャッシュ取得したにすぎず、今後、500万ページ、1000万ページと増やしていく予定であり、単に情報量ということならいずれMedHelpを上回ることになるだろう。

しかしMedHelpとTOBYOとでは、持っている情報の性格が違うだろう。どちらもユーザー自身が創造したコンテンツであることは同じだが、どちらかと言えばMedHelpは対話型、TOBYOは独白型の体験ドキュメントであるところが違う。どちらが優れているかを判断することは難しいが、「問いと答え」という形式をもつ対話型のドキュメントには特定の問題についての解がすでに直接含まれていると考えられる。それに対し独白型のドキュメントは特定の「問い」を想定せずに記述されており、それらドキュメントを読解した結果としてある特定の問題を解決する「ヒント」が与えられることになる。

このような差異があるとすれば、特に独白型ドキュメントはそこから情報を引出す方法について、相当緻密に検討する必要があると思う。あるいは、私たちがこれまで考えてきた仮想コミュニティ「闘病ユニバース」自体に、直接、何らかの働きかけを行うこともあるだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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