最近の海外のHealth2.0シーンだが、かつてのような勢いが見られないのはどうしたことか。マシュー・ホルトあたりは「Health2.0シーンは落ち着きを見せ始めてきた」みたいなことを言っているが、逆にWebMDの「2.0化」みたいな動きも出てきている。ある意味では定着期なのだろうが、わくわくするようなニューカマーがもっと登場してきてほしい。
翻って日本を見ると、こちらのほうは残念ながら依然として今一つ盛り上がりが足りない。二年前、当方のTOBYOをはじめライフパレットやオンライフがほぼ同時期にサービスインし、次いでシェアーズやイルネスなども出てきたのだが、とにかく医療分野のスタートアップはまだまだ数が足りない。人にたずねてみると、医療分野ということだけで敷居が高く感じられてしまうとのことだ。技術や知識の問題よりも先に、越えがたい心理的なバリアーが問題になっているようだ。
二年間TOBYOプロジェクトに携わってきて、やはり実際にやってみなければわからなかったことが多いというのが正直な感想だ。プロジェクトスタート時点と二年経った現時点では、かなりあちこちに差異が生じてきていることも事実だ。当初構想していたことがワークせず、結局、別の手法を使わねばならなかったこともいくつかある。また当初あまり重要視していなかったことが、後で決定的に重要になったこともある。だが、様々な試行錯誤を経てみると「医療だから・・・」というある種の構えた意識も次第に薄れていき、ただ価値あるサービスをつくることだけを考えるようになってきたと思う。
同時に参加型医療やバザール型医療サービスなど、ネット発想を起点として、従来の医療にはない新しい展望が少しづつ見えてきた二年間でもあった。私たちは、従来の闘病記や患者会などをネットに単純延長するような発想から離れ、ネットで起きている新しい闘病者達の自発的な情報活動の意味を執拗に考えてきたし、またこれからも考えていくつもりだ。そして、これらの従来にない新しい質を持ったネット闘病者達の情報活動こそが、次世代の医療を拓いていく先行指標だと考えている。
それらが何を指し示しているのか、その全体像はまだ解読されていない。もっと先へ進むしかないのだ。
三宅 啓 INITIATIVE INC.