「評論家」や「啓蒙家」を超えて行け

critic

今日、TOBYO収録の闘病サイト件数は2万件を超えた。二年前、2千件でスタートしたときには、まさか2万件も収録することになろうとは思ってもみなかった。だが決して平坦な道を一目散に疾走してきたわけではない。実はこの間、何度も逡巡を繰り返してきた。「量的拡大だけで良いのか」という問が常にあったからだ。しかし、やがて「ネット上のすべての闘病体験を可視化する」とのプロジェクトミッションが出来上がり、さらに「コアデータに基づく事業化」という事業戦略が明確になってみると、以前のさまざまな逡巡は徐々に吹っ切れたわけだ。

「量から質へ」などと方向転換についてこのブログで書いたこともあった。だが、やはり十分な量の確保がなければ、質だけを抽出することは現実問題として不可能である。このことは直接「闘病ドキュメントの評価方法」の問題に関わってくるのだが、「なるだけクオリティの高いものを選び出したい」と思う反面、自分たちが選考するよりもユーザーに委ねるべきだとも思えた。何度も、このような相矛盾する観点の間を往復し逡巡していたわけだ。

しかし結局のところ、十分な量が確保できれば、最終的に闘病ドキュメントのクオリティはユーザーに判断してもらうしかないのだ。そして私たち運営側の介入は極力避けるべきだ。私たちは「闘病記の啓蒙家や評論家」ではないし、またそのような役割を果たすつもりもない。UGCやCGCは、コンテンツの作り手がユーザー自身であるだけではない。作られたコンテンツを選び出すのもまたユーザー自身なのだ。わけのわからぬ「闘病記評論家」などが介在する余地はない。

ともあれ2万件の闘病サイトを可視化できたのも、自分たちの闘病ドキュメントをネット上に公開してくれた多くの闘病者のおかげである。闘病ユニバースは年々拡大している。これらの力を借りてTOBYOプロジェクトは日本の医療を可視化していきたい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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