自己防衛としての「医療情報のポータビリティ」

portability_s昨日エントリーで触れた英国保守党キャメロン党首のNHS批判は、今後の公的な医療情報システムのありかたに一石を投じるものである。たしかに英国のみならず、どこの国でも公的な情報システムは膨大な国家予算を投じて構築運用されるわりには、その利用頻度は少なく、巨大な浪費と損失に終わっているケースが多い。e-TAXや住基カードの例を出すまでもなく、とにかくこれまで「過去の成功事例」をまったく思い出せないほど「公的情報サービス」の信用は極端に低いのだ。 続きを読む

英国NHSのITプログラムに対するHealth2.0的批判

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7日のエントリーで英国NHS(国民保健サービス)のPHRローンチを取り上げた。これに対して、英国保守党の党首デビッド・キャメロン氏が全面的な批判を加えたことが報道されたのだが、この批判の内容が米国のHealth2.0コミュニティでちょっとした話題を呼んでいる。意外にもキャメロン党首の批判内容が、かなりHealth2.0ムーブメントを彷彿させるものだったからだ。 続きを読む

患者中心医療とPHR

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年末のエントリーで医療界において頻繁に使用される「患者中心医療」という言葉が、現実には空々しいスローガンにしか過ぎず、医療現場において何の実体もないではないかと指摘しておいた。患者のみならず、顧客やユーザーが「中心」に位置づけられるのは他の全ての産業では「常識」であり、ことさら改めて言うまでもないことなのだが、医療ではそうではないからこそかくも頻繁に用いられるということか。また、これはおそらく「患者様」呼称と同じような種類の問題であり、生活者や患者側は容易にその虚構性を見抜いているのだが、医療界だけがそれに気づいていないということか。 続きを読む

イングランドで全住民対象PHRが稼働

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年末の英国BBCニュースは、英国NHS(国民保健サービス)がイングランド全住民を対象としたPHR「NHS Care Record Service」 (CRSと略す)のローンチを「最初の患者電子記録が新しいNHSオンライン・データベースにアップロードされた」と伝えた。これは予算総額120億ポンド(約2兆5千億円)に上る英国医療ITプログラムの一部分を構成するもので、現時点では、おそらく世界最大規模のPHRになるものと思われる。 続きを読む

2007年を振り返って: 医療の量的不足

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一心不乱に世界の医療とウェブをめぐる新しい動向を紹介し、その意味するところをあれこれ考察しながら書き継いできた当ブログであるが、今月ではや一周年を迎えた。何度も断っているように、元来、このブログはタイトルを見ればわかるが、「TOBYO」という新サービス開発上の進行状況や直面する問題を公開していこうとの趣旨で開設した。その本来の趣旨に照らしてみるなら、肝心の「TOBYO」ローンチがどんどん遅れ、一方の欧米Health2.0動向関連のエントリーがいつしか中心になって来たのである。率直に言って「本末転倒」とは、まさにこのブログのようなものを指すのかも知れない。 続きを読む