医療者向け情報ツール市場

20日付けのWall Street Journalで「変化のための処方箋」という医療IT分野の記事が掲載された。書いたのはアリゾナ州立大学のAMAR GUPTA教授だが、今後、情報技術が医療におよぼす変化について優れた洞察を提示している。この記事の冒頭、次のように語られている。「病院やその他の医療機関は長い間、医療機器、処置、治療などにおけるブレークスルー技術は素早く採用してきたが、ネットワークとコミュニケーションにおける技術革新にはきわめて乏しい注意しか払ってこなかった」。 続きを読む

「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」

まったくの偶然であるが、「『患者体験』を映像と音声で伝える:「健康と病いの語り」データベース(DIPEx)の理念と実践」と題するDIPEx関係者による「論文」があることをはじめて知った。(「情報管理」2008,Vol.51 No.5 JST)

この「論文」中に、現在準備が進められている「健康と病いの体験のデータベース」DIPExと対比的にTOBYOのことが言及されている。「『TOBYO』(http://www.tobyo.jp)は、約4,000の闘病ブログが登録されているポータルサイトで,病名のほか,治療法や患者の性別や年齢などの条件でブログを抽出できる検索機能がついている。」(p308)と紹介してくれている。まず、「ポータルサイト」などと一度も言った覚えはないのだが、とにかくどのように誤解する自由もあることは認める。だが「ポータル」など、一体いつの時代のことなのか?
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一万人の闘病体験

Gyoen

連日、秋晴れの日が続く。お昼は新宿御苑の広々した芝生の上でお弁当を広げ、食後はごろんと寝っ転がる。見上げる青空を背景に、赤とんぼが低く飛びかう。もう午後はこのまま心地よい風に吹かれて過ごしたいところ。だが仕事に戻ろう。

闘病記1万件のバーティカル検索をめざして仕事を続けている。なんとか今月中には公開したい。これで一万人の闘病体験を隅々まで可視化できる。とにかく「実際に役立つものを作りたい」と考えてきた。病気を克服しようとしている人々が、実際に使って役立つもの。これを作るしかない。 続きを読む

Health2.0コンファレンス、来週開催。


来週、22日、23日の両日、サンフランシスコで第二回Health2.0コンファレンスが開催される。昨年9月の第一回コンファレンスからこの1年間を振り返ると、Health Vault、Google Health、Dossiaの三大PHRが姿を現したことをはじめ、最近のRevolutionHealthの挫折に至るまで、特筆すべきいくつかの大きな動きがあった。また、多数のスタートアップ企業は、世界中で様々な新しいサービスをリーリースした。だが、まだこれらはほんの序曲に過ぎないはずだ。大規模PHRにせよ、本格的に消費者が参加するところまでには至っていない。

それでもSermoやPatientsLikeMeなどが、ビジネスとして一定の成果を上げ始めているのは心強い。この両者は顧客は違うのだが共通する点も多く、事業開発の先行事例として参考になるはずだ。彼らのビジネスモデルとその成功要因を学ぶことによって、市場のアーリーステージにおける事業化の指針を得ることができるだろう。そのように考えて、いろいろと分析を試みたりもしている。そして、その結論はきわめてシンプルなものである。

ともあれ、今年のコンファレンスでどのような問題が提起されるかに注目したい。
(ビデオはサンディエゴで開催された春季コンファレンスのもの)

三宅 啓  INITIATIVE INC.

ブログ論壇に入れてもらった

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佐々木俊尚さんが新著「ブログ論壇の誕生」の特別付録として、文藝春秋サイトで「佐々木俊尚が選んだ著名ブロガーリスト」を公開している。なんとなく見ていると、なんとこの「TOBYO開発ブログ」がリストの中に入っているではないか。光栄である。しかし、いや、驚いた。

だが、錚々たるブロガーが名を連ねるリストの中で、このブログはいかにも非力な新参者。医療とウェブをネタに、好き勝手にワーワーと、言いたい放題、書き散らかしてきただけである。たしかに米国と比べると、日本では医療とウェブを取り上げたブログは極端に少ない。Health2.0やPHRなど、新しい動きを論じるブログもあまり目にしたことがない。その意味で、少しは稀少価値があるのかもしれない。

ブログのみならず、日本の医療界自身とその周辺は無関心を決め込んで、今、世界の医療で起こっている新しい動きを知り論じる気配さえない。きわめて内向的になっているように感じられる。それが不満で書いているようなものだが、実は意外にも様々な方々から反応を頂戴している。当方元来、根がへそ曲がりときているが、ここは素直に感謝しておかなければならない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.