患者ニーズについての覚書

先日、TOBYO収録闘病サイト件数が1万件に達したが、この収集およびチェック過程で多数の闘病ドキュメントに触れることができた。それぞれの闘病の事実経緯のみならず、現場の雰囲気など暗黙知を蓄積できたことは、当方にとって今後の大きな財産になると思う。

それらおびただしい量の闘病体験から、たしかに「患者ニーズの実像」というものが、明確に姿を現したと思える瞬間をたびたび経験したのである。それ以来、「実践的で役に立つ情報」という言い方をしばしばこのブログでもしているのだが、このことはTOBYOの方向性を修正するきっかけにもなった。 続きを読む

参加型医療の時代

今日、TOBYOの収録闘病サイト数が1万件に達した。春先にこのブログで「ネット上にどのくらいの数、闘病サイトが存在するかは不明だが、1万件くらい収集すれば、およその見通しはつくのではないか」などと言ったこともある。実際に1万件にたどり着いてみて「およその見通し」がついたかと言えば必ずしもそうではないが、どんどん新規サイトが生まれており、闘病ネットワーク圏がますます膨張していることだけは確認できた。

「ネット上に自分の闘病体験を公開し、他者と共有する」という文化が自然発生的に生まれ、次から次へと伝承され、知識と体験がリレーされているのを見ていると、医療界という専門領域の外周を取り巻くような形で、闘病者の知識集合と体験集合の領域(闘病ネットワーク圏)が分厚く形成されつつあることが実感される。今のところ、医療界と闘病ネットワーク圏が直接交わる気配はないが、いずれ両者はどこかで出会い、相互に学ぶようになるはずだ。そんな確信がある。 続きを読む

Health2.0の次は?

先週、サンフランシスコで開催されたHealth2.0コンファレンスに関するエントリやニュースが上がり始めている。ざっと目を通している最中だが、このムーブメントが昨年より確実にスケールアップしていることが感じられる。ウェルネス2.0、医療ゲーム、遺伝子解析など、今年のコンファレンスではHealth2.0が新たな市場を加え、拡張している様子が報告されている。そして早くも来年ボストンで、春季コンファレンスが開かれることが発表された。 続きを読む

墨東奇譚

先週、妊婦が複数の病院で受け入れを断られ死亡するという痛ましい事件があった。一旦は搬送を断り、結局受け入れた地域の総合周産期母子医療センターである都立墨東病院に対する舛添厚労相の批判と、それに対する石原都知事の反論などもあり、国と自治体の責任の押し付け合いという様相さえ見られた。

数年前に起きた奈良の同様の事件以来、この間、一切何も改善されず、ある意味で起こるべくして起きた悲劇と言えよう。この原因が深刻な産婦人科医の不足にあることは今さら言うまでもない。 続きを読む

コミュニケーションの問題

comm

国立国語研究所が、難解な医療用語の言い換え例をまとめ発表した。取り上げた57の医療用語を3グループ化し、それぞれ患者にわかりやすい言い方を示している。たとえば「予後」が「病状の見通し」、「浸潤」が「がんの広がり」というぐあいである。

患者の医療参加を進めていく上で、このような「言語の壁」はどんどん崩してもらいたい。特に問題は病名なのではないか。病名は固有名詞だから言い換えはむつかしいだろうが、表記の簡素化はできるはずだ。難解な漢字を並べた病名表記が多く、その読み方さえ分からない場合がある。また、「子宮頚がん」と「子宮頸がん」のように、同じ病名なのに表記が違う例も多く見受けられる。また医療機関や医療者によって病名が微妙に違う場合もある。さらに医療界だけの独特の読み方もある。闘病記を読むと、これらによって患者側に混乱が起きている場面にぶつかることがある。なんとか病名の表記と読み方の統一を、早急に実現してもらいたいものだ。 続きを読む