参加型医療の時代

今日、TOBYOの収録闘病サイト数が1万件に達した。春先にこのブログで「ネット上にどのくらいの数、闘病サイトが存在するかは不明だが、1万件くらい収集すれば、およその見通しはつくのではないか」などと言ったこともある。実際に1万件にたどり着いてみて「およその見通し」がついたかと言えば必ずしもそうではないが、どんどん新規サイトが生まれており、闘病ネットワーク圏がますます膨張していることだけは確認できた。

「ネット上に自分の闘病体験を公開し、他者と共有する」という文化が自然発生的に生まれ、次から次へと伝承され、知識と体験がリレーされているのを見ていると、医療界という専門領域の外周を取り巻くような形で、闘病者の知識集合と体験集合の領域(闘病ネットワーク圏)が分厚く形成されつつあることが実感される。今のところ、医療界と闘病ネットワーク圏が直接交わる気配はないが、いずれ両者はどこかで出会い、相互に学ぶようになるはずだ。そんな確信がある。

医療界を取り巻くようにして闘病ネットワーク圏が形成されているというこの光景が、いったい何を物語っているのかと言えば、それは闘病者側の医療への参加の意思表示であると言えるのではないだろうか。闘病者は、自分が体験したことをネット=パブリックスフィアに公開することを通じて、医療に参加しようとしているのである。

先週サンフランシスコで開かれたHealth2.0コンファレンスについて、28日、Jane Sarasohn-Kahn はその感想を総括し“Entering the era of participatory medicine”というエントリを発表している。このタイトルを読んで思わず興奮を禁じ得なかった。当方が春先からぼんやり考えてきた「参加型医療」という言葉が、まさに同時シンクロしてここでも使われているからだ。Health2.0がアメリカだけのムーブメントではなく、グローバルな同時多発ムーブメントであることを改めて認識できた瞬間であった。

そしてHealth2.0の役割が、また一つはっきりした。それは「参加型医療」を実現するムーブメントなのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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