ソーシャルノミクス: Socialnomics


「ソーシャルメディアのROI」と題されたソーシャルノミクス(ソーシャル+エコノミクス)PRビデオ。この夏に紹介した「ソーシャルメディア革命」の続編である。ソーシャルメディアを使用した様々なマーケティング事例が紹介されているが、医療関連では、米国の乳がん撲滅活動団体として知られる”Susan G. Komen“とテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのケースが短く取り上げられている。

MayoClinicをはじめ海外の先進的医療機関は、本格的にソーシャルメディアの広報活用に乗り出しているが、日本ではまだそのような事例はまったく聞かない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

二つの医療コアデータ

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今月でこのブログも開設三周年を迎える。いや、とにかく時間のたつのは早い。三年前の2006年12月のエントリタイトルを改めて見てみると、やはり「闘病体験の共有」や「闘病記の考察」など、TOBYOプロジェクトのコンセプトを固めるために書かれたものが多い。

これまで何度も書いてきたが、私たちはTOBYOプロジェクトにたどり着く前に、ピッカー研究所の調査メソッドをモデルに「患者体験調査」システム開発を模索していた。患者が実際に体験した事実に基づいて医療機関を評価しようと考えていたのだが、この「患者が実際に体験した事実」というものが、わざわざ新たに調査するまでもなく、既にブログや個人サイトの「闘病記」として大量に公開されていたのである。つまり調査システムを新たに開発する必要はなく、既にネット上に存在する体験ドキュメントを参照すれば済むことに気づいたわけである。

このように思い返してみると、私たちは最初から調査データという側面で闘病体験ドキュメントを捉えてきており、それは今日にいたるまで変わっていない。その後このブログでは、「闘病記」という括りで闘病体験ドキュメントを見ることから徐々に離れていくことになる。「闘病記」というリアルパッケージのメタファーでのみウェブ上の闘病体験を捉えるとすれば、新しい医療サービスの創造などは見えず、むしろ「闘病記」の評論や研究や出版サービスなどの方向へ進むことになっただろう。むろん、闘病記の評論や研究などは自由であり、否定するつもりはない。だが、私たちが進む道はそれらではないのだ。 続きを読む

メンタルヘルスSNS: Mental Health Social

MentalHealthSocial

メンタルヘルス患者、関係者、業者を対象としたSNS「Mental Health Social」が今月からローンチされた。標準的なSNS機能を一通り揃えているが、ターゲットをメンタルヘルスに絞りこんだこと以外に、これという新機軸は無い。

2006年のDailyStrengthから始まり、米国ではここ二三年の間に多数の医療SNSが登場したが、それも一通り出尽くした感がある。PatientsLikeMeとSermoのめざましい躍進がある一方、昨年発覚したDailyStrengthの行き詰まりと身売り、今年5月のTruseraの撤退など、医療SNSシーンは徐々に明暗をわけはじめている。イスラエルのiMedixなども、英語圏を中心に国際的な集客をしているのだが、今ひとつ伸び悩んでいる。 続きを読む

どうして医療ソフトウェアがタダになるのか?

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話題の書「フリー <無料>からお金を生み出す新戦略」(クリス・アンダーソン)を大変興味深く読んでいる。医療関連のケーススタディとしては、このブログでも紹介した「無料EHR」のPractiseFusion社が取り上げられている。

2007年11月以降、サンフランシスコに拠点を置く新興企業のプラクティス・フュージョン社の無料ソフトウェアに、数千人の医師がサインアップして、電子カルテと医療業務管理ツールのシステムを利用している。そうしたソフトウェア製品は通常5万ドルはする。なぜ同社は電子カルテシステムを無料で提供できるのだろうか?(同書、139ページ)

この問に対する答えは次のようなものである。

データを売るほうが、ソフトを売るよりも儲かる

医師一人当たり250人の患者を受け持つとすれば、最初のユーザー医師2,000人から50万件の医療データが集められる。このデータを匿名化し医学研究機関に売ると1件あたり50ドルから500ドルで売れる。もしも1件あたり500ドルであれば売上総額は2.5億ドルになる。これは医師2,000人に対し、5万ドルのEHRシステムを売って得られる1億ドルよりも大きな収入である。また、PractiseFusion社のEHRはAdSenseなど広告掲載タイプが無料、広告なしタイプが月額使用料100ドルという「フリーミアム+広告」モデルであり、この両者からの収入も加算されるわけだ。 続きを読む

新しいビジネススキームへ

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12月になった。振り返ってみると、今年は年明けから年末まで、とにかくバーティカル検索エンジン開発と闘病サイトデータ収集にかかりきりで1年が過ぎたような気がする。それだけTOBYOプロジェクト全体にとって、それらが占める役割は大きいということだが、それにしても検索エンジンの開発テンポは、かなり遅れ気味である。

「ネット上のすべての闘病体験の可視化と検索可能化」を目指すTOBYOプロジェクトだが、昨年2月アルファ版公開以来、とにかく愚直にデータ蓄積を進めてきて、収録闘病サイト数も1万8千を越えた。そのうち今月公開する改良版TOBYO事典では、1万4千サイト、約290万ページが可視化され検索可能となる。

ネット上に存在する闘病サイト3万(推定)に比べると、まだその6割程度をカバーしているにすぎないが、それでもかなりの分量のデータが蓄積できた。そしてようやく、このデータの価値を活かす段階に来たと考えている。この間、かつて4年前にティム・オライリーが述べた次の言葉

Data is the next “Intel inside”.

を常に念頭に置いて、ひたすらデータ蓄積につとめてきたが、いよいよこれから、今後のTOBYOプロジェクトにとって最も重要なコアの一つとなる部分の企画&開発に取り組む。 続きを読む