TOBYOプロジェクトの現状と将来

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昨年2月、TOBYOアルファー版を公開したとき、いろんな人から感想や質問をいただいたが、それらは概ね次のようなものだった。

「闘病記の単なるリンク集か?」、「ブログランキングみたいなもの?」

これら私たちに向けられた当時の感想や疑問は皆、ごもっともなものであった。だがごもっともなゆえに、いちいち反論するつもりもなく、私たちは闘病ユニバースを可視化するために、ひたすらメタデータを付けながらネット上の闘病体験データを分類整理していった。闘病ユニバースのコアデータを十分に集めることによって、ようやくTOBYOは次の段階へ進むことができるからだ。いずれにせよ、TOBYOプロジェクトの最下層にあるのはデータ・レイヤーである。 続きを読む

闘病サイトとライフログ

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先週の続きになるが、「闘病記」という括りから、闘病サイトで展開されている闘病者の一連の活動を分けて考える必要がある。従来そこがどうも一緒くたにされてしまい、「闘病記の亜流」みたいな形で闘病サイト上のコンテンツが扱われてきたことが、結局、今ネット上で起きている闘病者の新しい情報活動を見えにくくしているのだ。リアル闘病本の延長線上で闘病サイトを見てしまうから、医療に対するインターネットの可能性と闘病者の活動を過小評価してしまうのだ。

インターネット黎明期から出現しはじめた闘病サイトは、同時に誕生した病院など医療機関サイトや製薬企業サイトよりも、いわゆる「ネット的な性格」を強く持っていた。病院サイトなどがトラディショナル・メディアの発想つまりワンウェイ思考で作られていたのに対し、闘病サイトは自分の医療体験をライフログとして記録し、不特定の「誰か」との共有を想定して公開されたのである。そこには、最初からインタラクティブなコミュニケーションが前提されていたのである。 続きを読む

闘病サイトと闘病記

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昨日のエントリに記したように、今後、TOBYOプロジェクトは闘病サイト支援事業を何らかの形で立ち上げたいと検討をはじめている。端的に言ってしまえば、私たちが焦点化しているのは「闘病記」ではなくて、インターネットで闘病サイトを運営している闘病者たちだ。

たしかに、闘病サイトには「闘病記」と呼ばれるコンテンツが掲出されているだろうが、両者の関係は

闘病サイト = 闘病記

ではなく、

闘病サイト > 闘病記

であるはずだ。

別の表現をすれば、私たちはたとえば「e-Patients」と呼ばれるようなネットで情報武装された新しい患者像とその行動に注目している。彼らを「闘病記の作者」として見るのではなく、「闘病サイトを活動拠点とするネット闘病者」として見るべきだと考えている。

つまり私たちは、今医療に起こりつつあるまさにネット的な現象と、ネットによってエンパワーされた新たな闘病者像とに関心を持っている。そして、彼らがもっと便利に活動出来るようなツールや、彼らの発した声がもっと広く力強く社会に届くような仕組をTOBYOプロジェクトで実現させたい。

もはや彼らは単なる「闘病記作者」ではなく、もっとアクティブな存在であり、医療全体を変えるパワーを持ち始めたのだ。そこを積極的に評価しなければいけないと思う。

三宅 啓  NITIATIVE INC.

コアデータから事業を切り出す

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ブログを書きながら事業構想を練る、などということは10年前には考えられなかった。だが、現にこのブログで3年間「あーだ、こーだ」と思考実験を繰り返し、試行錯誤を経て自分たちの進路を決定してきた。振り返って過去のエントリを読み返すと、ヨタヨタと不確かな足取りで、時には寄り道や袋小路に迷いながらも、なんとか前進してきたという感が強い。

そして昨日のエントリで、ようやく様々な問題に一応の決着をつけられたのではないかと自分では思っている。「あれもやりたい、これもやりたい」状態を整理し、「TOBYOはこれだけを目指すべきだ」という結論にたどりついた。「ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にする」とのミッションは不変だが、「バーティカル検索エンジンをベースにして、コアデータから医療評価&医療情報サービス事業を切り出す」という事業戦略が加わったわけだ。

この事業戦略の後半だが、具体的には「テキストマイニングと闘病サイト支援」の二点が肝になると考えている。今後具体的に固まり次第、発表していきたい。

三宅 啓  NITIATIVE INC.

開発シーズとしてのコアデータ

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新バージョン「闘病体験バーティカル検索エンジン=TOBYO事典」の公開はずいぶん遅れているが、これは新しいクローラーの開発に時間がかかったことと、将来へ向け大量のデータを処理できるように検索システムの分散化を図ったためだ。バーティカル検索機能を持つだけなら他の選択肢もあるのだが、少々時間はかかっても、自前の検索エンジンを持つことは、TOBYOプロジェクト全体において最も重要な開発ポイントであると考えている。

闘病体験情報は医療のコアデータの一つであるが、ユーザーはバーティカル検索エンジン=TOBYO事典によってこのコアデータを縦横無尽に検索できるようになり、闘病者が病気と戦うための情報探索労力は一挙に軽減されるだろう。私たちはまずこのことを目指している。 続きを読む