Wikipediaの医療版、「Medpedia」年内に登場。

Medpedia

今日のTecCrunchに「MedPedia: 医療検索のWiki化を目指す」とのエントリが出ている。Wikipediaにもたしかに医療分野の情報は収録されているが、所詮「付け足し感」は否めず、やはり医療専門の百科事典メディアが欲しいものだと思っていたが、とうとう実現されるようである。

詳細はTecCrunchに譲るが、この「Medpedia」構想はかなり本格的な取組体制が頼もしい。これまでもWebMDなど個々の医療ポータルサイトで医療情報は提供されてはきたが、もっとオープンな参加性を備えたパブリックなプロジェクトこそが必要であったと思われる。その意味で、医療界はもちろん政府機関までを束ねたこの「Medpedia」プロジェクトは、今後、米国における社会的医療情報インフラへと発展する可能性を持つものと期待される。

日本でもこのようなプロジェクトは必要だろうが、「いったいどこがやるのか?」と考えてみると、はっきり言ってどこもやりそうにない。まず、医療エスタブリッシュメントがやるわけがない。この「Medpedia」プロジェクトの発起人を見ると、やはりベンチャー系の人のようだ。日本でもベンチャーが狼煙を上げるしかないだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

イザ!TOBYO  –TOBYOと「iza:イザ!」のコラボレーション–

iza!

現在、ニュース・ブログポータルサイト「iza:イザ!」(産経デジタル)とTOBYOのコラボレーションが検討されている。その中で、とりあえずこの「TOBYO開発ブログ」を「iza:イザ!」の「専門家ブログ」で配信する方向が決まりつつある。このブログをそのまま「同時再送信」するのか、少し内容を変えた「アネックス」で行くのか・・・。まだ細部は、今後詰める余地を残している。

「iza:イザ!」はマスコミが運営するポータルサイトとして、言うまでもなく現時点で最も先進的なサイトであり、こことTOBYOが何らかの接点を持つことができるのは非常に光栄である。このようなチャンスをいただいた産経デジタルの皆さんには、この場を借りて感謝の意を表明しておきたい。

ところで、TOBYOは自己完結した閉域にユーザーを「囲い込む」ような戦略をとらない。TOBYOは「闘病ネットワーク圏を可視化する便利なツール」をめざしているが、そのことは、他のサービスやツールとのオープンなコラボレーションを常に追求していくことを、最初から前提として想定している。

その意味で今回の「iza:イザ!」とのコラボレーションをはじめ、今後、さまざまなプレイヤーとのコラボレーションを作っていきたいと考えている。医療界であれ非医療界であれ関係なく、組織の大小も関係なく、来る者は拒まず、新しい「日本の医療」を考えるすべての人々と協力して、TOBYOは新しい価値をユーザーに提供できるように努力していきたい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

英国CHIの遺産

HC

昨日(7月15日)の朝日新聞夕刊を食卓でぼんやり見ていると、「変わる英国医療。押し寄せる市場化の波2」という記事が目にとまった。「公的機関が満足度調査」という見出しがついたその記事は、保険医療委員会(HC)が実施している「患者満足度調査」を紹介し、英国政府の医療改革が、患者による病院選択の拡大などを通じて、医療の市場化を促進するものと報告されている。 続きを読む

稀少難病疾患SNS、RARESHARE登場

 RareShare

昨日のエントリでPatientsLikeMeに関連して触れておいたが、稀少難病疾患を対象とした患者SNS「RARESHARE」 が先月ローンチされている。すでにRARESHAREでは、600疾患のアクティブ・コミュニティが立ちあげられているが、これを秋には1000まで拡大するとのことである。トップページにも書かれているが、稀少疾患とは言え、それら患者すべてを米国とヨーロッパで合計すると3000万人近くになる。つまり医療のロングテールに着目し、それら稀少疾患患者をネット上で一定のボリュームを持つコミュニティに集め、新しいサービス提供機会を作り出そうとしているのである。 続きを読む

この秋のMedicine2.0コンファレンス

medicine2.0_site

来る9月4日、5日、カナダのトロントで開催が予定されているMedicine2.0コンファレンスの概要が徐々に固まってきている。公式サイトのトップページに記載されている出席対象者を見ると以下のようになっている。

  • 学者(医療専門家、社会科学、コンピュータサイエンス、エンジニア)
  • ソフトウェアとWeb2.0アプリケーションの開発者
  • コンサルタント、ベンダ、ベンチャーキャピタル、経営者、情報担当
  • エンド・ユーザー(医療専門家、消費者、ペイヤー)

このようにこのコンファレンスは、Health2.0コンファレンスと比較すると、どちらかと言えば医学を中心とした学術的色彩の強いコンファレンスを目指しているようだ。これはまた、医療消費者の改革ドライビングパワーを強く意識したHealth2.0ムーブメントへの、医学アカデミズム側からの対応と言えるかも知れない。そしてさらに、Web2.0が医療に与えるインパクトを医学アカデミズム側がどのように受け止めるべきか、という問題意識がとりわけ強く持たれていることもうかがえる。

Health2.0であれこのMedicine2.0であれ、「Web2.0と医療の間には、強い親和性があるはずだ」という直感的なコンセンサスがベースとなったムーブメントであると思う。別の言い方をすれば、このような「直観」がはたらかなければ何も起こらないということだ。そしてこの「直観」を持つか持たないかが、20世紀医療にとどまるか、次世代医療を構想し行動するか、という二つの態度を鋭く切断して分岐するものだと当方は考えている。以前のエントリでも述べたように、「2.0」とは「切断」の表徴であるからだ。

Health2.0とMedicine2.0。ではこの二つの「2.0」は、これまでの医療観にどのような切断線を引こうとしているのか。今、このことに最も興味がある。

三宅 啓  INITIATIVE INC.