患者体験調査による病院レーティング: ConsumerReportsHealth.org

ConsumerReportsHealth

今週月曜日(8月3日)から、消費者商品評価団体ConsumerReportsは全米病院のレーティングサービス を開始した。この病院レーティングは、米国政府が実施している「患者体験に基づく病院評価調査プロジェクト=HCAHPS(the Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)」のデータを利用し、消費者にわかりやすい形で提供しようというものだ。全米約3700病院で、約100万人の患者が入院中に実際に体験した結果を、以下に見るHCAHPSの「8つの評価指標」について集計分析している。

  • 医師や看護師とのコミュニケーション
  • ペインコントロール
  • どの程度の頻度で、必要な時の呼び出しに対応されたか
  • 病室の清潔さと静かさ
  • 新薬についての情報
  • 退院時の説明
  • その病院を家族や友人に推薦するかどうか
  • 総合的な入院体験評価

HCAHPSとは懐かしい!。数年前、当方は医療評価事業を構想しており、当時このHCAHPSや英国CHI、またこれらのルーツであったピッカーメソッドを徹底的に研究していたことがあった。HCAHPSは、当時のブッシュ政権の医療政策における目玉の一つであり、「一つの統一尺度で全米病院を患者視点で評価し、消費者の病院選択に役立てる」ことを目指す先進的なプロジェクトであった。だが「先進的」であるが故に、医療界、レガシー調査ベンダー業界などの抵抗は根強く、調査票開発などは何度も挫折を経験したのである。 続きを読む

April in Paris

health2.0_Paris

ジャズのスタンダードナンバーそのままに、ヨーロッパ初のHealth2.0コンファレンスが来年「四月のパリ」で開催されることが発表された。場所はパリの学生街「シテ・アンテルナショナル・ユニヴェルシテール・ドゥ・パリ」。(ビデオは「四月のパリ」エラ・フィッツジェラルド。素晴らしい!)

コンファレンス・アジェンダは以下の8つからなる。

  1. サーチ&コンテンツ
  2. 患者SNS
  3. 医師SNS
  4. コンシューマー・ツール
  5. 患者-医師オンライン・コミュニケーション
  6. プライバシー、データ、信頼性とHealth2.0
  7. 政府見解
  8. 医療界と医療機関

この中で、明らかにヨーロッパ向けにアレンジされたアジェンダは上記6および7だと思われる。今年に入って、米国Health2.0コミュニティでは「医療情報の流動性の確保」論などが強調され、旧来のプライバシー保護団体の過剰なプライバシー保護論に対する批判が起きているが、逆にヨーロッパ各国ではむしろ古典的三点セット「プライバシー、セキュリティ、信頼性」の確保が重視されており、これらヨーロッパの現状をどう評価するかが議論されるものと思われる。7は大半のヨーロッパ各国の医療制度が「国営医療」であることに配慮したものだと思われる。一般的に「国営医療」とベンチャー主体のHealth2.0の親和性は高くはないだろう。 続きを読む

Google Health:ストレージ機能強化とアドバンス・ディレクティブス

GoogleHealth0907

先週、GoogleはGoogle Healthのストレージ機能強化を発表した。これによってユーザーは、PDF、イメージ、オーディオ、ビデオなど、各形式の自分の医療記録ファイルを自由にアップロードできるようになる。特に紙の医療記録がまだ多いので、これらをスキャンしPDFファイルでGoogle Healthにしまうことを、Googleではユーザーに勧めている。現状は紙記録から電子記録への移行期に当たり、このようなサービスが必要だと判断したようだ。ちなみに以前、紙の医療記録をファックスで集約するようなPHRサービスがあったが、その後あれはどうなったのだろうか?。

今回の機能強化によってユーザーに割り当てられるストレージ容量は100メガ。各ファイルサイズは4メガ以下という制限が設けられている。大きな画像診断ファイルなどは大丈夫なのか?。ところでGoogleはこのストレージ機能強化と同時に、「アドバンス・ディレクティブス」(advance directives)サービスの発表をしている。 続きを読む

オンライフのサービス終了を惜しむ

onlife090707

7月24日をもってオンライフがサービスを終了するとのことである。突然の発表に驚いている。先月の当ブログのエントリ「日本のHealth2.0経済圏の創造へ向けて」に「エスタブリッシュメント側からも資金、人、知恵、情報が集まるような仕組みを作らなければならない」などと書いたが、当方はまさにちょうどそのスキームを作るべく動き出したところであり、当然、オンライフの皆さんにもご協力をお願いしようと考えていた。

サービス終了に至る経緯は「ヨセミテblog」に詳しく記されている。スタートアップ企業が直面する問題とその総括が率直に公開されているが、貴重な事業経験として、今後、ベンチャー企業コミュニティ全体に共有されるだろう。ここまで真摯に書かれた総括書に対し、あれこれ論評する必要はないと思った。四人の皆さんの決断を、素直に、そのまま、丸ごと受け止めたい。 続きを読む

「医療情報の権利」宣言

HealthDataRights

今週月曜日(6月22日)、米国でHealthDataRights.orgのサイトが立ち上げられ、そのトップページに「医療情報の権利宣言」が掲げられた。この「権利宣言」は、個人医療情報について、人々が持つべき次の四つの基本的権利を宣言している。これを読みながら、「Health2.0ムーブメントは、明らかに次のステージに移行した」と思った。この「宣言」は、今後のHIT(医療情報技術)の進路に、きわめて大きな影響を与えることになるだろう。

  • われわれ自身の医療情報に対する権利
  • それぞれの医療情報要素のソースを知る権利
  • われわれ個人の医療情報の完全なコピーを、遅滞なく、最小経費もしくは無料で手に入れる権利。もしも情報が計算可能な形式で存在するなら、その形式で入手できなければならない。
  • われわれが適当と考える他人と医療情報をシェアする権利

サイトの「ブログロール」ページには「HealthDataRights.orgは集合知のパワーを必要としている」と書かれ、権利宣言賛同者の多数のブログが掲出されており、また賛同者のページでは260人の個人賛同者とGoogle、MicroSoftをはじめ賛同企業19社が名を連ねている。 続きを読む