患者体験調査による病院レーティング: ConsumerReportsHealth.org

ConsumerReportsHealth

今週月曜日(8月3日)から、消費者商品評価団体ConsumerReportsは全米病院のレーティングサービス を開始した。この病院レーティングは、米国政府が実施している「患者体験に基づく病院評価調査プロジェクト=HCAHPS(the Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)」のデータを利用し、消費者にわかりやすい形で提供しようというものだ。全米約3700病院で、約100万人の患者が入院中に実際に体験した結果を、以下に見るHCAHPSの「8つの評価指標」について集計分析している。

  • 医師や看護師とのコミュニケーション
  • ペインコントロール
  • どの程度の頻度で、必要な時の呼び出しに対応されたか
  • 病室の清潔さと静かさ
  • 新薬についての情報
  • 退院時の説明
  • その病院を家族や友人に推薦するかどうか
  • 総合的な入院体験評価

HCAHPSとは懐かしい!。数年前、当方は医療評価事業を構想しており、当時このHCAHPSや英国CHI、またこれらのルーツであったピッカーメソッドを徹底的に研究していたことがあった。HCAHPSは、当時のブッシュ政権の医療政策における目玉の一つであり、「一つの統一尺度で全米病院を患者視点で評価し、消費者の病院選択に役立てる」ことを目指す先進的なプロジェクトであった。だが「先進的」であるが故に、医療界、レガシー調査ベンダー業界などの抵抗は根強く、調査票開発などは何度も挫折を経験したのである。

またこの患者調査は、従来の患者満足度調査ではなく患者体験調査という手法をとっている。「満足」が主観的指標であるのに対し、「体験」は事実についての客観的指標であり、体験調査の方がより客観的な病院評価が可能となるわけである。当時英国では、NHSの委託を受けて、すでに非営利団体CHIが全国の病院トラスト評価を実施していたが、これも患者体験調査手法を採用していた。これらHCAHPSやCHIが採用した患者体験調査の理論的基礎を開発したのが、ボストンのピッカー研究所およびハーバードメディカルスクールである。しかしHCAHPSは、医療界と調査ベンダー業界の強い抵抗によってたびたび譲歩を強いられ、本来のピッカー理論がすべて採用されたのではなかった。

だが、実施まで紆余曲折もあり予想以上の時間を要したとはいえ、とにかく「一つの統一尺度で全米の病院を患者視点で評価する」という当初の目標は達せられたのである。そしてこのことによって、今回のConsumerReportsHealth.orgのように、この調査で得られたデータを二次利用して新しいサービスを開発することが可能となったのである。

日本でも医療機関の可視化を進める上で、HCAHPSのような「一つの統一尺度で全国の病院を患者視点で評価する」というプロジェクトが必要だと思う。米国や英国での事例を見ても、やはりこれは政府主導でおこなうべきだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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