Health2.0とIx

Health 2.0 meets Ix Opening Video from Health 2.0 on Vimeo.

以前から非常に気になっていたものの、忙しさにかまけて紹介できずにいたのが「Ix」である。Ixとは「Information Therapy」の略で直訳すると「情報治療」となるが、要するに、患者のしっかりした意思決定を支援するための、個人ニーズ特化型のエビデンス・ベース情報提供のことを指すようだ。「薬剤のかわりに医療情報を処方する」ということから、処方箋の略であるRxに代えてIxという略称を用いたようだ。 続きを読む

増えるiPhone向け医療アプリケーション


iPhoneをはじめとして、スマートフォン向けの医療アプリケーションが多数登場してきた。ビデオは、科学&医療アニメーションライブラリーを制作しているblausen medical 。この「Human Atlas V2.0 for iPhone」は教育用アプリケーションで、7000タイトルのアニメーションと13000件のイラストからなる「ビジュアル医療百科事典」のようなもの。誰でも容易に疾患のメカニズムや治療方法などが理解できるようになっている。このビデオでは糖尿病を例にソフトの利用イメージを解説している。

スマートフォン向け医療アプリは、EMRなど医療現場の実務アプリケーションからPHRにいたるまで続々リリースされており、今後、このブログでも取り上げていきたい。 続きを読む

PracticeFusionがPHRへ進出

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「無料EHR」で一世を風靡したPracticeFusion だが、このたびsalesforce.comとの提携を発表した。この提携は、PracticeFusionにsalesforce.comが投資(総額は発表されず)すると同時に、PracticeFusionが公開準備しているPHR(patient health record)をクラウドコンピューティング開発プラットフォーム”Force.com”上に構築するといもの。

このニュースを読んで、昨日エントリで触れたミシシッピー州メディケイドEHRと同じく、ますます医療情報システムのクラウド化が進展していることがうかがえる。その際のキイワードは「無料」ということだろうが、二年前、PracticeFusionはGoogleAdSenseを利用した「無料EHR」を発表している。当時は「広告付きのEHR」ということが議論になったが、その後、同社は確実にユーザー数を増やしており、現在では18,000人の医師が同社EHRを利用しているようだ。 続きを読む

「ペイヤーサイドのEHR」の考察

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今月、米国ミシシッピー州は、ウェブベースのEHR(Electric Health Records)を無料で医師に提供すると発表した。このEHRの目的は、ミシシッピー州在住60万人のメディケイド(低所得者向け公的医療保険)加入者へのサービス向上にあり、加入者の検査データ、投薬、予防接種、アレルギー等についてのデータを集約している。さらに電子処方箋、退院情報へのアクセス、ケアの空隙を特定するための支援ツールなどアプリケーションも提供する。このEHRは基本的にはメディケイドが持っている医療データを集約し、医療現場に無料で提供するものであるが、メディケイド以外の関係機関が保有するデータも集める必要があり、そのためにHIE(health information exchange)ソフトウェアをShared Health社から調達している。

このケースを読んでいろいろ考えさせられたのだが、一言で言うと、これは「ペイヤー(保険者)サイドのEHR」である。従来、EHRと言えば「医療機関のEMRを広域で集約したもの」というふうに、あくまでも医療機関を起点として考えられてきた。だが、個人の医療情報は保険者側の手元にも大量に集まっており、これをDB化すればたちどころに医療機関を横断するEHRになるわけである。そしてこれをウェブベースで運用すれば、医療機関の枠にとらわれずに、患者個人の医療情報をいつでも一か所に集約できるわけだ。なおかつ、医療機関側ではシステム設置コストも運用コストもかからない。ただ医療機関側のEMRとのスムースな情報交換だけが問題になるが、これもHIEを使用すれば解決するわけだ。つまりこのミシシッピー州のケースは、EHRなど医療情報システムのありかたについて、医療機関以外の多様なプレイヤーの多様なイニシアティブによっても、多様に成立することを示している。

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医療IT化をめぐる新旧両陣営の戦い

EricSchmidt 8月6日木曜日、Googleのエリック・シュミットCEOが、オバマ政権の医療IT促進プランを「イノベーションを阻害し、古い時代遅れの医療ITシステムを温存する可能性がある」と批判した。これは、この春先から起きたEHR認証問題論争とも関連しているが、一方では総額200億ドルとされる米国政府の医療IT促進補助金をめぐる争奪戦という側面もあるだろう。

6日開催された”The President’s Council of Advisors on Science and Technology”の席上、エリック・シュミット氏は「現在政府が計画している全国医療ITシステムは、病院や医師が時代遅れのデータベースシステムを使う事態を招来するだろう。それらシステムにおいては、ますますWebにフォーカスした世界が増大しているにもかかわらずである。政府のこのアプローチ手法はイノベーションを阻害するものであり、医療プロフェッショナルが、現存する時代遅れの医療データベースを使い続けることを請け合うものだ。これらデータベースの多くは、著作権で保護され複製をつくることもできない」と主張した。またGoogleやMicrosoftが開発したWebベースのPHRを例にとり、「国の医療ITシステムはWebベースで、患者が直接コントロールできるものであるべきだ」と述べた。同席していたエール大学総長リチャード・レヴィン氏も、「現状のEHRは、プロプライエタリで相互運用性を欠いたものであり、見るに耐えない」とエリック・シュミット氏の主張を支持した。 続きを読む