「入り口」を制するサービスになるか: RememberItNow


RememberItNowは正しい時間に正しい分量で薬を服用するためのサービス。定時になるとメッセージを携帯に送るシンプルなリマインダー・サービスだ。一見、何の変哲もないただのリマインダーだが、ケアギバーや家族と薬剤データを共有したり、コミュニティに参加したり、簡易PHRのようなデータを管理する機能も備わっている。

特に簡易PHR機能は、将来本格的なPHRに発展する可能性もあるだろう。GoogleHealthやHealthVaultなど巨大なPHRプラットフォームの競争ばかりが注目されているが、逆にこのRememberItNowのような最も消費者に近いサービスこそが、PHR市場の鍵を握っているのではないだろうか。つまり「入り口」を制するサービスこそが重要なのだ。そしておそらく「入り口」は携帯やスマートフォンなどモバイル機器になるにちがいない。その際、その「入り口サービス」は初期段階において、できるだけ消費者にわかりやすくシンプルなかたちをしているはずだ。このRememberItNowのように。

EHRにおいても同様である。医療者向けモバイル薬剤DBサービス「Epocrates」は、最近、EHRへ機能拡張することを発表している。これもまた最もユーザーに近いサービスとして、「EHRの入り口」を占拠する動きであると考えることが出来る。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

糖尿病ツール開発を一般公募: DiabetesMine


糖尿病患者にしてアルファ・ブロガーであるエミー・テンダリッチが主催する糖尿病ブログ”DiabetesMine“では、毎年”Design Challenge”と題するイベントを開催している。これは糖尿病患者を助ける新しいツールやサービスのアイデアを広く一般から募集するもので、今年はこの3月ー4月が応募期間になっている。

従来、医療機器や医療サービスの開発といえば何か敷居が高い印象があったが、日本でもこのように誰でも参加できる仕組みがあってもよいのではないか。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

「評論家」や「啓蒙家」を超えて行け

critic

今日、TOBYO収録の闘病サイト件数は2万件を超えた。二年前、2千件でスタートしたときには、まさか2万件も収録することになろうとは思ってもみなかった。だが決して平坦な道を一目散に疾走してきたわけではない。実はこの間、何度も逡巡を繰り返してきた。「量的拡大だけで良いのか」という問が常にあったからだ。しかし、やがて「ネット上のすべての闘病体験を可視化する」とのプロジェクトミッションが出来上がり、さらに「コアデータに基づく事業化」という事業戦略が明確になってみると、以前のさまざまな逡巡は徐々に吹っ切れたわけだ。

「量から質へ」などと方向転換についてこのブログで書いたこともあった。だが、やはり十分な量の確保がなければ、質だけを抽出することは現実問題として不可能である。このことは直接「闘病ドキュメントの評価方法」の問題に関わってくるのだが、「なるだけクオリティの高いものを選び出したい」と思う反面、自分たちが選考するよりもユーザーに委ねるべきだとも思えた。何度も、このような相矛盾する観点の間を往復し逡巡していたわけだ。 続きを読む

バザール型医療情報サービスへ

bazaar

TOBYOプロジェクトでは今、DFC(Direct From Consumer)商品の試作品製作に着手している。いろいろ検討したが、当面、統合失調症関連のいくつかの医薬品についてDFCレポート試作品を作る予定だ。今後アイテムを増やしていき、最終的に有料サービス「DFCライブラリー」にまとめ上げる予定。まず医薬品から患者体験によって可視化していくが、今後、医療機関、医療機器、治療法、検査法などへ展開していく予定。

さて、これらDFCとDTCによる事業化のほかに、もうひとつどうしても実現したいことがある。それは「バザール型サービス」である。このブログではこれまでたびたび「伽藍とバザール」というテーマでエントリを書いてきたが、これは言うまでもなくエリック・レイモンドによるオープンソースのソフト開発についての同名の論文 、そして2007年に開催された第一回Health2.0カンファランスにおけるスコット・シュリーブのスピーチに触発されたものである。 続きを読む

TOBYOプロジェクトとコミュニティ

hands

TOBYOプロジェクトは三年目に入ったが、紆余曲折を経てようやく基礎工事が終わったということだと思う。収録サイト2万件というサイズが、事業を進める上での最低ラインであることもここへきて良くわかる。この「2万」という数字自体は、インターネットのスケール感から見てむしろ小さい数字だ。それでもTOBYOプロジェクトの事業化にとっては十分に土台となる。

これまでいろいろな人からいろいろな助言や忠告を受けた。その中で「なぜコミュニケーション機能がないのか」あるいは「なぜコミュニティを持たないのか」という声は常に聞こえてきた。もちろんこの二年間に、そのような機能拡張を考えたことがなかったわけではない。だが、できるかぎりシンプルなツールであることの方が、結局、中途半端な多角化に優るとの確信があった。もちろんリソースの問題もあるが、中途半端なコミュニティは必ず失敗することを私たちは過去の経験で学んできたのである。 続きを読む