医療機関サイトの品質と医療ウェブの成熟度

ここ二三日、必要があっていくつかの病院サイトをあれこれ調べている。病院サイトのつくりだが、以前よりはだいぶ改善されたように見えるが、まだまだサイト内導線やUI、情報配置などユーザーに対する配慮は不足していると言わざるを得ない。特に初診案内のわかりにくさは致命的だ。病院で診察を受けようと初めて訪ねてきたユーザーに、もう少していねいな気配りがあってもよいのではないか。特に診療日時や受付場所など、きわめて基本的な情報が不備であるケースが多いのだ。それに対して、相変わらず院長挨拶とか病院理念などを麗々しく配置しているのを目にすると、医療機関のコミュニケーション・マインドはまだまだ低いと言わざるを得ない。

医療機関ウェブサイトの品質を上げることは、依然として大きな課題である。たとえば「ユーザーが選ぶわかりやすい病院サイト、ベスト100!」などコンテストを設けてみるのもよいかも知れない。TOBYOで病院サイト評価&投票を呼びかけてみようかとも思う。医療評価の一環として、もうすこしサイト評価が注目されても良いのではないか。 続きを読む

Health2.0ヨーロッパのオープニング・ビデオ


4月6日、7日パリで開催されたHealth2.0ヨーロッパ・コンファレンス。そのオープニングビデオが公開された。「ヨーロッパでは政府がHealth2.0の重要な役割を果たしている」とのタイトルが付されているが、そう言えばヨーロッパの医療制度は日本に似ている。その意味でこのコンファレンスでどのような議論がされたのか興味深いところだ。

しかし「政府がHealth2.0の重要な役割を果たしている」と言われてもイメージが湧くはずもない。政府と2.0は対立概念としてなら理解できるが、「2.0を推進する政府」など悪い冗談としか思えない。(Goverment2.0というのもあるが・・・・)。だからこのビデオのタイトルを見た途端、正直言ってあまり良い印象を持てなかった。

そう言えば昔、口を開けば「国のe-Japan戦略は云々」などと吹聴していたインターネット医療関連NPOがあったが、このビデオタイトルを見て、あまり思い出したくもないことを思い出してしまった時のような気分がする。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

ウェブ医療サービスのターゲット試論

 target

昨日、今日と痛風発作のため自宅静養。薬を飲んで早く痛みが去るのを待つのみ。このところ酒量増加気味でそれが直接原因。既に生涯飲酒量を越えた可能性大なので、そろそろアルコールをやめようかとも思ったりするが、実行可能かどうか怪しい。

久しぶりに自宅で音楽三昧の時間を楽しんだが、Pewレポートが発表されて以来、医療ウェブサービスの今後を考えることが多い。TOBYO公開からの2年間を思い返してみると、今のところ日本の医療ウェブサービスで現実にワークするものというのは、残念ながら非常に限られているような気がする。それを「なぜこうなっているのか」と原因解明しても詮無いはなしであるから、とにかく今現実にワークするものだけを見極めて動かすしかないのかもしれない。

TOBYOの経験を振り返ってみても、当初構想からかなり変更を余儀なくされているわけで、特にクラウドソーシングがあまりワークしなかったのは予想外の事態だった。「みんなで闘病体験を整理する」ということだが、TOBYOのインターフェースの問題もあるだろうが、それよりもそのようなことが実際に動き出す「気配」というものがまるでなかったのだ。逆に、たとえば他人のサイトをブックマークすることの抵抗感がかなりあることがわかり、これでは「ユーザー参加型医療サービス」への道は遠いと感じた。また、同時に「無断リンク禁止」など大昔の迷信がまだ根強く信奉されていることもわかり、率直に言って失望感を禁じ得なかった。今更「無断リンク」でもあるまい。しかしそれが「現実」なのだ。 続きを読む

現状認識と展望

最近の海外のHealth2.0シーンだが、かつてのような勢いが見られないのはどうしたことか。マシュー・ホルトあたりは「Health2.0シーンは落ち着きを見せ始めてきた」みたいなことを言っているが、逆にWebMDの「2.0化」みたいな動きも出てきている。ある意味では定着期なのだろうが、わくわくするようなニューカマーがもっと登場してきてほしい。

翻って日本を見ると、こちらのほうは残念ながら依然として今一つ盛り上がりが足りない。二年前、当方のTOBYOをはじめライフパレットやオンライフがほぼ同時期にサービスインし、次いでシェアーズやイルネスなども出てきたのだが、とにかく医療分野のスタートアップはまだまだ数が足りない。人にたずねてみると、医療分野ということだけで敷居が高く感じられてしまうとのことだ。技術や知識の問題よりも先に、越えがたい心理的なバリアーが問題になっているようだ。

二年間TOBYOプロジェクトに携わってきて、やはり実際にやってみなければわからなかったことが多いというのが正直な感想だ。プロジェクトスタート時点と二年経った現時点では、かなりあちこちに差異が生じてきていることも事実だ。当初構想していたことがワークせず、結局、別の手法を使わねばならなかったこともいくつかある。また当初あまり重要視していなかったことが、後で決定的に重要になったこともある。だが、様々な試行錯誤を経てみると「医療だから・・・」というある種の構えた意識も次第に薄れていき、ただ価値あるサービスをつくることだけを考えるようになってきたと思う。 続きを読む

物語の共有からマスコラボレーションへ

whuffie

タラ・ハント「ツイッターノミクス」のエントリをポストしたら、早速この本の編集者の方からコメントをいただいた。このスピードにまず驚いた。ブログにツイッターが加わることで情報伝播スピードは猛烈に加速される。このことを実際に体験してみると些末な閉塞感などは忘れ、いかにこの私たちの時代がわくわくする時代かと思えるのである。

TOBYOプロジェクトもこんなスピード感を何らかのかたちで導入したいものだ。いずれにしても、やがて多くの闘病者が自分の闘病体験をツイッターでリアルタイム配信する日がやって来るだろう。すでにそれは一部では始まっているだろう。そして、たぶん従来のような起承転結を持つ「物語」を語るのではなく、自分がいま知りたいことをリアルタイムに誰かへ向けて問うようなスタイルになると思われる。自分の体験を自己完結的に語るのではなく、自分が直面する現下の問題を誰かに問うことへと、ユーザーの情報配信行為は変わっていくと思う。ここでクラウドソーシングがどのように機能するかは興味深い。 続きを読む