「善意」ではなく、イノベーションの方へ

Drucker_Innovation

4月とは思えない寒い日が続いたが、今日は明るい日差しがたっぷりの爽やかな一日だった。今月は痛風のためほとんど断酒状態で過ごしたが、晩酌をやめると読書にたっぷり時間が取れるのがいい。このまま酒を断つのも悪くないと考えるようになった。

発想が煮詰まりプロジェクト進行が停滞したときは、とにかくまったく関連性のない分野の本を読むにかぎる。別に「何かヒントを掴んでやろう」などと考えずに、ただひたすら思考を別の方面へ向け、そして存分に楽しむことだ。そうすれば、また新鮮な興味を持って仕事を始められる。

TOBYOプロジェクトは今年に入って急速に前進したと思う。収録サイト件数が2万件まで来たこともあるが、いろいろな意味でプロジェクト全体の方向性が視界良好になった。何よりもDFCというキイワードによって、B2Bビジネスが明確になったことが大きい。これによってプロジェクトの事業ドメインがはっきりし、投入する商品を特定することができるようになったわけだ。 続きを読む

病気になるほどインターネット・アクセスは減る?

ChronicDisease

先日エントリ「慢性疾患患者は健常者に比べインターネットへのアクセスは少ない? 」の続報。Pewの調査レポート「慢性疾患とインターネット」は、このグラフにこれ以上無いほどわかりやすく要約されている。

健常者のインターネット・アクセス率は81%だが、慢性疾患患者は疾患数が増すほどアクセス率は下がっている。また疾患ごとに見ると、肺疾患(68%)、がん(62%)、高血圧(57%)、糖尿病(50%)、心臓疾患(47%)と、明らかに健常者(81%)より低い。特に心臓疾患では健常者の6割程度と顕著な差がついている。

出典:“Chronic Disease and the Internet”,Pew Internet & American Life Projec

三宅 啓  INITIATIVE INC.

調査とマーケティング: 医療消費者ニーズをめぐって

先週エントリ「慢性疾患患者は健常者に比べインターネットへのアクセスは少ない?」だが、このような調査が日本でも実施される必要がある。日本では、医療分野におけるインターネットの消費者利用実態についてまとまった調査報告を見たことがない。当然ながら、米国Pewのように時系列で消費者のインターネット医療情報利用実態を追いかけるような調査もない。たまに、インターネット利用実態全体の中で医療関連トピックスが取り上げられるのを目にするが、ともかく圧倒的なデータ不足は否めない。

米国では今回のPew調査の意外な結果に様々な反響が起こっているが、よく考えてみると、医療機関に通院し医師のコントロール下で治療を継続している慢性疾患患者は、概してインターネットで情報探索を今以上におこなう差し迫った必要性はないのかもしれない。本当はもう少し他のデータを見ないと何とも言えないのだが、慢性疾患の治療を受けている一患者の立場からしてみると、なんとなく今回の調査結果の意味するところがわかるような気がする。

私たちはTOBYOプロジェクトを通じて、ネット上で自発的に体験を配信している闘病サイトを見続けてきたのだが、これら配信されている闘病体験は日本人全体の闘病体験の氷山の一角に過ぎないのもまた事実である。常識的に見てネットで自分の体験を公開している人たちは、闘病者の中でもかなりアクティブな人たちであることは想像できる。だが、水面下にある膨大な量の体験の実態は知るよしもないのである。一般的なインターネット利用調査などから見て、これらの人々もまずネットで医療情報収集をおこなっていると推測されるが、アクセス頻度などその微細な実態はわからない。 続きを読む

ヘルス・プロモーション・ビデオ、爆笑三題。


より良い医療を求めるよりも、健康に人生を送り医療にかからないことのほうが賢明である。そのために日頃の運動が重要なことは誰でもわかっているのだが、時間がとれなかったりして運動不足の人は多い。その背中を押すために社会的な運動促進キャンペーンがしばしば打たれるが、なかにはお説教みたいなものもあり、あまり記憶に残るものにお目にかかったことはない。しかし、このプロモーション・ビデオは非常に強力だ。これを見れば、皆たちどころに毎日運動するようになるに違いない。ちなみに、決めのコピーは以下の通り。

  1. 毎日の運動。より健康な生活のための最良の処方箋。
  2. 毎日の運動は、あなたの肌を自然に輝かせる。
  3. 毎日の運動は、すべての痛みを速やかに取り除く。

いったいどこで制作されたのだろう。おそらく東南アジアではないだろうか。しかし、このユーモアセンスとアイデアは強力だ。日本の広告クリエーティブからこのようなユーモアやアイデアが失われて久しい。三本目のビデオは、最後にお兄さんが笑うところがブキミ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

政府IT戦略本部の「診療履歴データベース」構想

メディカルインサイトの鈴木さんのブログでも取り上げられたが、政府IT戦略本部が「診療履歴に基づいた適切な医療を全国のどこでも受けられるようにするためのデータベースを整備するなど、医療分野でのIT化推進」という方針を出した。

政府IT戦略本部と聞いて「まだそんなものがあったのか」との思いが強いのだが、小泉政権以来、こと医療分野のIT化促進について、この戦略本部の具体的な成果が何か思い浮かぶだろうか。ほとんど何も浮かんでこないのが実態ではないだろうか。だから今回の「診療履歴データベース」構想についても、いずれ霧散すると考えたほうがよいだろう。いまだにレセプトオンライン化さえ実現しないのだから。期待は失望の母である。

ところでこの「診療履歴データベース」とは一体何なのだろうか。フツウに考えればEHRであるが、全国レベルに統合するようなニュアンスがあるから、かつて米国ブッシュ前大統領がぶちあげたNHIN(National Healthcare Information Network)に近い気がする。ブッシュ構想では2012年までに米国のすべての医療情報をデジタル化するとのことだったが、この実現性をめぐっては悲観的な見方が一般的であった。オバマ政権もブッシュ構想を引き継いでいるようだが、「EHR-RHIO-NHIN」という三層レイヤー構造のうちRHIO(Regional Health Information Organizations)の経営が各地で破綻し、構想は一挙に視界不良となった。 続きを読む