三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

医療情報と映像

TOBYO_kumamoto

9月20日付熊本日日新聞でTOBYO紹介記事が掲載された。「ルポ、患者・医療者の『今』、ネットに広まる闘病記」と題された連載記事のメインには、闘病ブログ「膵臓がんサバイバーへの挑戦」が取り上げられている。「ブログを書く動機は。『まず、病院に行く時に病気の記録が必要かなと思ったもので。すぐに忘れますからね。それと、遠方にいる兄弟姉妹などに読んでもらうと、いちいち報告しなくてもいいと思って。生きた証とか、そんな大それたものじゃないんです。』」とのブログ作者のコメントにあるように、マスコミにありがちな「感動、涙の押し売り」的センチメント抜きの淡々とした記事のトーンに好感をもった。

TOBYOと合わせて「ディペックス・ジャパン」も紹介されているが、「ただ視聴者が予想していたほどには増えないのが悩み。存在がまだ知られていないのも原因のようだ。『活字媒体で存在をPRして注目率を高めたい』と佐藤事務局長は話している。」とのことである。英国のディペックス本家サイトを見ても、アクセス状況をこのブログでも取り上げたことがあるが、その後あまり改善されていないようだ。以前、「英国ディペックスは月間200万アクセス」とか「英国医療ナンバーワンサイト」などと、ディペックスの人達がいろいろな場所で語っているのを見かけたが、いったいあれは何だったのだろうか。また、どうも「映像による闘病情報」というものを、一度再考する必要があるのではないかと思える。一般的に、なにか文字情報よりも映像情報の方が価値が高いとみなすような「迷信」があるような気がする。これは旧メディア世代に特徴的な傾向であるとも思う。 続きを読む

逆説的所感から医療革命まで

IPS
昨日、「こんにちは、しばらく」と夏が戻ってきた。事務所の窓から外を見ると、大きな蜂がうろうろ飛び回っている。やがてとうとう、ベランダに出していた観葉植物の葉っぱの裏にぶら下がって休憩。この暑さに、蜂もまいっているようだ。しばらくするとトンボまで飛んできて、こっちも観葉植物の上で羽を休めていた。そして、今朝起きて石神井公園を散歩してみると、もう秋が来ていた。

夏から秋へ季節は変わる。依然として、当方はTOBYOプロジェクトとDFC開発に取り組んでいる。先週、ある新聞社から取材を受け、「TOBYOのアクセス状況はどうでしょうか?」と質問された。「まだまだ少ないですよ」との当方の返答に訝しげな表情をしているので、「闘病サイトが月間で何億ページビューもアクセスを稼いだら、それはそれでおかしなことですよ。病気のサイトにそんなに人が集まること自体、あまり良いことでもないでしょう」と続けた。

改めて考えてみるとTOBYO公開以来、私たちはアクセスを稼ぐことにあまり熱心ではなかったかもしれない。広告やSEOをはじめ集客のための手も、何一つ打ってきていない。それよりもジワジワと闘病者の間に浸透し、いづれ徐々に闘病活動に活用されるようになっていけばよい、くらいの考えであった。それにTOBYOはあくまで闘病者をターゲットにしており、無理に健常者まで集める必要はない。また、闘病体験とはある意味で「負の情報」であり、そもそも鉦太鼓で宣伝するような性質のものでもない。 続きを読む

シャガールからピリニャークまで

Shagall

今日は妻と秋の墓参へ行った。父が胃がんで亡くなって早4年。いまだに全摘手術そして縫合不全など一連の治療過程を思い返すと、医療機関に対する一抹の疑念が頭をもたげてくる。だが、もうすでに終わったことである。そしてその後、すべての闘病体験を可視化し検索可能にするTOBYOプロジェクトに着手することになった。これも何かの縁か。

墓参の前に、上野の東京芸術大学美術館で開かれていたシャガール展を見た。今回の展覧会はシャガールのみならずゴンチャローヴァ、マレーヴィチ、プーニー、カンディンスキーなどロシア・アヴァンギャルド・ムーブメントも合わせて紹介するものであった。ゴンチャローヴァの鮮やかなオレンジと深いブルーの印象的な色彩配置、マレービッチの「アルヒテクトン」と呼ばれる仮想建築モデルなど面白かった。だが、今回再認識したのはシャガール作品の情報量の多さである。様々なディテールが重層的に書き込まれており、一枚の絵が多面的な表情を見せ見飽きることがない。妻は一番最後の展示場が気に入ったようだが、なるほど充実した作品が多いのが最後の部屋だった。 続きを読む

TOBYO、世界へ!

Health2.0SF2010s

Health2.0 San Francisco 2010のエグゼクティブ・プロデューサーであるLizzie Dunklee氏から公式招待状が届いた。これでTOBYOとDFCのプレゼンテーションはコンファレンス・アジェンダに公式登録されることになる。いよいよTOBYOが世界にデビューするのだ。気合が入る。

招待状によれば、会期二日目の10月8日午後3時45分からサンフランシスコ・ヒルトンのユニオン・スクエアで始まる”Health 2.0 Around the World”セッションに登場することになるようだ。日本からはメドピア株式会社の比木COOと当方パートナーであるメディカル・インサイトの鈴木さん、そしてインドから2社、イタリアから1社がこのセッションに参加する。

インターネット黎明期から、日本語圏ネット上に自然発生的に形成されてきた闘病者のオープンコミュニティ。自己意識を持たない自生的コミュニティ。そしてそこに蓄積された膨大な闘病体験データ。私たちはこれを「闘病ユニバース」と名づけ、そこにある全ての闘病体験の可視化と検索可能化に着手した。こうしてTOBYOプロジェクトは開始され、カオス状態である闘病体験データを構造化し、秩序を与え、その貴重なデータを誰もが、いつでも、容易に、効率よく利用し、共有できることをめざした。 続きを読む

Curationによるデータ構造化

DCC

昨日、イスラエルのFirst Life Researchに触れたが、さっそく今日、二~三の方からお問い合わせを頂戴した。たしかにソーシャル・メディア・マーケティングという視点で医療を眺めるなら、TOBYOやFirst Lifeのような事業が出現するのは自然の流れと言えよう。ソーシャルメディアと医療といえば、本来なら、ソーシャル・グラフのパワーを活用した患者SNS事業などがメインに位置してもよいはずなのだが、残念ながら撤退したサービスもあり、その難易度は高いことがわかってきた。

それに対し、TOBYOやFirst Lifeは「すでにネット上にある公開データ」に焦点を合わせている。そして患者体験として公開されたUGCの構造化をめざしている。TOBYOは「すべての闘病体験を可視化し検索可能にする」とのミッションによって、患者体験UGCの構造化を宣言しているわけだ。実際にはブログなどUGCサイトにメタデータを付し、整理分類し、リスト化を進めている。First Lifeもほぼ同様の考え方をしている。だが、両者が違っているのは、TOBYOがCuration(自動生成データ等に対する人手による検証と修正)という方法を取っているのに対し、First Lifeはセマンティック技術で機械化しようとしている点だろう。「Medical Ontology」と彼らが呼んでいるのは、患者UGCを意味的に機械判別する仕組みのことと推測される。 続きを読む