三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

Health2.0コンファレンスで登場する新ビジネスモデル

sharecare

いよいよ、Health2.0 San Francisco 2010のオープニングが近づいてきた。今回特筆されることは、なんといっても初めて日本からTOBYO&DFCとメドピアが登場することだが、もちろん他にも見どころは多い。

中でも当方が特に注目しているのがFirst Life ResearchShareCareだ。First Life ResearchはTOBYOやDFCと発想が近いので注目している。ShareCareだが、まず参加メンバーが豪華だ。中国やブラジルでウェブサービスを成功させているHSWインターナショナル、WebMDファウンダーのジェフ・アーノルド、全米TV番組”Dr.OZ Shaw”のDr. Mehmet Oz、ディスカバリーチャンネル、ソニー・ピクチャーズ、クリーブランドクリニック、ジョンズホプキンズ大学。プレスリリースでは「ヘルスケアのweb3.0プラットフォームを創る」などとうたっているが、その中身はまだ明らかではない。

一説によれば、現在HSW傘下にある患者SNSの古参サイト“DailyStrength”を、どうやらこのShareCareに合体させるようだ。また医療に関するQ&A機能にかなり注力しているようで、消費者・患者の質問に対し、テレビ番組“Dr.OZ Shaw”やクリーブランドクリニック等の医療エキスパートから直接回答される。また患者SNS”DailyStrength”に蓄積された患者体験データと医療者側の専門知識を結びつけ、構造化するような機能も予定されているようだ。 続きを読む

医療を変えるネット発想

自立分散協調
先週、患者SNSをめぐる考察をポストした。海外でも日本でもここ3~4年の間に多数の患者SNSが登場したが、一部を除き必ずしも順風満帆とは行かないよ うだ。この間、さまざまなチャレンジによってこの分野の経験は蓄積され、いくつかのポイントが徐々に明らかになりつつある。果敢な挑戦は続けられており、 今後も新しい挑戦者が登場するだろうが、既に明らかになっているいくつかの諸点を立ち止まって整理・検討することも必要だ。

米国で第一回Health2.0コンファレンスが開催されてから、この秋ですでに三年が経ち、そろそろ中間総括をする段階に来ているのかも知れない。だが、 インターネットの可能性を医療分野で活用する試みは、ようやくまだ緒についたばかりであることも事実だ。各種SNS、掲示板、バーティカル検索エンジン、 PHR等、たしかに一応出そろって来てはいるが、ネットを医療に活用する可能性はこの程度で終わるものではない。今後これから、誰も考えつかなかったよう な革新的なサービスがきっと登場するに違いない。

最近、「医療からネットを見るのではなく、ネットから医療を見る」ということを再三言っているわけだが、革新的サービスを創造するためにどうしてもそのよう な発想が必要であるからだ。従来の医療を構成する様々な構成物、関係性、機能、発想などを所与のものとして、それらの代替物を単にネッ上に再現するだけであるなら、それは従来の医療を何も変えることはできないだろう。従来にないネットという新しい空間を介して、はじめて医療にかかわる様々なことが変わる可能性を獲得できるのだ。 続きを読む

Health2.0、TOBYO、DFC、そして10月

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昨夜、帰宅してみると食卓に鍋が出ていた。少し早いが、それでも暖かい鍋を美味しく食べた。今日からもう10月。今月はまず、なんといっても来週サンフランシスコで開催されるHealth2.0コンファレンスのTOBYO&DFCプレゼンだ。いよいよTOBYOが世界に向かってデビューする。そして今月、DFC(Direct From Consumer)アルファ版が完成する。TOBYOプロジェクトにとって、この10月は大変重要な一ヶ月となる。

今までこのブログをご覧になればおわかりいただけると思うが、TOBYO開発のために、私たちはまず世界の動向に目を向け、世界の新しい潮流とシンクロすることを常に考えてきた。日本には日本独特の医療文化があり、医療制度がつくられているが、これらの内部に属し完結してしまうような発想では、決して新しい医療情報サービスは生み出せないからだ。その意味で、今回Health2.0コンファレンスでのプレゼンテーションは、これまでの私たちの方向性からしてきわめて自然ななりゆきだと思う。 続きを読む

患者SNSの考察 2

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前回考察の結論をシンプルに言いかえれば、「闘病ユニバースのサイズが、患者SNSなどのアクティブ・ユーザー数を決定する」ということだ。ここで言う「アクティブ・ユーザー」とは、患者SNSなどで実際に闘病ドキュメントを書いて公開し、積極的に他のメンバーと交流するユーザーのことを指す。

このことは、「闘病ユニバースのサイズ、3万から5万」という数字を上限として患者SNSサービスを組み立てる必要を示しているが、このような窮屈な数字を前提にしなければならないとすれば、患者SNSの事業化は最初から困難になる。

しかし一方で、たとえば我が国の高血圧の患者数は一説によれば4,000万人とも言われ、糖尿病患者数はその予備軍を含めると2,000万人に及ぶとも言われている。このような数字を見ると「3万から5万サイト」という闘病ユニバースのサイズはいかにも少なすぎるように思える。ところが、一般的な疾患別患者数と闘病ユニバースの疾患別サイト数の「違い」に注目しなければならない。TOBYOが採集した疾患別サイト・リストを見ればわかるが、一般的に闘病ユニバースでは、高血圧や糖尿病のようなコモン・ディジーズの闘病サイトよりも、まだ治療方法が確立していないような難病疾患あるいは希少疾患のサイトの方が多いのだ。 続きを読む

患者SNSの考察

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最近ウェブを巡回していて、ある患者SNSサイトが姿を消していることに気づいた。たしか春先にはまだ活動していたと思うのだが、いつのまに消えてしまったのだろうか。無性に寂しさが募る。残念だ。だがそれと同時に、改めて患者コミュニティの困難さというものを考えてしまう。

ところで当方は「ネット上の闘病サイト3万件」とこれまで推定してきたが、最近は「3万から5万件の間」と言うようになってきている。ゆっくりとだが闘病ユニバースは成長している。だが、この「3万から5万」という数字をどう見るかが問題なのだ。この数字を大きいと見るか逆に小さいとみるかで、闘病ドキュメントなど患者生成コンテンツに基づくウェブ・サービスのあり方は変わってくるのではないか。あるいはこの数字が何を意味しているかを洞察することによって、どのようなサービスが成立可能になるか仮説を組み立てることもできるのではないか。 続きを読む