三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

医療SNSを簡単に、手軽に、安く作る方法

ALSUntangled

“ALSUntangled.com”は難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の国際研究コミュニティ。米ノースカロライナ州のデューク大学病院ALSクリニックによって主催されており、現在、世界6カ国のALS研究者とALS患者が参加し、着々と研究成果を上げている。この研究コミュニティの知識情報共有を支えているのはツイッターとSNSだが、SNSとしてあの“NING”を採用している。

もう五年ほど前になるだろうか、当時のWeb2.0ムーブメントの中でもひときわ注目されていたのがこの”NING”であった。これは高機能なSNSホスティング・サービスで、自分の思い通りにカスタマイズしたSNSを簡単に立ち上げることができる。久しぶりにNINGサイトをのぞいてみたが、トップページは完全に日本語化されていた。だがいろいろ調べてみると、どうやら広告のビジネスモデルがうまく行かなかったようで、有料サービスに移行していた。それでも利用料金は月額$2.95-$49.95と安い。ちなみに月額49.95ドル(約4000円)で提供される機能は次のようなもの。 続きを読む

ビジョンと教訓

11月に入った。夏場から開発してきたDFCをいよいよ仕上げる段階。開発の山はおおよそ越えられたものの、全体として工程は遅れ気味。。来年早々の稼働へ向け準備を進めていく。

昨日エントリの「メディラシージャーナル」だが、本日、全サイトを閉鎖したとのこと。思い切った決断に敬意を表したい。主催者ブログに「お詫び」エントリー がポストされた。「科学的根拠のない医療情報発信」、「科学的根拠のない広告が表示」との理由だが、それよりもっと基本的な「責任所在の明確化:主催者名、住所」、「広告とコンテンツの明示的区分」、「掲載情報の引用出典の明示」などが問題だったと思う。

案外、この件で改めて浮き彫りになった問題は、医療関連のコンテンツ連動広告や検索連動広告などのありかたかもしれない。従来野放しであったこれらの広告に対し、最近、一部のNPOが違法事例報告などを開始している。たしかにメディラシージャーナルのアドセンス掲出方法はやり過ぎの感が強く、「荒稼ぎ」批判も上がったが、結局一番儲けているのはGoogleなのである。いずれ、他社も含め違法医療関連広告の配信責任を問う声が起こってくるだろう。

もう一つ重要なことは、このメディラシー事件の一連の推移の中で「医療者以外は医療情報をあつかうな」という声が起きた点である。これは極端すぎるのではないか。もしも、こんなふうにウェブ上の医療情報配信が規制されるなら、闘病者が闘病体験を公開することもできなくなってしまうだろう。これを敷衍すれば「素人は医療に口出しするな」というところに行き着くはずだ。これはまさに患者参加型医療とは正反対のパターナリズム(父権主義)回帰である。メディラシー事件は、大衆の中に存在するパターナリズム回帰心情を顕に呼び出してしまった。医療を取り巻く私たちの現実は、このように可逆的で流動的な危うさを内包している。 続きを読む

ジャングル・ビートとDFC

DFC101028

いきなり冬。コートを出した。今年の天候は極端だ。このまま厳寒の日々が来るのか。紅葉はどうなるのだろう。

一昨日、横浜へ山下達郎ライブを聞きに行った。昨年春も中野サンプラザで聞いたが、ボーカルパワーは今回の方が圧倒的に上。最初リズムがやや重いように感じたが、徐々に全速疾走。前半のジャングル・ビート(Bo Diddley!)ものメドレーが面白かった。お決まりの“心臓に指鉄砲”でのクラッカーなど、みんな楽しんでいたね。あっという間に3時間が経った。

ところで夏から開発に取り組んできたDFC(Direct From Consumer)(上図)だが、遅れてはいるものの進捗している。今日、ディスティラーが部分的に動くようになったので初めて使ってみたが、これは予想以上におもしろいツールになりそうだ。企画段階から「今までにないユニークなツール」というイメージを描いていたが、実際に動くさまを目にしてみて、たしかに今まで誰も体験したことのないユーザー・エクスペリエンス(ちとオーバーか?)だと思った。 続きを読む

医療情報の生態系 2

innocently

前回エントリでは、日本語ウェブ上の医療情報について、量よりも質を先に論じるような「問題」の立て方自体がおかしいと指摘した。医療界や行政などから出てくる医療情報量の少なさを見ずに、個人や民間企業の「怪しげな情報」だけを取り上げて警戒心を煽るような「問題」の立て方こそが問題なのだ。本来、医療界や行政側の医療情報が量的にもっと充実していれば、「怪しげな情報」の突出も後退するはずだ。医療情報を生態系として捉える視点とは、全体のバランスを考量する視点であり、一方を指弾する視点ではないだろう。

では、これから医療情報生態系はどのような進化をとげるのだろう。そろそろ今後のビジョンを思いめぐらす時期に来ているのかも知れないと、最近考えることが多い。というのは、ここ数年ウェブを支配してきたWeb2.0がそろそろ終わるかもしれないからだ。その兆候として、すでにSBMやRSSの関連サービスの衰退が指摘されている。数年前に一世を風靡したdiggの大規模リストラが伝えられるご時世なのだ。確かにSBMやニュース・アグリゲーターなどは、早晩、ツイッターに代替される可能性が高い。また、2.0に代わってソーシャルウェブという言葉が語られることも増えてきている。

欲しい情報へ到達する手段が、検索エンジンやSBMからツイッターやFacebookにシフトする可能性も論じられている。これらツールやサービスの消長の先にどんなウェブがあり、そしてどんな医療情報の生態系があるのだろうか。そんなことを考えはじめている。 続きを読む

医療情報の生態系

ecosystem

先週10月20日付け朝日新聞朝刊に「ネットの医療情報、見極める」と題する記事が掲載され、ネットにも公開された 。TOBYOや当方コメントも紹介してもらったが、ネット医療情報の現状に対する多様な声を、ポイントを押さえながらも非常にコンパクトにまとめ上げてあり良い記事だと思った。この記事によって諸関係者の布置が俯瞰され、TOBYOプロジェクトが置かれている現下の位置がよくわかったのである。

しかしながら、ネット上の医療情報の信頼性にかかわる問題は、かれこれ10年も前から同じような議論が繰り返され、一向に前進していないように思われる。これはなぜなのか。記事には「ただ日本では、検索エンジンで上位に並ぶのは企業や個人のサイトが多い。怪しげな治療法を勧めるサイトもあって問題だ」(CNJ関係者)との発言もあり、このあたりを調べてみると「ネット上の医療情報の質の日米比較」論文まで書かれているようだ。(CNJの参考ビデオ)。それによれば、米国よりも日本の方が圧倒的に「ネット医療情報の質」は劣るとのことだ。だが、どうして「量」の前に「質」を論じてしまうのだろう。逆ではないのか。 続きを読む