三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

The system formerly named as “DFC”

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これまで「DFC」と呼んできた開発中の新システム”Dimensins”(ディメンションズ)のロゴが決まった。前回エントリでネームは

“Patient Experience Dimensions”

とアナウンスしたが、いささか長ったらしいのでシンプルに”Dimensions”と言い切った。

フルネームとシステム・コンセプトは”Patient Experience Dimensions”。ネット上の膨大な患者体験空間を構成する諸次元(医療機関、治療方法、医薬品他)を分解し切り出すシステム。

まず、ネット上に自分の闘病体験を公開してくれた、たくさんの闘病者の皆さんに感謝します。皆さんがネットに闘病体験を公開してくれなかったら、このようなイノベーションが実現することはなかったでしょう。そしてウェブとテクノロージーに敬意を表し感謝します。

ところでこのエントリー 「内定をくれない企業を恨む前に」は本当に実にいい話だ。深く共感した。私たちもまた、ネットとテクノロジーが好きだし、人一倍その素晴らしさを感じている。Health2.0もまた、ネットやテクノロジーが好きで、その素晴らしさを医療に活かしたいというプリミティブな情動がその基底にあるはずなのだ。だが、ネットに対する愛情のないHealth 2.0論や、陳腐なHealth2.0論が目につきだした。また他方では、ネットやテクノロジーに対する愛情も敬意も感じさせない医療関連サイトが多い。ネットへ出てきて「ネットは怖いところで危険だ」などと発言するなど、何かおかしいのではないか。本当にネットやテクノロジーが好きで、リスペクトを抱いている人間こそがHealth2.0の担い手であるはずだ。
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日本のHealth2.0: 2.0を語るな。2.0をやれ。

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「日本のHealth2.0」というイシューが語られるようになったのは、今年の夏、六本木ヒルズで開催されたHealth2.0 Tokyo Chapter2からだと思う。当日、私もパネルディスカッションに参加し意見を述べたが、現状を見れば事業プレイヤーの数の少なさは覆うべくもない。

私たちのTOBYOは、米国におけるHealth2.0ムーブメントに大きな刺激を受けてきた。2006年以来、米国のHealth2.0シーンはウェブ医療サービスの実験場であり、ありとあらゆるビジネスモデルが登場しては消えていった。一説では2,000社のスタートアップ企業がローンチしたとも言われている。その中で成功したとされる企業は数少ないが、とにかく膨大な量のチャレンジがこの分野に集中したのだ。成功したケースに学ぶことは必要だが、多くの失敗ケースもまた貴重な教訓をあとに続くものに語ってくれている。

その中で徐々に、「このケースはうまくいくが、このケースが成立する余地は少ない」というふうに、いくらか見通しが立てられるような状況が生まれている。だが、米国と日本では医療制度がかなり異なり、事業のフィージビリティを同一視できるわけでもない。米国における実験に学びながら、日本固有の状況に適応していく必要もある。

「日本のHealth2.0」というイシューがいくばくかの有効性を持つためには、まず何をおいてもプレイヤーの量が増えることが大前提となるだろう。20代、30代の若いファウンダーがこの分野でどんどん出現してくるような状況が必要なのだ。それがイメージできないのなら、このイシューはなんの現実的な基盤も持たず、単なる同好の士の趣味談義と変わるところはない。 続きを読む

PED (Patient Experience Dimensions)

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12月。新システム開発は依然として続く。いろいろと新たな難所が「こんにちは!」と顔を出してきているが、一つ一つ解決していくほかない。むろんシステム開発の遅れは、身体にも精神にも良い影響を及ぼさない。しかし、遅れることによって得られる知恵やアイデアもある。むしろサバサバした明鏡止水の心境で、これまで熟慮できていなかった諸点を考え直してみるのも良いだろう。

まず「DFC」があまりにも直截に新システムの概念規定をしてくれたように思えたので、これまであまりシステムの具体的な機能やその意味を、立ち止まって深く考えることはなかった。だが、徐々にシステムが現実に姿を表すようになってくると、次第に、むしろシステムが持つ具体的機能自体を表現する言葉が必要だと思うようになった。単に「医療消費者の生の声を直接エキスパートへ」ということでは、まだこの私たちのシステムの新しい機能や可能性を十分に言い尽くしていないと感じるようになった。

だが。この新システムの機能を説明することは容易ではなかった。このようなシステムが、これまでどこにも存在しなかったからだ。夏場にようやく仕様設計書が完成し打ち合わせをしたとき、設計者である奥山の説明にプログラマーもデザイナーもどことなく腑に落ちない顔をしていたのを思い出す。また、私自身も振り返ってみると、ブログリサーチのシステムに影響されたせいもあるが、あのファースト・ライフ・リサーチ社のように「時間軸」というものを過度に重視していたので、変な話だが、このシステムの本当の芯に位置する価値とその意味を十分には把握できていなかった。 続きを読む

TOBYOプロジェクトの現在

11月最後の日曜日。今月を振り返ると、医療情報に関する話題が多かったような気がする。日本語圏ウェブにおける医療情報の現状は、まさに「悪貨は良貨を駆逐する」ような状況にある。全体として医療界や行政などから配信される医療情報の絶対量が不足しており、根拠の定かでない情報が圧倒的に多い。ネット上の医療情報の不確かさに注意喚起するだけでなく、とにかく医療界および行政側の医療情報配信の量的拡充が望まれている。そんなことを強く考えさせられた。

さて今月、TOBYOの収録疾患数は1000件を越え、乳がん闘病サイトの収録件数は1800件を越えた。国内で1800人の乳がん体験へアクセスできるのはTOBYOだけだ。1800人の乳がん体験に、今すぐ即座にアクセスすることができる。これはGoogleなど従来の検索エンジンでは実現できないことだ。乳がんのみならず、他の疾患においても、TOBYOはすでに国内最大の闘病サイト件数を収録している。サイト総収録件数は2万5千件に近づいているが、ようやくTOBYOは闘病者のニーズに十分に応えられる量的規模に達してきたと考えている。

また1800人の乳がん闘病サイトの中から、年齢層、サイト開設年次で絞り込み、さらに治療方法、現住地、薬剤などタグで細かくフィルタリングすることによって、自分と同じような体験者の記録を簡単に見つけることができる。TOBYOが実装している機能は非常にシンプルだが、データ量が十分に確保されるにつれ、そのシンプルさが活きてくる。 続きを読む

11月22日、コンサートの夜

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昨日11月22日は「いい夫婦」の日。それでと言うわけでもないが、仕事を早めに切り上げ、三軒茶屋で妻と待ち合わせ、昭和女子大の人見記念講堂で大貫妙子と坂本龍一のコンサートを聞いた。夕暮れ時に小雨が降る11月の街を足早に歩いていると、何か気持ちが静まるような瞬間に出会うことがある。そんなことを考えながらコンサート会場に着いた。

コンサートは予想以上に良かった。大貫妙子の歌をかれこれ35年は聞いてきたが、その表現は以前にも増してピュアで深い。一曲一曲の静寂な佇まいが、ちょうどこの季節のこんな夜の空気と解け合う時間を体験した。アンコール最後の曲「風の道」の余韻を胸に、雨の夜を家路についた。

DFCシステム開発の遅れと格闘しながら、新しい勇気を得たような気がした一夜だった。

三宅 啓  INITIATIVE INC.