11月最後の日曜日。今月を振り返ると、医療情報に関する話題が多かったような気がする。日本語圏ウェブにおける医療情報の現状は、まさに「悪貨は良貨を駆逐する」ような状況にある。全体として医療界や行政などから配信される医療情報の絶対量が不足しており、根拠の定かでない情報が圧倒的に多い。ネット上の医療情報の不確かさに注意喚起するだけでなく、とにかく医療界および行政側の医療情報配信の量的拡充が望まれている。そんなことを強く考えさせられた。
さて今月、TOBYOの収録疾患数は1000件を越え、乳がん闘病サイトの収録件数は1800件を越えた。国内で1800人の乳がん体験へアクセスできるのはTOBYOだけだ。1800人の乳がん体験に、今すぐ即座にアクセスすることができる。これはGoogleなど従来の検索エンジンでは実現できないことだ。乳がんのみならず、他の疾患においても、TOBYOはすでに国内最大の闘病サイト件数を収録している。サイト総収録件数は2万5千件に近づいているが、ようやくTOBYOは闘病者のニーズに十分に応えられる量的規模に達してきたと考えている。
また1800人の乳がん闘病サイトの中から、年齢層、サイト開設年次で絞り込み、さらに治療方法、現住地、薬剤などタグで細かくフィルタリングすることによって、自分と同じような体験者の記録を簡単に見つけることができる。TOBYOが実装している機能は非常にシンプルだが、データ量が十分に確保されるにつれ、そのシンプルさが活きてくる。
TOBYOプロジェクトのミッションは「ネット上の全ての闘病体験を可視化し、検索可能にすること」である。ネット上の闘病体験をオーガナイズし、構造化する試みは、必ずやすべての闘病者の役に立つと考えてきたが、少しづつ積み上げて来たことが徐々に力を発揮しつつある。ここのところ、ずっとB2Bサービスの”DFC”開発に取り組んできて、ややもするとTOBYO本体を伝えることが少なくなっていたが、今後は国内最大の闘病体験データベースに成長したTOBYOのユーザーベネフィットを広く伝えていきたい。
ところで”DFC”だが、名称変更を検討している。システム開発を続けながら多数の人からご意見を頂戴してきたのだが、そのうちに「もっと患者体験の用途開発を広く考えるべきではないか」との思いが強くなってきた。これまで何度も説明してきたが、DFCとはDTCの対概念である。ということは単独では意味をなさない。また医薬品業界だけの概念という側面もあり、もともと「広がり」はない。さらにTOBYOのデータソースは「患者」であり、ブログリサーチのような消費者一般ではないから、むしろ「Consumer」よりも「患者」という言葉を明示すべきだと思う。以上のようなことから、どうも”DFC”というネームは変更した方がよさそうだとの結論に至った。
システム開発はいよいよ終盤にさしかかっている。ずいぶん遅れてしまったが、なにぶん、これまでまったく存在しなかったモノを作るのだからこれも仕方ないと考えている。
国内最大の闘病体験データベースであるTOBYO。そして、まったく新しいエキスパート向けシステム。長い道のりであったが、ようやく当初私たちが考えていたことが一つひとつ実現される段階に来た。
三宅 啓 INITIATIVE INC.