FoxBusinessで「keas」を語るアダム・ボズワース氏: keas

今月からベータ公開を開始した「keas」だが、やはり「あのアダム・ボズワースのプロジェクト」ということもあってか、米国では各方面の強い関心を集めている。その注目の人アダム・ボズワース氏が、FoxBusinessに登場し自らkeasを語っているので紹介しておきたい。また、「Adam Bosworth’s Weblog」でも、氏自身のkeasの説明「Learning from customers」 がポストされているのでご参照あれ。

「keas」自体はユーザー個人に特化した具体的な問題解決の提供という点で、従来にないユニークな医療サービスになっていると思う。おそらくこれに23andMeのような遺伝子解析サービスが付加されれば、最強のテーラーメイド医療サービスへ進化していくのではないか。

そしてまた、まったく新しいウェブ医療サービス領域を切り開きつつあるPatientsLikeMeなどとも、Keasはいずれどこかでクロスするような気がする。すでにこの春から、PatientsLikeMeと23andMeが、共同してパーキンソン病克服プロジェクトの取り組みを進めている。どうやら消費者向けウェブ医療サービスの今後の行方は、この三社を中心として展開していくような予感がする。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

病院のソーシャルメディア戦略: MayoClinic

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最近公開された米国MayoClinicのソーシャルメディアに関するプレゼンテーション。MayoClinicと言えば、米国でも最もマーケティングとコミュニケーション活動に熱心な医療機関として知られている。特にかつてのMedicalEdgeなどは、一種の医療情報通信社としてマスメディア向けに定期ニュース配信までしており、医療機関の広報センターとしては破格の存在であった。だがここ数年のうちにマスメディアの影響力は激減してきており、MedicalEdgeも規模を縮小され、新たにMayoClinicのソーシャルメディアへの取り組みが開始されたようだ。

数年前、日本のある大手病院にMayoClinicをモデルとしたコミュニケーション活動戦略を提案したことがあった。競合プレゼンの末、当方提案は採用されたのだが、実施段階で結局フェードアウトの憂き目に会った。責任感のきわめて薄弱な病院幹部の態度には呆れたが、事務方にマーケティングやコミュニケーションがわかるスタッフが皆無であることにも驚いた。これでは、戦略的なコミュニケーション活動などできるわけがない。 続きを読む

e-Patient Revolution


先月ポストしたエントリ「参加型医学(Participatory Medicine)」で、最近米国で脚光を浴びる機会が多い「参加型医学」と「e-Patient」のことを取り上げた。これまで日本でも「患者中心医療」などの言葉はあったが、はっきり言わせてもらうと単なるスローガンに終わっていたと思う。言葉だけで患者を持ち上げながら、実体はなんら変わるところのない従来医療。そんなトリックは患者からとっくに見破られていることを、医療者は早く気づいた方が良い。

ところで参加型医学ムーブメントを担ってきた「e-Patients.net」 が中心となって、今月26日-27日、フィラデルフィアで「e-Patient Connections 2009」 と題されたコンファレンスが開催される。そのPRビデオが公開されたのでご紹介したい。

「革命」という文言にはいささか食傷するが、今後、医療の参加者としての患者の役割は増えていくに違いない。たとえば、患者が自分の闘病体験をドキュメントにまとめ上げ、ネットで公開する利他的行為なども、その「参加」の一つの形態であるだろう。TOBYOプロジェクトはそのような「患者参加」をエンパワーすることをめざしている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

ネット医療情報利用実態と今後の展望

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以前、ブログなどで闘病体験を公開している日本の闘病者はおよそ三万人であり、全患者に占める割合は非常に小さいと書いた。このことについて、その後あれこれ考えていたのだが、去る6月「Pew Internet & American Life Project」が発表した米国におけるインターネット医療情報利用実態調査報告書を見ると、やはり同じような傾向が米国にもあることがわかった。Health2.0ムーブメントの隆盛がある一方では、このような厳しい現実も存在することを直視したい。

まず同報告書は「米国成人のうち61%が医療情報を求めてインターネットにアクセスしており、これは2000年(25%)から著しく増大」としている。しかし「インターネットの世界に一層深く関与しつつも、引き続き米国成人は医療情報のトラディショナルソース(医師、家族、書籍等)も参照している」とも指摘している。そして注目すべきは同報告書が「インターネットによる医療情報利用者のうちの約半数は、自分のためにではなく、誰か他人の代理で情報を検索している」と指摘しているところだ。これでいくと、実際に自分のためにネット上の医療情報を利用しているのは成人の約30%になる。 続きを読む

次世代ウェブ医療サービス登場!: keas

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6日付NewYorkTimesは、アダム・ボズワース氏率いる「keas」のローンチを紹介している。アダム・ボズワース氏がGoogleHealthプロジェクトから離脱すると同時にGoogleを去り、すでに2年が経過した。これまでのボズワース氏の業績から見て、かならず画期的な医療サービスを開発してくれるとの期待は大きかったが、登場した「keas」はこれら期待に応え、まさに次世代ウェブ医療サービスのあり方を具現化するものである。

これまでのウェブ医療サービスは、さまざまに雑多なスタイルはあれど、おおむね「医療情報サービス」というくくり方で一括できるものであった。つまり「医療情報」をどのようにユーザーに提供するかをめぐり、提供方法のバリエーションと便益性を競うものであった。そしてここにおける「医療情報」とは、あくまでも「一般的な医療情報」のことであった。疾患情報、薬剤情報、治療情報、医療機関情報など多岐に渡るとはいえ、これらはあくまで一般化され抽象化された情報である。ここで欠落しているのは個別性であり具体性であり、さらに言えば特定個人についての情報である。だが闘病者が求めているのは、たとえば「乳がん」という一般医療情報ではなく、本当は「自分の乳がん」に関する個別情報なのだ。 続きを読む