ある臨界点をめぐる考察

最近、いろいろな人にお会いしてよく聞かれる質問に「あまり医療のことはよく知らないのですが、医療系ベンチャーにはやはり相当の医療の勉強が必要でしょうねぇ・・・」というのがある。それに対し「いいえ、むしろ医療のことをあまり知らない方が良いケースもありますよ」と応えると、たいてい意外な顔をされることが多い。

医療者でもないのに中途半端に医療界の事情通になったりすると、次第に自分が医療界のメンバーであるかのように錯覚しはじめ、挙句は医療界に成り替って消費者に説教までしだすような例をこれまで何度も目撃して来た。こういう連中は、最初は消費者中心医療とか患者目線の医療などと、消費者や患者を持ち出してむしろ医療界や官庁などエスタブリッシュメントに批判的なポーズを取ることが多いのだが、ある「臨界点」を超えてしまうと、逆に「医療界の事情」とか「国の医療政策」などと、訳知り顔に消費者に向かって解説し、啓蒙家を気取り始めるのである。まさに「ミイラ取りがミイラ」である。「国の医療政策はかくのごとく進展し云々・・・」などと役人作文然とした決まり文句を並べ、まるで「国営NPO」ででもあるかのような、そんなミイラ団体まで存在するから恐れ入る。

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