昨日エントリーで触れた英国保守党キャメロン党首のNHS批判は、今後の公的な医療情報システムのありかたに一石を投じるものである。たしかに英国のみならず、どこの国でも公的な情報システムは膨大な国家予算を投じて構築運用されるわりには、その利用頻度は少なく、巨大な浪費と損失に終わっているケースが多い。e-TAXや住基カードの例を出すまでもなく、とにかくこれまで「過去の成功事例」をまったく思い出せないほど「公的情報サービス」の信用は極端に低いのだ。 続きを読む
月別アーカイブ: 2008年1月
英国NHSのITプログラムに対するHealth2.0的批判
DTC検査サービス:MyMedLab
ウェブは、時にはリアルでは困難な新しいプレイヤー同士の結びつきや経路を創出する。これは一種の流通変革と考えることもできよう。医療においてもその「流通」過程にウェブを介在させることによって、新しい経路が開かれ、新しい事業が生み出される可能性はある。ただ、その自由度は他の産業に比べるときわめて狭いだろう。自由自在に経路を開き、異なるプレイヤー同士の結びつきを作るには、医療を取り巻く諸規制はあまりにも厳格である。とは言え、消費者視点で従来の医療を変革する挑戦はすでに始まっている。昨年11月、DTC検査サービスをリニューアルし、サイトを新たにリローンチしたMyMedLabもその一つとして注目される。 続きを読む
患者中心医療とPHR
年末のエントリーで医療界において頻繁に使用される「患者中心医療」という言葉が、現実には空々しいスローガンにしか過ぎず、医療現場において何の実体もないではないかと指摘しておいた。患者のみならず、顧客やユーザーが「中心」に位置づけられるのは他の全ての産業では「常識」であり、ことさら改めて言うまでもないことなのだが、医療ではそうではないからこそかくも頻繁に用いられるということか。また、これはおそらく「患者様」呼称と同じような種類の問題であり、生活者や患者側は容易にその虚構性を見抜いているのだが、医療界だけがそれに気づいていないということか。 続きを読む
イングランドで全住民対象PHRが稼働
年末の英国BBCニュースは、英国NHS(国民保健サービス)がイングランド全住民を対象としたPHR「NHS Care Record Service」 (CRSと略す)のローンチを「最初の患者電子記録が新しいNHSオンライン・データベースにアップロードされた」と伝えた。これは予算総額120億ポンド(約2兆5千億円)に上る英国医療ITプログラムの一部分を構成するもので、現時点では、おそらく世界最大規模のPHRになるものと思われる。 続きを読む