患者中心医療とPHR

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年末のエントリーで医療界において頻繁に使用される「患者中心医療」という言葉が、現実には空々しいスローガンにしか過ぎず、医療現場において何の実体もないではないかと指摘しておいた。患者のみならず、顧客やユーザーが「中心」に位置づけられるのは他の全ての産業では「常識」であり、ことさら改めて言うまでもないことなのだが、医療ではそうではないからこそかくも頻繁に用いられるということか。また、これはおそらく「患者様」呼称と同じような種類の問題であり、生活者や患者側は容易にその虚構性を見抜いているのだが、医療界だけがそれに気づいていないということか。 続きを読む

イングランドで全住民対象PHRが稼働

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年末の英国BBCニュースは、英国NHS(国民保健サービス)がイングランド全住民を対象としたPHR「NHS Care Record Service」 (CRSと略す)のローンチを「最初の患者電子記録が新しいNHSオンライン・データベースにアップロードされた」と伝えた。これは予算総額120億ポンド(約2兆5千億円)に上る英国医療ITプログラムの一部分を構成するもので、現時点では、おそらく世界最大規模のPHRになるものと思われる。 続きを読む

2008年を迎えて

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今年はいよいよ「TOBYO」(トービョー)が起動する年。予定では1月にアルファ版、3月にベータ版を公開することになる。当初計画よりも1年遅れとなったが、ようやく具体項目をタスクリスト化して一つ一つこなしていく段階に来た。われわれにとって2008年は、まずTOBYOを軌道に乗せる年である。 続きを読む

2007年を振り返って: 医療の量的不足

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一心不乱に世界の医療とウェブをめぐる新しい動向を紹介し、その意味するところをあれこれ考察しながら書き継いできた当ブログであるが、今月ではや一周年を迎えた。何度も断っているように、元来、このブログはタイトルを見ればわかるが、「TOBYO」という新サービス開発上の進行状況や直面する問題を公開していこうとの趣旨で開設した。その本来の趣旨に照らしてみるなら、肝心の「TOBYO」ローンチがどんどん遅れ、一方の欧米Health2.0動向関連のエントリーがいつしか中心になって来たのである。率直に言って「本末転倒」とは、まさにこのブログのようなものを指すのかも知れない。 続きを読む

オープンソースPHRの”Indivo”がDOSSIAコンソーシアムに採用決定

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昨年、インテル、ウォルマート、ブリティッシュ・ペトロリアムなど、欧米巨大企業がPHR共通プラットフォームを作るために大挙結集したコンソーシアム”DOSSIA”。しかし、この夏にはシステム開発をめぐって、コンソーシアムと開発委託先であるOmnimedixとの間に訴訟が持ち上がり、その行く手には暗雲が立ち込めたのである。

その後、DOSSIAコンソーシアムはOmnimedixとの関係を清算し、新たな開発パートナーを探していたのだが、去る9月17日、ボストン本拠のCHIP(the Children’s Hospital Informatics Program)とパートナー契約を結ぶことを発表した。CHIPはハーバードメディカルスクールが運営するボストン子供病院における調査研究プロジェクトであるが、90年代半ばより患者中心PHRの研究を進め、“Indivo”と呼ばれるオープンソースのPCHR(Personally Contorolled Health Record)システムを開発している。今回のパートナー契約によりDOSSIAコンソーシアムは、そのPHRシステムのコアに”Indivo”システムを採用することになったわけである。 続きを読む