家系図から家族の健康リスクを知る新サービス「MyFamilyHealth」

MyFamilyHealth

昨年あたりから、海外では個人の遺伝子解析サービスが、Googleの資本参加で注目される「23andMe」社をはじめ一斉に立ち上がった。遺伝子データを使って将来の個人別疾患リスクを予測しようというものだが、料金も各社1000ドル程度にまで下げてきており、今後の有望医療市場と目されている。ところで同じく遺伝子に着目しながらも、「家系による遺伝」という点にフォーカスした新しいサービスがイギリスから登場した。

MyFamilyHealth はオンライン家系図サービスとSNSを合体させ、これまでにない個人医療情報サービスを立ち上げた。「家系図は最も重要な遺伝子診断になった。すべての家族は何らかの疾患を持っている。そのことをより良く知るためには、より多くのツールを使って予防医学を実践しなければならない。あなた自身とあなたの子供たちのために。」とトップページには掲出されているが、このサービスはまず家系図を作成し医学的な情報を加えて提出すると、その「医療家系図」を元に、ユーザーとその家族に存在する遺伝的リスクを分析評価してくれるのである。 続きを読む

過去への誘惑

revolutionhealth3

RevolutionHealthが苦戦している。一昨日(8月4日)のTechCrunchは次のように報じている。

Revolution Healthはいろいろトラブルを抱えているという噂で、レイオフを繰り返していることが報道されている。またMorgan Stanleyを雇って買収してくれる相手を探しているとも伝えられる。トラフィックもピーク時の月間400万近くから先月は160万へと急降下した。

さらに、女性向け広告ネットワークであるGlamMediaがRevolutionHealthの買収に乗り出しているとの噂もあるようだ。RevolutionHealthはAOL創始者のスティーブ・ケース氏をCEOとし、元ネットスケープ社のジム・バークスデール氏、HPの元CEOのカーリー・フィオリーナ氏、元国務長官コリン・パウエル氏など、超豪華メンバーの経営陣や、初期投資総額500億円などで話題になった。従来のWebMDの独占を崩す医療ポータルとして、期待は大きかったのだが、どうやら失速感がはっきりしてきているようだ。 続きを読む

日本のHealth2.0シーン

新宿御苑でやっとミンミン蝉が元気に鳴き始めた。今年は蝉の鳴き始めが遅いような気がする。ともあれ盛夏到来である。思えば二月にTOBYOアルファ版を公開してから、早くも半年が経過しようとしている。立ち止まってゆっくり考える間もなく、春先から突っ走って来たわけだが、まだ当分はこのまま進むしかない。やらなければならないことは山積しているが、とりあえず現時点で当方が考えていることをいくつかメモっておこう。

まず、「日本のHealth2.0」ということで言えば、TOBYOをはじめ春先からいくつかスタートアップ企業がサイトデビューを果たし、従来にない動きが日本の医療情報サービス分野にもたらされたと言えるだろう。だが、それらはまだ少数にとどまる。それに、まさかわれわれがこのブログなどで、UGCやUGMとしてのウェブ闘病記の意義を主張してきたせいでもあるまいが、奇しくもこれらスタートアップは多かれ少なかれ「ウェブ闘病記」に焦点を合わせている。つまりプレイヤーが少数でありながら、特定テーマへの収斂が起きているわけで、これはあまり健全な状態とは言えないだろう。 続きを読む

新知識共有ツールとTOBYO

KNOL0807

Googleは23日、昨年末からテストしていた「KNOL」を正式リリースした。このブログでも概要は紹介済みだが、手短に要約すると「このKnolは特定分野の専門知識を持つプロフェッショナルに、特定テーマの知識・情報を公開発表するためのツールを提供するものである。」となる。発表されて以来、KNOLはWikipediaと競合するツールとして論じられてきたのであるが、正式リリース版をあらためて見ると、意識的にWikipediaとは違う知識共有ツールを目指していることがわかる。

特に、KNOLでは一つのテーマについて複数の書き手の複数のエントリを認めているが、この点は、Wikipediaとまったく異なった知識共有のあり方を示していると言えよう。「A unit of knowledge」というフレーズが語るように、個人が持っている専門的知識をウェブにコントリビュートする「知識単位」という位置づけであり、今のところそれらを無理に束ねて百科事典化するようなそぶりはないのである。もちろんこれら「知識単位」をカテゴライズして配列すれば、たちどころにWikipediaのような百科事典になるのだが。 続きを読む

Wikipediaの医療版、「Medpedia」年内に登場。

Medpedia

今日のTecCrunchに「MedPedia: 医療検索のWiki化を目指す」とのエントリが出ている。Wikipediaにもたしかに医療分野の情報は収録されているが、所詮「付け足し感」は否めず、やはり医療専門の百科事典メディアが欲しいものだと思っていたが、とうとう実現されるようである。

詳細はTecCrunchに譲るが、この「Medpedia」構想はかなり本格的な取組体制が頼もしい。これまでもWebMDなど個々の医療ポータルサイトで医療情報は提供されてはきたが、もっとオープンな参加性を備えたパブリックなプロジェクトこそが必要であったと思われる。その意味で、医療界はもちろん政府機関までを束ねたこの「Medpedia」プロジェクトは、今後、米国における社会的医療情報インフラへと発展する可能性を持つものと期待される。

日本でもこのようなプロジェクトは必要だろうが、「いったいどこがやるのか?」と考えてみると、はっきり言ってどこもやりそうにない。まず、医療エスタブリッシュメントがやるわけがない。この「Medpedia」プロジェクトの発起人を見ると、やはりベンチャー系の人のようだ。日本でもベンチャーが狼煙を上げるしかないだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.