波紋呼ぶGoogleの新規プロジェクト: Knol

knol

一昨日、12月13日、オフィシャルGoogleブログで発表された「Knol」がブロゴスフィアで賛否両論を巻き起こしている。Knolとは「知識の単位」を意味すると同時に、Googleの新しいプロジェクト名でもある。思いっきり要約すれば、このKnolは特定分野の専門知識を持つプロフェッショナルに、特定テーマの知識・情報を公開発表するためのツールを提供するものである。

しかし、「特定テーマの知識・情報を発表公開する」ということなら、既にWikipediaが存在する。そこでGoogleが新たにKnolを投入するのは、Wikipedia潰しを狙っているからではないかと指摘する声が多い。さらに、今月ベータ・ローンチが予定されているジミー・ウェールズ氏率いるソーシャル・サーチ・エンジン「Wikia」に対するGoogleの対抗措置ではないかとさえ言われている。

ではこのKnolはWikipediaなどと、どこが違うのか?。三つある。

●実名によるエントリー
●企業・団体の参加を認める
●広告収入がある

まず「実名」であるが、情報の信頼性は著者の顕名性によって担保される。これは、常にWikipediaの問題とされてきた情報の信頼性についての懸念を払拭するものである。次に企業・団体の参加は、企業・団体が持つ専門知識・情報が公開される可能性を開くものと言えるが、これはこれまでも企業サイト等で公開すれば済んでいたことであり、さらに企業側が単にプロモーションや広報という目的でKnolを利用してくることも考えられる。現に、広報会社などからはKnolを歓迎する声も聞こえてきている。最後の広告は、Googleがこれまで提供してきた広告サービスよりも、高い広告収入を著者に提供するとのことである。

ではこのKnolは、医療分野にどのような影響を与えるだろうか。Googleのオフィシャル・ブログにおけるKnol発表ページには、Knolのサンプル・スクリーンショットが掲出されているのだが、そこで例示されているのは「不眠症」をテーマとする医療情報である。つまり、GoogleはこのKnolでまさに医療情報が提供されることを予め想定しているのである。

ウェブ上の医療情報の信頼性を担保する方法は、これまでも様々に議論されてきたが、結局、サイト主催者ネームバリューが掲載情報の信頼性を支えるという構造からさして進歩してはいない。あるいは、「第三者」が「サイト認証」というお墨付きを与えるという方法も試行されてはいる。だがこれら「サイト単位」で情報の信頼性を担保するという発想は、フィードなどで「サイトの枠」を超えて情報が流通するようになった今日、すでにその有効性は怪しくなってきている。さらに「第三者認証」の場合、その「第三者」の信頼性が問題となる。例えば、自己の身元所属さえ隠蔽するような者が、他人のサイトを認証できるであろうか?。

これらに関して、当方は医療情報ページに著者実名を付すことが必要だと考えてきたが、今回のKnolはそれに近い考え方と言える。だが、果たしてこのようなツールをGoogleが提供する必要があるのかどうか・・・・・・首を傾げざるを得ない。

ともあれ、GoogleのKnolは従来の医療情報提供のありかたに、「情報発信者の顕名性」という問題を改めて提起していると言えよう。


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