医師向け検索エンジン: SearchMedica

SearchMedica

医療情報に特化した検索エンジンは、まず生活者・患者向けのバーティカル検索エンジンとして登場してきたわけだが、プロフェッショナル専用の検索エンジンは今まで現われていなかった。プロフェッショナルな医療情報検索と言えば、すでにPubMedのような定番的DBが存在していたためだろうか。

SearchMedicaは医師向けのバーティカル検索エンジンで、Googleのような汎用検索エンジンとは違い、信頼性が高く定評のあるサイトだけに検索対象を限定しているから、より効率的で適切な検索結果を得られる。ただ情報の信頼性という点ではPubMedを利用するのと差異はないので、なんとかして特徴となるメリットを切り出そうという努力が見られる。

まず検索ユーザーを特定することによって、より適切で参考価値の高い検索結果を提供しようとしている。ユーザーを「プライマリケア、精神科、腫瘍学・血液学」という四分野に特定し、ユーザーごとに検索タブを切り替えて使用するようになっている。次に、検索時にカテゴリーを指定して検索結果の絞り込みの便宜をはかっている。また、基本的にはバーティカル検索エンジンでありながら、その検索対象範囲を指定することもできる。

このように特徴づくりに苦労しているのだが、全体としてシンプルで十分な機能と操作性を持つプロフェッショナル・ユースのバーティカル検索エンジンに仕上がっている。だが、最近のエントリーの中で何回か指摘してきたが、これからの医療情報検索エンジンは、コミュニティ機能を備えたソーシャルサーチという方向へ進化していくのではないかと思われる。このことは「ウェブ上の医療情報をみんなで整理していく」というイメージに近い。その観点から見ると、このSearchMedicaは何か物足りないとも言える。また単にウェブ・ページをレイティングしていくだけではなく、プロフェッショナル・コミュニティをベースにして、サイト全体の機能配置や導線などについても「みんなで改善していく」という参加構造を作り込む必要もあるだろう。

このように医療情報の検索エンジンの問題を検討していくと、実はHealth2.0というものが、「検索とコミュニティ」という基本要素に支えられていることに改めて気づかされる。「検索とコミュニティ」というものは元来動的であり、参加者のウェブ行動の単純総和を超えるエネルギーを出力することもある。逆にWebMDに代表される「コンテンツを貯め込む」ような静的なスタイルの医療ポータルは、今後徐々に影響力を失うかもしれない。

今のところ人的エネルギーに頼っていることも、今後はXMLの活用によって、もっとエレガントに機械化できるかもしれない。その時には、医療情報のデータ形式などが、もっと厳密に定義されなければならないのだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>