ネットスーパーと闘病情報

昨日の朝、朝食を食べながら時計代わりのテレビをぼんやりと見ていたら、ニュース番組でネットスーパーの活況ぶりを報じていた。そういえば10年程前、ドットコムバブル崩壊前夜の米国でネット食品スーパーが多数登場していたことを思い出したが、その後どうなっただろうか。今日の日本で、大手量販店各社が一斉にネットスーパー事業に乗り出しているのは、年々リアル店舗の売り上げが減少しており、新しい顧客とそこへリーチするチャネル開発が必要になっているからだ。その際、ショッピング等であまり外出しないような高齢者が重要なターゲットとして浮上してきているのは想像に難くない。彼らにネットで在宅ショッピングサービスを提供すれば、低コストで地域高齢者の利便性に寄与することにもなる。

だが、ここでいつも決まっておなじみの「問題」が指摘されることになる。「ではネットにアクセスできない高齢者をどうするのか?」という問題である。二ー三年前に国立がんセンターがん対策情報センターを設置する際にも、主として患者団体などからこの「問題」が指摘され、ウェブサイトを開設するだけでなく、あわせて同等の内容をもったパンフレットを数百万部印刷配布することになったと記憶する。 続きを読む

ブログ論壇に入れてもらった

blog_rondan.jpg

佐々木俊尚さんが新著「ブログ論壇の誕生」の特別付録として、文藝春秋サイトで「佐々木俊尚が選んだ著名ブロガーリスト」を公開している。なんとなく見ていると、なんとこの「TOBYO開発ブログ」がリストの中に入っているではないか。光栄である。しかし、いや、驚いた。

だが、錚々たるブロガーが名を連ねるリストの中で、このブログはいかにも非力な新参者。医療とウェブをネタに、好き勝手にワーワーと、言いたい放題、書き散らかしてきただけである。たしかに米国と比べると、日本では医療とウェブを取り上げたブログは極端に少ない。Health2.0やPHRなど、新しい動きを論じるブログもあまり目にしたことがない。その意味で、少しは稀少価値があるのかもしれない。

ブログのみならず、日本の医療界自身とその周辺は無関心を決め込んで、今、世界の医療で起こっている新しい動きを知り論じる気配さえない。きわめて内向的になっているように感じられる。それが不満で書いているようなものだが、実は意外にも様々な方々から反応を頂戴している。当方元来、根がへそ曲がりときているが、ここは素直に感謝しておかなければならない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

見放された闘病者についての考察

sunset

最近、ご自分の闘病サイトをTOBYOに登録されるユーザーさんが増えてきている。また、ご自分と同病の他の闘病サイトを探し出して、登録して下さるケースもある。少しづつではあるが、TOBYOにとってはありがたいことだ。しかし、そのようにユーザーから登録された闘病サイトであっても、一応のサイトチェックを実施しなければならない。健康食品等の偽装サイトを除外するためであるが、なかには難しい判断を迫られるケースがある。

最近のケースでは、がんの闘病者がご自分のサイトを登録されたのだが、チェックのためにサイトを拝見してみて深く思い悩んでしまった。この方の場合、正規の医療機関で治療を受けたのであるが、結局、複数の医療機関から「根治のためではなく、延命のための化学療法しかない」との宣告を受けたのである。無論、本人にはがんを根治したいという意欲はあるのだが、病院からこのような宣告をされてしまうことは医療から見放されたも同然である。そこでこの方が選択したのは、様々な代替医療、民間療法のたぐいを積極的に試してみることであった。 続きを読む

「同質化」を越えて行く発想

NYC_MindSpace

ニューヨーク市保健局はこのほど、最大手SNSであるMySpace.comに10代の若者を対象とするキャンペーンサイト「NYC TEEN MINDSPACE」  をローンチした。欧米では若者のマスメディア離れが急速に進んでおり、マスメディア中心の従来型キャンペーンではターゲットにリーチできないとの判断から、SNS中心のキャンペーン展開に踏み切ったようだ。

このサイトでは、クイズやゲームを用意したりキャラクターを設定したりして、若者が気軽に楽しみながら健康情報を利用できるような工夫をし、特に「うつ、ドラッグ、暴力」など、ニューヨーク市の若者が直面している問題に取り組んでいる。

ところで、なぜこのニュースを取り上げたかというと、新しいヘルスケアのサービス開発を考える際、この「ティーンエイジャー」という層が、これまでほとんど無視されてきたのではないかと思ったからだ。たしかに医療に対するニーズは、一般に高齢者ほど高まるだろうから、自然とその開発方向はおしなべて「シニア」へとシフトするだろう。だが、闘病サイトの現状を見るなら、「うつ」をはじめ、特にメンタル系の病気で10代の若者による闘病記が激増していることに気がつくはずだ。 続きを読む

パーソナル医療情報検索

 TOBYO_Search

TOBYOでは、闘病記だけを検索対象とするバーティカル検索機能「TOBYO事典」を提供している。これは現在、「がん、良性腫瘍」分野を対象として様々にテストをしているが、近く全病名へと検索対象を拡大する予定だ。このようなバーティカル検索機能は日本語「闘病ネットワーク圏」を隅々まで可視化し、必要な体験情報に迅速に到達するためになくてはならないものだ。

ところで闘病者が医療情報を収集する場合を考えると、これら闘病体験情報に加えて、やはり専門的な最新の医学情報も必要となるだろう。そしてこれも闘病体験情報と同じように、Googleなど汎用検索エンジンを使うと、健康食品の売り込み情報など大量のノイズの中から、信頼のおける情報を見つけ出すのが大変だ。そう考えると、ここでもまた検索対象を限定したバーティカル検索機能が必要になるのかも知れない。 続きを読む