ニューヨーク市保健局はこのほど、最大手SNSであるMySpace.comに10代の若者を対象とするキャンペーンサイト「NYC TEEN MINDSPACE」 をローンチした。欧米では若者のマスメディア離れが急速に進んでおり、マスメディア中心の従来型キャンペーンではターゲットにリーチできないとの判断から、SNS中心のキャンペーン展開に踏み切ったようだ。
このサイトでは、クイズやゲームを用意したりキャラクターを設定したりして、若者が気軽に楽しみながら健康情報を利用できるような工夫をし、特に「うつ、ドラッグ、暴力」など、ニューヨーク市の若者が直面している問題に取り組んでいる。
ところで、なぜこのニュースを取り上げたかというと、新しいヘルスケアのサービス開発を考える際、この「ティーンエイジャー」という層が、これまでほとんど無視されてきたのではないかと思ったからだ。たしかに医療に対するニーズは、一般に高齢者ほど高まるだろうから、自然とその開発方向はおしなべて「シニア」へとシフトするだろう。だが、闘病サイトの現状を見るなら、「うつ」をはじめ、特にメンタル系の病気で10代の若者による闘病記が激増していることに気がつくはずだ。
これまで「10代-20代」層はHealth2.0でもポッカリ空いた空白地帯みたいになっていたが、そろそろ、ここを埋めるサービスが登場して来てもよいのではないか。今回のニューヨーク市によるSNS活用という事態は、この層がweb2.0を違和感なく使いこなす層であり、まさにHealth2.0のサービスへの受容性がきわめて高い層である、という事実をある意味で語っている。
ところで、今後、日本でもわれわれをはじめ、Health2.0のスタートアップ企業は増えてくるだろう。とにかく市場はまだ初期ステージにあるのだから、開発方位も開発対象も、アイデア次第でほとんど無限に存在するはずだ。だがこの段階で、みんながみんな同じ方位、同じ対象を目指して、しかも安直で低レベルな「模倣」に終始してしまえば、市場を豊かに開発することなどできなくなるだろう。ちがうビジョンを、ちがう言葉で語るような、そんな真のコンペティターの登場を望む。
三宅 啓 INITIATIVE INC.