ニュートン力学の医療情報観から知識・情報のブリコラージュへ

先月末から、TOBYOトップページに「日本の闘病記10000」とのヘッドラインを掲出している。現時点の収録病名数は657で、実際に闘病サイト情報を公開している病名は555を数える。一応、これで闘病情報の量的確保という初期の目標は達したと言えるのだが、収録サイト数が1件しかない病名が106もあり、これらを複数件にしていく努力は続けなければならない。また、どんどん新しい治療法や薬剤が登場しており、特にがん治療などでは「半年待てば、新しい治療法が登場する」と言われるほどのスピードで技術開発が進行している。つまり、最新の闘病体験を収録する努力も必要になっている。

まず、収録サイトが1件しかない病名の複数サイト収録だが、収録サイト数は多ければ多いほど良い。なぜなら、それだけユーザーが情報を比較し選択する余地が広がるからだ。これまで医療情報の提供と言えば、「情報の信頼性、確からしさ」という問題がセットで論じられるのが常であった。そしてある意味で、この「情報の信頼性、確からしさ」という決まり文句を言い放った時点で、それ以上さしたる具体提言も進展もないままに、これらの問題は終わってしまったかのごとくであった。これがいわばHealth1.0の医療情報観であり、結局これらの人々は、オーソリティや何の根拠もない「倫理コード」などを持ち出して、まるで「医療情報の正しさ」の番人でもあるかのように振舞って来たのだ。 続きを読む

秋休み、そして今後のこと

jingu

闘病記バーティカル検索エンジン「TOBYO事典」の最終的な調整はまだ続いている。でも久しぶりに休みを取り、秋の三連休をゆっくり過ごした。三日間のうち最初の二日は秩父宮ラグビー場で観戦、最後の一日は妻と秩父へ山歩きに出かけた。もう11月だが、秩父の山並みはまだ紅葉とはほど遠い。かえって神宮外苑の銀杏並木の方が色づきは早いようだ。 続きを読む

患者ニーズについての覚書

先日、TOBYO収録闘病サイト件数が1万件に達したが、この収集およびチェック過程で多数の闘病ドキュメントに触れることができた。それぞれの闘病の事実経緯のみならず、現場の雰囲気など暗黙知を蓄積できたことは、当方にとって今後の大きな財産になると思う。

それらおびただしい量の闘病体験から、たしかに「患者ニーズの実像」というものが、明確に姿を現したと思える瞬間をたびたび経験したのである。それ以来、「実践的で役に立つ情報」という言い方をしばしばこのブログでもしているのだが、このことはTOBYOの方向性を修正するきっかけにもなった。 続きを読む

参加型医療の時代

今日、TOBYOの収録闘病サイト数が1万件に達した。春先にこのブログで「ネット上にどのくらいの数、闘病サイトが存在するかは不明だが、1万件くらい収集すれば、およその見通しはつくのではないか」などと言ったこともある。実際に1万件にたどり着いてみて「およその見通し」がついたかと言えば必ずしもそうではないが、どんどん新規サイトが生まれており、闘病ネットワーク圏がますます膨張していることだけは確認できた。

「ネット上に自分の闘病体験を公開し、他者と共有する」という文化が自然発生的に生まれ、次から次へと伝承され、知識と体験がリレーされているのを見ていると、医療界という専門領域の外周を取り巻くような形で、闘病者の知識集合と体験集合の領域(闘病ネットワーク圏)が分厚く形成されつつあることが実感される。今のところ、医療界と闘病ネットワーク圏が直接交わる気配はないが、いずれ両者はどこかで出会い、相互に学ぶようになるはずだ。そんな確信がある。 続きを読む

闘病バーティカル検索ツール「TOBYO事典」、まもなく本格稼働

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TOBYOの中心的な機能である「TOBYO事典」。これは闘病ネットワーク圏に大量に蓄積された闘病ドキュメントを全文検索し、闘病体験、闘病集合知を隅々まで可視化するツールとして構想された。五月のTOBYOベータ版公開以来テスト運用を続けてきたが、ようやくTOBYOの全収録闘病サイトの全ページを検索対象としてフル稼働することになる。 続きを読む