闘病ユニバースの現状と将来

TOBYO収録の闘病サイトは今月中に1万5千サイトに達する。ウェブ上の闘病ユニバースに存在する闘病サイトの数をおよそ3万程度ではないかと推測してきたが、これでそのほぼ半分近くまで可視化することができたわけである。だが、この「3万」という数はあくまでも推測値であり、可視化作業を続けている当方の感触から言えば、もう少し小さいかもしれない。

では年間にどのくらいの闘病サイトが誕生してきているのだろうか。TOBYO収録の闘病サイトを設立年ごとに見ると、2000年以降では次のような状況になっている。(09年4月13日現在)

  • 2008       (3,218)
  • 2007       (3,125)
  • 2006       (2,844)
  • 2005       (2,363)
  • 2004         ( 750)
  • 2003         ( 365)
  • 2002         ( 275)
  • 2001         ( 229)
  • 2000         ( 216)

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バーティカル検索エンジン「TOBYO事典」

Gyoen_SAKURA

今週の新宿御苑は花見客で人出がすごい。週末など、朝早くからすでに入場門周辺には行列が出来ている。今日のような天気の良い日のお昼は、御苑の芝生に寝っ転がって空を見上げたいところだが、とにかく人が多すぎて落ち着かない。

さて、昨年から検索エンジンを開発してきているが、ずいぶん予定が遅れてしまった。1月10日にブログ検索をテスト公開して以来、クローリングのカバー率の改善に取り組んでいたが、一進一退、遅々として進まず、試行錯誤の末にようやく目標とする段階に近づきつつある。当面の目標は「1万人の闘病体験の全文検索」を文字通り実現することであったが、TOBYO全体の収録サイト数が増えたこともあり、なんとか実現まであと少し。

思えばちょうど1年前、3分咲きの新宿御苑の桜を見ながら思いついたのが、「ネット上に、闘病者の自発性に基づき、自然発生的に作られる「闘病ネットワーク圏」(闘病ユニバース)」というビジョンだった。このビジョンを持つことによって、TOBYOプロジェクトの方向性は固まった。そして自前の検索エンジン開発は、もちろん弱小ベンチャーにとってかなり難易度の高い仕事であったが、とにかくこれを実現できなければ「闘病ユニバース」に蓄積された膨大な闘病体験を活用することはできないのである。その意味で、後には引けない仕事だった。 続きを読む

闘病ユニバースの可視化

tenmon_nen

今年は「世界天文年」の年らしい。たまたま、あるブログに貼られていたキャンペーンバナーを目にし、ようやく「世界天文年2009」の存在を知った次第だ。キャンペーンビデオもYouTube で見ることができる。ところでこのキャンペーンバナーだが、なんとなくTOBYOのシンボルイメージに似てるし、偶然とはいえ「闘病ユニバース」という考え方にも通じるところがある。

そのTOBYOだが、収録闘病サイトが14,000件を超えた。これで一応「国内最大級の闘病体験データベース」と言えるところまで来たわけだが、今後さらに収集を続けていきたい。これら多数の闘病サイトを収集整理する過程で、ウェブ上の闘病体験についてさまざまなことが徐々にわかってきた。たとえば、闘病体験を書きやすい疾患と書きにくい疾患があるらしい、ということである。おそらく患者数では最大であるはずの2型糖尿病だが、その闘病サイト数はむしろ少ない方だ。2型糖尿病の10分の1程度の患者数である1型糖尿病のサイトの方が、かえって多いくらいだ。ではなぜ1型が書きやすく、2型が書きにくいのか。このあたりは謎だが、なんとなくわかるような気もする。 続きを読む

闘病体験をどう見るか

一般に「闘病記」を語るときに、「勇気をもらえる」とか「元気が出る」などの表現が用いられることが多い。だが、これは本当にそうなのだろうか。何か歯の浮く過剰な美辞麗句に過ぎないような気もする。このブログでは、闘病者生成コンテンツのことを様々に考えてきたが、われわれ健康者の一方的な思い入れに基づき、勝手に「勇気をもらえる」などと言い立てるのとはまったく違う見方で、おそらく闘病者たちはこれらの闘病体験ドキュメントを見ているのではないか。ある種の反省とともに、正直なところ常にそんな気がしていたのである。

最近、ある前立腺がんの闘病者ブログを読んでいると、次のように記されているのを目にした。

昨日の朝日新聞beの記事にもTOBYO,ライフパレット、オンライフなどのサイトに闘病情報が得られるとあり誘惑にかられて早速画面を出したが表紙を見た時点で詳しく中を見るのは怖くなってすぐ閉じた
辛い苦しい悲観的な情報をみつけたら気の小さい私は当然落ち込む
夜などついつい考え込んでは調べてみたい誘惑にかられるが
朝になるとその気は失せる
それを知ったからといって病状が変わる訳ではないだろうから
家族が気を使って慰めにいい情報だけを伝えてくれるのは有難い
落ち込んだところでいいことはないがそれでも最悪の結果を覚悟し容認しようと努めている、今後の展開にそなえて心の準備が必要だ
この先、治療方法がはっきりしたら情報検索するかもしれない
段階的に気持ちは変わるのだろうと思う
情報社会で情報を避けるのもおかしなものだ

        「前立腺がん闘病記-4 」(「一言孤児」

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桜の木の下の禅問答

sakura0903しばらくブログを休んでいたが、この間に一気に春到来。新宿御苑界隈の桜も一斉に開花しはじめた。さて闘病体験検索エンジン「TOBYO事典」だが、年初から、「1万人の闘病記を全文検索」とのうたい文句を文字通り実現すべく試行してきた。ようやく、なんとかもうすぐ拡張版を公開できるところまできた。これで一応、「国内初の闘病体験専門検索エンジン」を世に問うことになる。だが、今後まだまだ改良改善は続く。なぜなら、単なる「汎用検索エンジンの特化版」を作るところで止まってしまうのでは、闘病体験検索エンジンがもつ本来の可能性を殺すことになるからだ。実はTOBYO事典を開発しながら、これまで見えていなかったアイデアや可能性がいくつか出てきている。 続きを読む