FLRとTOBYO、そして社会的情報共有&フローシステム

FLR

先週のHealth2.0 SF 2010開催にタイミングを合わせてだろうが、イスラエルから注目のFirst Life Research(以後、FLRと略す)のサイトが正式にオープンした。これでこのサービスが目指していることが、かなりはっきりと把握できるようになった。

マーケティング・リサーチをはじめ各分野の調査研究活動は、この10年ばかりの間に大きく変貌をとげている。それを要約すると、仮説検証型からデータ駆動型への変化であると言える。各種デジタルセンサーやインターネットの登場によって、収集されフローするデータ量が爆発的に増加し、従来の「仮説構築-実験計画-実験データ収集-検証」という仮説検証型スタイルは、まずはじめに大量のデータを集め、解析することによって仮説を見つけ出し、そして検証するというデータ駆動型スタイルに変わってきている。データ収集コストが劇的に下がった結果、効率のよい実験計画を立てる必要はなくなり、「はじめにデータありき」になってきているわけだ。

このような変化の中で登場したのがTOBYO&DFCそしてFLRである。どちらもインターネット上に公開された膨大な量の患者体験データに注目し、それをアグリゲートし精製抽出した上で各種医療関連エキスパートに提供することをめざしている。つまり「これから患者体験データを集めよう」という発想から「すでに公開済みの大量のデータを利用する」発想へと変わってきているわけだ。私たちのTOBYOプロジェクトでは日本語圏ウェブに存在する約2万4千サイト、一方のFLRは英語圏ウェブの16万サイトをすでに収集しているが、とにかくデータ量の確保がこれからの調査研究サービスの前提であることは間違いないだろう。質を言う前に、量の確保が優先する。 続きを読む

Health2.0、TOBYO、DFC、そして10月

Shinjuku_in_Autumn

昨夜、帰宅してみると食卓に鍋が出ていた。少し早いが、それでも暖かい鍋を美味しく食べた。今日からもう10月。今月はまず、なんといっても来週サンフランシスコで開催されるHealth2.0コンファレンスのTOBYO&DFCプレゼンだ。いよいよTOBYOが世界に向かってデビューする。そして今月、DFC(Direct From Consumer)アルファ版が完成する。TOBYOプロジェクトにとって、この10月は大変重要な一ヶ月となる。

今までこのブログをご覧になればおわかりいただけると思うが、TOBYO開発のために、私たちはまず世界の動向に目を向け、世界の新しい潮流とシンクロすることを常に考えてきた。日本には日本独特の医療文化があり、医療制度がつくられているが、これらの内部に属し完結してしまうような発想では、決して新しい医療情報サービスは生み出せないからだ。その意味で、今回Health2.0コンファレンスでのプレゼンテーションは、これまでの私たちの方向性からしてきわめて自然ななりゆきだと思う。 続きを読む

逆説的所感から医療革命まで

IPS
昨日、「こんにちは、しばらく」と夏が戻ってきた。事務所の窓から外を見ると、大きな蜂がうろうろ飛び回っている。やがてとうとう、ベランダに出していた観葉植物の葉っぱの裏にぶら下がって休憩。この暑さに、蜂もまいっているようだ。しばらくするとトンボまで飛んできて、こっちも観葉植物の上で羽を休めていた。そして、今朝起きて石神井公園を散歩してみると、もう秋が来ていた。

夏から秋へ季節は変わる。依然として、当方はTOBYOプロジェクトとDFC開発に取り組んでいる。先週、ある新聞社から取材を受け、「TOBYOのアクセス状況はどうでしょうか?」と質問された。「まだまだ少ないですよ」との当方の返答に訝しげな表情をしているので、「闘病サイトが月間で何億ページビューもアクセスを稼いだら、それはそれでおかしなことですよ。病気のサイトにそんなに人が集まること自体、あまり良いことでもないでしょう」と続けた。

改めて考えてみるとTOBYO公開以来、私たちはアクセスを稼ぐことにあまり熱心ではなかったかもしれない。広告やSEOをはじめ集客のための手も、何一つ打ってきていない。それよりもジワジワと闘病者の間に浸透し、いづれ徐々に闘病活動に活用されるようになっていけばよい、くらいの考えであった。それにTOBYOはあくまで闘病者をターゲットにしており、無理に健常者まで集める必要はない。また、闘病体験とはある意味で「負の情報」であり、そもそも鉦太鼓で宣伝するような性質のものでもない。 続きを読む

TOBYO、世界へ!

Health2.0SF2010s

Health2.0 San Francisco 2010のエグゼクティブ・プロデューサーであるLizzie Dunklee氏から公式招待状が届いた。これでTOBYOとDFCのプレゼンテーションはコンファレンス・アジェンダに公式登録されることになる。いよいよTOBYOが世界にデビューするのだ。気合が入る。

招待状によれば、会期二日目の10月8日午後3時45分からサンフランシスコ・ヒルトンのユニオン・スクエアで始まる”Health 2.0 Around the World”セッションに登場することになるようだ。日本からはメドピア株式会社の比木COOと当方パートナーであるメディカル・インサイトの鈴木さん、そしてインドから2社、イタリアから1社がこのセッションに参加する。

インターネット黎明期から、日本語圏ネット上に自然発生的に形成されてきた闘病者のオープンコミュニティ。自己意識を持たない自生的コミュニティ。そしてそこに蓄積された膨大な闘病体験データ。私たちはこれを「闘病ユニバース」と名づけ、そこにある全ての闘病体験の可視化と検索可能化に着手した。こうしてTOBYOプロジェクトは開始され、カオス状態である闘病体験データを構造化し、秩序を与え、その貴重なデータを誰もが、いつでも、容易に、効率よく利用し、共有できることをめざした。 続きを読む

Curationによるデータ構造化

DCC

昨日、イスラエルのFirst Life Researchに触れたが、さっそく今日、二~三の方からお問い合わせを頂戴した。たしかにソーシャル・メディア・マーケティングという視点で医療を眺めるなら、TOBYOやFirst Lifeのような事業が出現するのは自然の流れと言えよう。ソーシャルメディアと医療といえば、本来なら、ソーシャル・グラフのパワーを活用した患者SNS事業などがメインに位置してもよいはずなのだが、残念ながら撤退したサービスもあり、その難易度は高いことがわかってきた。

それに対し、TOBYOやFirst Lifeは「すでにネット上にある公開データ」に焦点を合わせている。そして患者体験として公開されたUGCの構造化をめざしている。TOBYOは「すべての闘病体験を可視化し検索可能にする」とのミッションによって、患者体験UGCの構造化を宣言しているわけだ。実際にはブログなどUGCサイトにメタデータを付し、整理分類し、リスト化を進めている。First Lifeもほぼ同様の考え方をしている。だが、両者が違っているのは、TOBYOがCuration(自動生成データ等に対する人手による検証と修正)という方法を取っているのに対し、First Lifeはセマンティック技術で機械化しようとしている点だろう。「Medical Ontology」と彼らが呼んでいるのは、患者UGCを意味的に機械判別する仕組みのことと推測される。 続きを読む