TOBYO事典とX-サーチ

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8月が終わる。一時期涼しかったものの、最近ではまた蒸し暑さが戻ってきた。しかし夜には、あちこちでコオロギが鳴き始めている。

さて、TOBYOで公開している検索エンジン「TOBYO事典」とdimensionsで提供する検索エンジン「X-サーチ」の関係をよく尋ねられることがある。どちらもバーティカル検索エンジンではあるが、実のところ両者はまったく別物で、採用しているプログラム・システム自体が異なっている。

またどちらもTOBYOが可視化したデータを扱ってはいるが、対象としている時期が異なっている。守備範囲が違うのだ。TOBYO事典はあくまでテスト運用ということもあり、一昨年末までのデータを検索対象としており、その後の更新はしていない。対してX-サーチは広く最新データまで対象としている。従って検索対象サイトも、TOBYO事典が約1万4千サイトであるのに対し、X-サーチでは約3万サイトになっている。 続きを読む

新サービス「闘病CHART」: 患者話題ランキングとバーティカル検索の連動

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暑い。日本全国、夏休み。それでも熱く仕事は続く。熱気を帯びて湯気の出るアイデア創発も続く。冷蔵庫で美味しそうにゴロンと冷えているビールとスイカが力源だ。

先月サービスインしたdimensionsは、おかげさまで早速各方面から強い関心とお声がけを頂戴している。ところで先日エントリ「dimensionsの基本フレーム」 でも触れたが、実際にシステムを運用ベースにのせてみると、かなりのリソースが必要になることが分かってきた。特に全体としてデータ処理のスピードアップが求められるため、目下、従来のリソース・システムを組み替え、新システムへ移行中である。

さて表題の「闘病CHART」であるが、これはdimensions開発の成果を、今度はTOBYOや他の患者向けサービスへ転用しようというものだ。たとえば「乳がん患者が話題にしている薬品ベスト20」、「アトピーの患者が話題にしている治療法ベスト20」、「胃がん患者が話題にしている病院ベスト20」など病名別チャートを設置し、チャートインしたアイテムをクリックすればバーティカル検索をかけ、即座に薬品名など各アイテムについての患者の体験とレビューを表示するサービスだ。

これは、dimensionsのディスティラー(Distiller)が実現しているキイワード抽出およびリスティング機能に基づいている。ディスティラーでは病名ごとに上図のようなリストを作っているが、ある時、このリストを見ながらその意味を考えているうちに、これが患者がネット上で言及している「薬品、治療法、医療機関、検査・機器」分野それぞれの話題ランキングであることに気づいた。

これらのランキングはTOBYOのサイト属性データをベースとしており、特定病名ごとの患者ドキュメントを正確に切り出すことができる。つまり、たとえば乳がんの患者だけ、肺がんの患者だけ、関節リウマチ患者だけの話題薬品ランキングを最新チャートとして提供できる。そしてこのチャートとTOBYO事典を組み合わせることで、チャートインした個別アイテムの患者体験検索が即座に可能となる。 続きを読む

TOBYO、闘病ユニバースの3万サイト可視化を達成

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TOBYOの可視化闘病サイト件数は、本日(8月10日)、3万件を達成した。自己の貴重な闘病体験をネットに公開してくれたすべての闘病者の皆さんに、この場をかりて深い敬意と感謝の念を表したい。

インターネットが始まるとほぼ同時に、闘病者は自発的に自己が体験した事実をネット上に公開し始めた。それらを読んで自分の闘病の参考とした者が、続々と今度は自分の体験をネット上に公開した。そしてさらに後続の闘病者が・・・というように一種の闘病体験のリレーがネット上で自然発生的に起きたのだ。その結果、ネット上には夥しい量の闘病体験が蓄積され、やがてそれらはオープンでルースな、まさに「自律、分散、協調」を地で行くネットワークをゆっくりと形成していった。

TOBYOプロジェクトを企画する前段階で、私たちはこの自然発生的なネットワークの存在に気づき、後日それを「闘病ユニバース」と名付けた。当時を振り返ると、TOBYOプロトタイプに到達するまでに、私たちの前には複数の選択肢があった。その中のひとつは、いわゆる闘病コミュニティや患者SNSをつくるというものだった。だがすでに「闘病ユニバース」という巨大なネットワークが存在する以上、新たな闘病コミュニティをつくる必要はない。そして、これからコミュニティ=コンテンツ生成場を作ってコンテンツを集めるのではなく、すでにあるものを集めたほうが確実で早い。それに患者コミュニティなるものがそう簡単にワークするものではないことも、米国の状況などを研究してなんとなく分かっていた。 続きを読む

アラカン・ベンチャー

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明日は誕生日。今夜は前夜祭。うーむ。しかし歳を食ったものだ。「アラカン最後の誕生日」と来たもんだ。これでベンチャーをやっているんだから、感謝。これまで、「エッ!あなたが三宅さん?!」と言われたこともしばしば。「本当にあなたが、あのTOBYO開発ブログを書いている人なんですか?」と何回言われたか・・・・(笑)。よっぽど若いヤツが書いているように見えるらしい。

2008年2月にアルファ版をローンチしたTOBYOだが、収録闘病サイト3万件まであとわずか。そして、一昨年暮れから開発を進めてきたdimensionsがやっと完成した。当方の誕生日とあわせ、幸いにもいろんなことが良いタイミングでそろった。

そしてこれまで「闘病体験傾聴ツール」と言ってきたdimensionsだが、これからは「患者体験傾聴システム」との表現にしたい。もうすでにディスティラーとX-サーチという二つのツールがあるわけだが、今後、これらのツールは増やしていく。「患者体験傾聴ツールの集合体」という意味で「システム」という言葉を使おうと考えている。

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dimensionsの基本フレーム

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dimensionsはサービスイン。先週から本サーバで稼働をはじめた。当面、ここ一ヶ月〜二ヶ月程は「お試し期間」として顧客ユーザーに使ってもらう予定。同時にデータ取得、集計、更新など、主としてデータまわりのオペレーションを徐々に円滑運用の軌道に乗せていくことになる。プロジェクト企画段階ではデータ更新を一ヶ月ごととしていたが、いろいろ勘案した結果、ウィークリー更新をめざす。最終的にはデイリー更新を実現したい。

いずれにせよ当初想定していたよりも、はるかに強力なマシンパワーが必要になってきている。検索エンジンだけならまだしも、数百万ページのデータから数千語のキーワードを抽出カウントしたうえで出現場所を特定するために、集計時間が予想以上にかかることもわかった。だがこれらの経験は、次ステップでのマイニング・ツールなどの導入にきっと活かされるものと考えている。

そもそもdimensionsは、その基本フレームとして「患者体験ドキュメントのデータ構造」というものを考えるところからスタートしている。われわれは患者体験を主観的な物語としてではなく、まず時間軸上に配列された事実の連続体として見ることを考えた。その「事実」とはまさに患者が体験した医療事実なのだが、それらはさらに「こと、もの、評価」という三要素に分解できると思いついた。「こと」は検査、診断、入院、手術、など一連の医療過程を構成するイベント、あるいは時間軸を区切り特定の段階を表示するプロセス・インディケーターであり、普通名詞そして固有名詞で表される。「もの」は医療に実際に投入される薬剤、機器、治療法、さらに医療が行われる場である医療機関などであり、それらも固有名詞や名詞に分解できる。 続きを読む