dimensionsサービスイン。そして今後。

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日本初の闘病体験傾聴ツール”dimensions”(ディメンションズ)は、いよいよ今日からサービスイン。新しいデータが揃いつつある。まだ100%稼働には達していないが、これから徐々にフルサービス稼働へ持っていくことになる。

dimensions開発プロセスは当ブログでその都度触れてきているので、関心をお持ちの方は”dfc”や”dimensions”のタグが付いたエントリを拾い読みしていただければ、おおよそのことはおわかりいただけるだろう。ざっと振り返れば、一昨年暮れから昨年夏までおよそ半年で開発構想をまとめ上げ、昨年後半に基本システムを作り上げ、今年前半にデータ集計・改善と修正・デモをおこなった。

当初計画から見れば約半年遅れてしまったが、やはり前例のない未踏領域のサービス開発ということもあり、あれこれ暗中模索や試行錯誤があったことは否定できない。だが全体として開発プロセスを眺め渡してみれば、当初はぼんやり不分明な形をとっていたコンセプトやバリューや機能が、徐々に明確な姿を顕にしてきたと言えると思う。

dimensionsは闘病体験を医療関連固有名詞を含む事実から可視化している。そこで特徴的なのは、従来の「闘病記を読む」みたいな、個人が体験した事実を個人時間軸上にシーケンシャルに追跡するスタイルではなく、逆に固有名詞を軸に複数の闘病体験を切り出して見るという点にあると考えている。つまりストーリーや物語の呪縛から、固有名詞や医療事実を解放し、闘病体験について今までにない見方を提示できるところが新しいと言えるだろう。固有名詞や事実は物語の素材ではなく、医療の現実を構成する自立したデータであり、それらの出現場所と出現回数を特定することによって、医療の現実や、これまで不可視であった消費者の医療ニーズを顕在化させることができる。 続きを読む

講演会と新たな気づき

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昨日「医療の未来を考える会」のお招きにあずかり、「闘病体験の共有と傾聴」というテーマでおはなしをした。日曜午後という一週間で一番のんびりした時間帯にもかかわらず、たくさんの方々にお集まりいただいた。感謝。

会のメインテーマに「Health2.0で医療が変わる」とあったので、冒頭、駆け足でHealth2.0の概要を説明した。できるだけ手短に要約しようと今回あらためて考察してみたが、結局、Health2.0の原点は「伽藍とバザール」(1997)と「Cluetrain Manifesto」(1999)に行き着いてしまうと確認した次第。

エリック・レイモンドのオープンソースをめぐる古典的名作である「伽藍とバザール」を、スコット・シュリーブは第一回Health2.0カンファランス(2007)掉尾を飾るスピーチで引用している。伽藍的な知と技術の体系としての医療に対し、スコット・シュリーブは来るべきバザール型医療をビジョンとして提起したわけだ。ここから”User Generated Healthcare”や”Participatory Medicine”などのスローガンを導き出すのは容易だが、この「伽藍とバザール」という対比ほど明確にHealth2.0のビジョンを語る言葉はないと思う。

昨日もお話したが、「知の秩序・枠組みの変換期」という時代認識なしに、単にソーシャルメディア周辺のトピックスでお茶をにごすようなHealth2.0論では、本当に「医療を変える」ことなどできるわけもない。では医療は伽藍からバザールへ実際に移行するのかといえば、そんなに簡単には行かないだろう。おそらく巨大な変革モメンタムを必要とするに違いない。だが、医療を取り巻く状況は確実に動き始めている。
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浸透してきたTOBYOプロジェクト

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新宿御苑では紫陽花が咲き始め、ホトトギスが鳴いている。6月。早いもので、もう今年も一年の半分が過ぎようとしている。だが、振り返って懐かしい過去などベンチャーにはない。ひたすら前へ、全速前進であれ匍匐前進であれ、とにかく前進しなければならない。

「闘病体験の共有と傾聴」を旗印とする私たちのTOBYOプロジェクトは、いよいよdimensionsの来月サービスインへ向け秒読み段階だ。しかし、この時期に来てプログラマがダウンしてしまい入院。早い回復を祈るのみだが、残りの工程は見えているので、予定通り来月サービスインするつもりだ。

最近いろいろな人から聞くのだが、どうやらTOBYOがビジネス界とくに製薬業界でかなり知られてきているらしく、TOBYOを仕事に利用している方も多いとのことである。うれしいことである。それもTOBYOがというよりも、TOBYOを介して、闘病ユニバースに公開された闘病体験ドキュメントに対する関心が高まっていることがうれしい。これらドキュメントは本来、闘病者のみならず、医療関係者にとっても非常に高い価値をもつデータでありながら、これまで効率よく利用する手段がなかったのである。私たちが着目したのはこの「手段」を何らかの形で提供することであった。そして、TOBYOは闘病者のために闘病体験を共有する手段であり、dimensionsはプロフェッショナルの方々のための闘病体験を傾聴する手段なのである。 続きを読む

講演「闘病体験の共有と傾聴 ~ソーシャル・リスニングの時代へ~」のお知らせ。

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このたび「医療の未来を考える会」様からのご依頼を受け、来る6月19日(日)に開催される「第4回 医療の未来を考える会」で講演をおこないます。全体のテーマは「医療情報と患者さん Health2.0で医療が変わる」とのこと。当方は「闘病体験の共有と傾聴 ~ソーシャル・リスニングの時代へ~」と題し、「闘病ユニバースの生成、TOBYOプロジェクトの現状、ソーシャル・リスニング、dimensions」などを中心にお話しする予定です。

特に今年に入ってから、私たちは「リサーチ・イノベーション、ソーシャル・リスニング」など新しいテーマをTOBYOプロジェクトやdimensionsに導入しようとしているのですが、現時点における進捗状況をお伝えできると思います。どうか奮ってご参加ください。

実施要領は下記の通りです。またお申込みは、申し込みフォームを利用できます。 続きを読む

AskingからListeningへ

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いよいよdimensions開発の追い込み段階に入った。予定通り、7月からのサービスインへ向け疾走中。ここへ来て、これまでてんでバラバラに存在していた事々が、まるでジグソーパズルのピースが嵌るように、やっと徐々に明瞭な姿形を取りはじめてきたように感じられる。

これまで、dimensions開発の過程でいろいろ思い悩むことも少なくなかった。だが結局のところ、それらはdimensionsの応用領域あるいは守備範囲がきわめて広いところに起因する。何を機能の柱とし、一体どんな理解をしてもらえばよいか、絞りきるのが難しいと思えた頃もあった。

さらに、コンセプト開発の初期段階では見えていなかった課題が次々に立ち上がり、その都度あれこれ思考を重ねているうちに、たとえば「リサーチ・イノベーション」など従来のレガシー調査を乗り越える方向が見えてきたり、また「リスニング・プラットフォーム、ソーシャル・メディア・リサーチ」など今日的なイシューが私達の視界に飛び込んできたりもした。 続きを読む