医療ビッグデータ・マーケティングの地平へ

Network from Michael Rigley on Vimeo.

このクールなアニメーションは、カリフォルニア美術大学のMichael Rigley氏の制作によるもので「情報可視化アニメーション」(Information visualization Animation)と呼ばれているらしい。(※このビデオは残念ながら削除されたようだ)(再注:その後、ファイルは復活し再生可能になっている)

今月18日でTOBYOは四周年を迎えるが、ローンチ以来一貫して取り組んできたことは「ネット上の闘病体験の可視化」、すなわち「データの可視化」ということに他ならない。そうやって3万3千サイト、450万ページのデータをひたすら可視化しDB化してきたわけだが、今後もこれは私たちの活動のベースになるだろう。

TOBYOプロジェクトは、いずれ5万サイト、さらには10万サイトの数千万ページあるいは数億ページを可視化する日が来るだろう。そして数千万ページ、数億ページのデータを可視化できたとき、私たちは現代の日本人が病気と医療にどう向き合って、何を思い、どのような暮らしを送っているかを、空理空論としてではなく、データに基づいて正確に細部まで具体的に知ることができるようになるだろう。そしてそれらの傾向を抽出することによって、医療についての日本人の「一般意思」を可視化し、検討することができるようになるだろう。私たちが究極的にめざしている到達点はそこにある。 続きを読む

EHRを各種ソリューションのプラットフォームへ


厳寒のせいだろう、新宿御苑の梅はまだ硬い蕾で例年よりも開花は遅れている。

前回エントリでEHRの新たな可能性について触れたが、これに関連し、他にもさまざまな方向からのアプローチがあることがその後わかってきた。その中の一つは、EHR上に医療情報サービスの統合プラットフォームを提供しようとするもの。そして今一つは、それぞれのEHRの仕様の違いを越えて患者データをアグリゲートするものである。

上に掲出したCMのDr.Firstは前者のサービスである。もともとこの会社はEHRベンダー各社に対し電子処方箋サービスを提供してきたが、今日ではより広くEHRをプラットフォームとした各種ソリューションの提供をめざしている。たとえば薬剤コンプライアンス・プログラム、患者教育プログラム、薬剤共同購入ディスカウント・サービス、さらには患者の薬歴を集約し医療機関や検査ラボに提供するサービスなどである。 続きを読む

EHRは医薬品情報配信の新たなチャネルになるのか?

このブログではEHRの話題はずいぶんご無沙汰だったが、オバマ政権誕生以来、米国では政府の強力な導入促進政策が功を奏して、EHRは急速に全米の医療機関に導入されつつある。

ところで普通EHRというと、これまで診療記録など、各種医療情報記録のためのデータベースということが主たる利用イメージであった。しかしEHRの普及が進むに連れ、せっかくほとんどの診療現場がEHRで結びつけられようとしているのだから、単なる記録用データベース以上の使い方をしても良いのではないか、という声が昨春あたりから起き、新しい模索が始まったのである。現在、政府FDA、製薬企業、EHRベンダー、ペイヤー、医療情報サービス企業などが、これら新しいEHR利用の研究に乗り出している。従来、EHRとはほとんど縁のなかった製薬企業などが関心を示し始めたのだ。

EHRの新しい用途として考えられているのは、診療現場へダイレクトに情報を配信する情報チャネルとしてEHRを利用しようというものだ。たとえば、FDAの各種規制情報や医薬品副作用情報の配信、製薬企業の医薬品情報配信やマーケティング・チャネルなどへの利用が検討されている。 続きを読む

ウェブ医療サービス時評 2012.2

AdverseEvent

2月に入ったが例年にない寒さだ。先月下旬から当方、痛風発作に見舞われ自宅蟄居状態が続いたが、ようやく回復。歩行リハビリ中。「アルコール・リハビリ」もする予定。

さて年明け早々、WebMDの経営が行き詰まり、トップが辞任するというニュースが伝わってきた。あの「WebMD」がである。「まさか!」と思ってニュースを読むと、近年ユーザー離れとスポンサー離れがかなり深刻になっていたらしい。当然スポンサー筋は製薬企業中心だが、特に特許切れでジェネリックが進出している薬剤のプロモーション費用をすべてカットされたらしく、これが収益構造を直撃したようだ。

また、医師コミュニティの代表格だったSermoもここへきてかなり苦戦している。昨年12月のアクセスデータを見ると月間ユニークユーザー数激減(このままでいくと月間1万を切る)。訪問ユーザーの平均サイト滞在時間は5分。大丈夫か? 続きを読む

食べログに関する諸々

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上の写真は、当方オフィス壁にあるカレンダーだ。妻からもらったものだが、絵がなんともユーモラスで面白い。とりあえず、一月から三月までのワンクール分を貼ってみた。そう言えば、一月も終りが見えてきた。

年明け早々、ネットでは「食べログやらせ問題」というのが出てきて、現在もあちこちで議論されている。このようなクチコミ・サービスでは、「やらせ」は当然あるとの前提で情報を利用するのが普通だ。そこを、極端な公正さをもとめること自体が間違いだ。「やらせかどうか」などといくら追及してみても、ムダというものだ。そんなものは最初からある、と考えるべきだ。

ところで昨年ニューヨーク・タイムズに、ある患者がクリニックへ行ったら、医師から藪から棒に「私は今回の診察および治療について、ネット上のクチコミサイトには一切投稿しないことを誓約します」との誓約書にサインするよう求められたという記事があった。米国では、医師個人に対するクチコミ評価サイトが大繁盛しており、これに対し医師側からは「医師のプライバシーと権利を守れ」との反対論が強く出されている。

この患者の場合、身体の痛みを早く何とかしてもらいたいので、やむなく誓約書にサインをしたが、後日、症状が一向に改善しないので、医師評価クチコミサイトに「〇〇医師の治療は最低だ」とのコメントを書き込んだ。これが医師に見つかり、患者の手元には誓約書違約金の請求書が医師から届けられたという。患者はこれを不服とし、現在、係争中である。

この伝でいくと日本でも、たとえばラーメン屋に入ってラーメンを注文したら、「私は、この店のラーメンについて、食べログなどクチコミサイトで不当な悪評コメントを、一切書きこまないことを誓約します」との「ラーメン誓約書」に、まず署名してからラーメンを食べるよう店から要求されることになるのだろうか。これはめんどうだ。 続きを読む