闘病情報の標準化について

ずいぶん時間はかかったが、TOBYOプロジェクトは闘病ユニバースのうち約1万6千件の闘病サイトを可視化し、「1万人が書いた闘病記の全文検索」を実現するところまで来た。もちろん今後も、引き続き闘病ユニバースの可視化件数を増やし、検索精度の向上に努めていかなければならないのだが、実は次のステップについてもビジョンづくりを進めている。

まだボンヤリしたイメージに過ぎないし、言葉としても練れていないのだが、次に私たちが取り組むのはおそらく「闘病情報の標準化」というテーマになると思われる。現在、TOBYOプロジェクトが取り組んでいるのは、ウェブ上に分散する不定型な闘病体験情報を分類整理し検索可能にすることだ。このことによってはじめて、自発的に形成された闘病ユニバースにすでに存在する膨大な量の体験情報が、誰にでも簡単に活用できるようになる。だが、これら闘病体験情報は不定形であるがゆえに、相互に比較しにくく、統計処理もしにくいような定性的データである。つまり「個別闘病者の個別体験」という自己完結性を強く持ち、それらを横断的に比較参照して「何かについての評価をおこなう」ようなデータではない。この際の「評価」とは、まず端的に言って「医療機関評価」ということになるだろうが、さらに「医療者、治療法、薬剤、医療費の評価」へと展開されるだろう。 続きを読む

増加するビデオ闘病記

GuillainBarre

最近、ビデオコンテンツを置く闘病サイトが増えてきている。たとえばギラン・バレー症候群の闘病サイト「ギランとバレー Case of Garuda 10」では、「リハビリ報告」というタイトルでリハビリの詳細な様子を、一回に付き数本のビデオで紹介している。たしかにリハビリメニューなどの内容を説明するには、文章よりも映像の方が手っとり早い。そのためか、この闘病サイトではビデオがメインであり、文章はそれを補うものという位置づけになっている。また、リハビリ時の身体運動を映像記録することによって、機能回復の程度を視覚的に確認することができる。さらに、さまざまなリハビリメニューをこなしたという達成感を、ビデオから得ることもできるのだろう。リハビリ記録にはビデオが向いていることを、この闘病者は発見したのである。

この他にも、闘病サイトにビデオコンテンツを利用するケースは増加してきている。この理由の一つには、ブログサービス提供者が、ビデオコンテンツを簡単にポストできるような機能を提供し始めたこともあるだろう。またYouTubeなどで、ビデオをネットにアップすることが日常的に行われるようになったことも大きい。 続きを読む

雨の日曜日

paraiso

今日で5月もおしまい。雨の日曜日、終日、音楽を聴いて過ごした。昨日、朝日新聞夕刊を食卓に広げて見ていたら、細野晴臣さんのインタービュー記事に目が止まった。記事では、意外にもあの「はらいそ(Paraiso)」についての回顧が語られていた。1978年の作品だが、傑作である前作「泰安洋行」に比べると世評あまりパッとしない。しかし横尾忠則氏のジャケットデザイン(上図)も秀逸だが、疑いなくこちらも傑作である。当然、発売時に買い求めて以来ずっと愛聴してきたが、そういえばしばらくご無沙汰していたので久しぶりにターンテーブルに盤を置いた。いやあ、やっぱりハリー細野は良かった。ニューオーリンズR&Bのグルーブ感をベースに、沖縄、東南アジア、中近東、ブルガリア、ブラジル、ジャマイカなど世界各地の音楽が渾然一体。おすすめです。 続きを読む

米国、医療過誤で10年間に100万人が死亡!?

 err_is_human先日、米国消費者団体のConsumers Union(CU)が発表した医療過誤、医療事故についてのレポートが話題になっている。レポートのタイトルは「To Err is Human – To Delay is Deadly」だが、「To Err is Human」とは今から10年前、1999年に米国IOM(医療研究所)の「医療の品質に関する委員会」が出した有名なレポートの表題でもある。(”To Err is Human: Building a Safer Health System”)。このIOMのレポートは日本でも「人は誰でも間違える―より安全な医療システムを目指して」(日本評論社,2000)との書名で訳出され、医療界で大きく注目された。

IOMレポートでは、当時、米国医療において毎年9万8千人が医療過誤で死亡しているとショッキングな警告をしている。安全性確保のための米国医療界の取り組みは、他のハイリスク産業に比べて10年以上遅れており、今後、医療過誤などを減少させるための全国的調査専門機関の設置などが必要だと提言している。 続きを読む

メイヨークリニックのソーシャルメディア戦略

一週間前のエントリで、病院のソーシャルメディア利用ガイドを紹介した。(「病院とソーシャルメディア」) その中でも少し触れたが、今度はメイヨークリニックのソーシャルメディア戦略を概観したスライドが発表された。メイヨークリニックは米国医療機関屈指のトップブランドだが、その長期的ブランドアセット構築のために、最も先進的で、戦略的なマーケティングとコミュニケーション活動に取り組んできたことで知られる。

Web2.0に対しても医療機関としていち早く対応し、ブログ、ポッドキャスト、Twitter、YouTubeなどソーシャルメディアを積極的に活用している。以前から「医療情報配信サイト」として注目された「メディカルエッジ」の他に、最近、ソーシャルメディア向けプラットフォームとして「Sharing.mayoclinic.org」を新たに開設したようだ。このことによって、いかに低コストで効果的な社会とのコミュニケーションを生み出すことができるかなど、このスライドでは具体的な例が多くわかりやすい。とりわけ次のフレーズが印象に残った。

Don’t pitch the media
Be the media

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