医療解放構想

locust

梅雨明けはまだか。夏を待つ週末。でも梅雨が開ける前にやることがある。蝉どもが喧しく鳴き始める前に静かに音楽を聞くこと。ここ石神井公園の夏は蝉の声で充満し、スピーカーから出てくる音の高音部が聞き取りにくくなるほどだ。特にドラムスのハイハットの切れがマスクされ、リズムのタイトさが劣化する。蝉が来る前に音楽を聞かねばならないし、その後は蝉が去るまで、秋まで待つしかなくなる。というわけで音楽を聞き込む週末になった。

そして昨日は選挙。今回の参院選はとにかく盛り上がりにかける選挙だった。いつのまにかなんとなく始まり、そして大方の予想通りの結末を確認するだけで終わった。だが、民主党の政治家というのはどうしてこうもやり方が稚拙なのか。長年の野党体質が染み付いてしまったせいか、権力行使の局面でぎこちなくあたふたするだけのように見える。「柄に合わない」ことを無理にやっているように見える。その場逃れの弥縫策しかないのか。今必要なのはビジョンドリブンな政策を提起できる政治家だが・・・・・。

さて、昨日の朝日新聞beを眺めていたら、次のような記事が目に入った。タイトルは「医師の技術や知識を人々に解き放ちたい」というもの。 続きを読む

最初にコミュニティ(闘病ユニバース)ありき

 ShinjukuCafe

これまでこのブログで何回も取り上げてきたが、私たちのTOBYOプロジェクトは、旧来の「闘病記」の延長で闘病ユニバースを捉えているのではない。同様に、旧来の「患者会、NPO、支援団体」の延長で、今ネット上で進行している「闘病グラフ」の可能性を捉えているのでもない。私たちは、何か医療に関わる啓蒙的な理念やスローガンを掲げて、患者、消費者に呼びかけるようなことをやるつもりはまったくない。むしろ、この15年の間に、日本語ウェブにおいて闘病ユニバースを自律的に創造してきた闘病者たちの後を追い、その活動成果を私たちはフォローして行っているに過ぎない。

最初にコミュニティ(闘病ユニバース)ありき。

そしてそのコミュニティは、オープンでゆるいソーシャルグラフを形成しながら自発的に発展して行った。そこには従来の医療の専門家、啓蒙家、評論家、関連団体などの姿はない。正確に言えば、これら闘病者たちの自発的な活動は、旧来の専門家から発せられるワンウェイの情報伝達を乗り越え、専門家たちから得た知識情報を比較引用しつつ、自分たちの体験を共有することで集合知を作り上げ、さらに相互学習(Social Learning)さえ開始したのである。

TOBYOは、このような闘病ユニバースの持つ巨大な可能性を実際に引出すためのツールであるにすぎない。つまり闘病ユニバースが主でありTOBYOは従であるような、そんな関係であるから、TOBYOが「主」を置いて何か啓蒙的な呼びかけをすることはない。そしてこのような闘病ユニバースの成り立ちと、旧来の「闘病記」や「患者会」などは全く無関係である。 続きを読む

医療経済-福祉厚生社会と伊藤計劃

harmony

先月6月18日、政府は「新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ」を閣議決定した。この中で「強みを活かす成長分野」として以下の三分野があげられている。

(1)グリーン・イノベーション
(2) ライフ・イノベーション
(3) アジア経済

この「(2)ライフ・イノベーション」には「医療・介護・健康関連産業を成長牽引産業へ」との副題が付されている。昨年来、政府は医療・介護分野を「成長の柱」として位置づけてきたのだが、こうも声高に「医療を成長分野に!」と言われてしまうと、なにか違和感を強く感じてしまう。たしかに特にバイオ先端技術などが次世代成長分野であることは間違いないのだが、それでも「医療・介護で経済成長!」などとハデにブチ上げられると、そのお手軽で軽薄な調子の良さに居心地の悪さを覚えるのだ。

そんなことを考えているさなかに、たまたま書店で手に取った「ハーモニー」(伊藤計劃、早川書房)には、まるで当方の心を見透かすかのように、以下の紹介文が付されていた。

「一緒に死のう、この世界に抵抗するために――」
御冷ミァハは言い、みっつの白い錠剤を差し出した。21世紀後半、〈大災禍〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は医療経済を核にした福祉厚生社会を実現していた。誰もが互いのことを気遣い、親密に“しなければならない”ユートピア。体内を常時監視する医療分子により病気はほぼ消滅し、人々は健康を第一とする価値観による社会を形成したのだ。そんな優しさと倫理が真綿で首を絞めるような世界に抵抗するため、3人の少女は餓死することを選択した ──。
それから13 年後、医療社会に襲いかかった未曾有の危機に、かつて自殺を試みて死ねなかった少女、現在は世界保健機構の生命監査機関に所属する霧慧トァンは、あのときの自殺の試みで唯ひとり死んだはずの友人の影を見る。これは、“人類”の最終局面に立ち会ったふたりの女性の物語 ──。『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。

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Health2.0の事業プレイヤーとして

 tables&chairs

私たちは、昨年の秋頃にNPOへの移行を漠然と考え始めていた。そしてそのことをこのブログで公開もしたのだが、それは当時、「TOBYOのようなサービスは、むしろNPOのような非営利事業スタイルのほうが向いているのではないか」と考えていたからだ。だがそれから時間が経つに連れ、次第にそれら「NPO路線」は私たちの中で自然に消えていった。

どの時点でその転換点があったのかと問われると、明確に返答できない。おそらくいくつかの複数の契機があったはずだが、そのひとつは昨年末に”Data is the next Intel inside”との「2.0の原点」に回帰したことだろう。この原点回帰によって、データを起点としたマーケティング・サービス創造という方向が明確になった。そしてそのことはやがてDFCへと繋がっていくわけである。当時、まだHealth2.0のビジネスモデルは多分に不透明であったが、今にして思えば、PatientsLikeMeとSermoの成功を徹底的に分析しておけば、「データ起点」の方向にビジネスモデルがはっきり見えていたはずなのだ。 続きを読む

病院ロボットの時代


英スコットランドの”Forth Valley Royal Hospital”で、英国初の病院ロボットが導入されることになった。8月の同病院オープンに備え、現在、ロボットのテスト稼働がおこなわれている。当面は地下室で各病棟との荷物のやりとりに使われるが、いずれは病室や手術室の清掃、さらに医療資材や薬剤の仕分け・配送などにも使われる予定らしい。院内感染リスクと人的コストを下げる効果が期待されている。

ロボットやナノマシンのような先端テクノロジーの医療への導入は、「医工連携」の掛け声のもとにどんどん進んでいる。これらがアウトカムなど医療品質の向上やコストダウンなど、具体的に目に見える成果につながってほしいものだ。

だがこのビデオを見る限り、あまり高度な「ロボット」ではないようだ。これでは自走式フォークリフトにしか見えず、ガッカリしてしまう。「アトム」はまだか?

「アトムの子」三宅 啓  INITIATIVE INC.