PatientsLikeMeが疼痛管理サイトReliefInSiteを買収


2月16日、米国トップ患者SNSサイトであるPatientsLikeMeが、疼痛管理サービスを運営するReliefInSiteの買収を発表した。ReliefInSiteについては以前このブログでも紹介してあるので詳細は「患者と医師を結ぶウェブ疼痛日記:ReliefInsite.com」をご参照あれ。

Health2.0のマシュー・ホルトなどは「今後、患者SNSはツールと統合していく」との予測をしていたが、「今回の買収合併は自論を裏付けるもの」とコメントしている。たしかに患者SNSは単なる同病同士の人的交流の場にとどまらず、ますます「患者の問題解決」を具体的に支援する方向へ進化していくと思う。その代表格がPatientsLikeMeであるのだが、この買収によってPatientsLikeMeは会員の疼痛管理ツールを手に入れ、一層、会員の問題解決に寄与できることになる。なんといっても疼痛管理は、患者の闘病生活において大きな比重を占めているからだ。

患者SNSは早急に汎用SNSとの差別化を図らなければ生き残ることは難しい。その際、患者が求める機能を実現するツール開発は、今後ますます重要になるだろう。

ReliefInsite.comの具体的な使用例が、ビデオで公開されているので紹介しておきたい。このビデオではRSD(反射性交感神経性ジストロフィー)患者の女性が、ReliefInsiteを使って実際に疼痛管理をしている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

TOBYOのネクストステージ

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TOBYOでは、これまで「ネット上の闘病サイト群」から成るルースで自然発生的なコミュニティを「闘病ユニバース」と呼び、その可視化を進めてきた。これは端的に言って、闘病サイトを一つ一つ調査し「どこにどんな病気の体験があるか」を明らかにするものであり、いわば闘病ユニバースのマップを作るような作業であった。そして現在、2万件近い闘病サイトがこのマップ上にプロットされたわけだ。

次に、このマップを参照してTOBYOのクローラが闘病サイトを訪問し、検索キャッシュを取得し保存蓄積していくことになる。現在、約300万ページのデータが蓄積され、バーティカル検索エンジンによって検索可能となっている。TOBYOプロジェクトは、このように二つのステップを経て現在に至っているわけだ。ではこの「次」は一体どうなるのか?

昨年年末から、闘病体験データを社会的に還流させ、さまざまな問題解決に寄与していくイメージをこのブログで書き出してきたが、それは最終的にDFC(Direct from Consumer)というコンセプトにまとめあげられた。DFCを具体化するために、テキストマイニングなどブログリサーチの手法を検討しているわけだが、この前提として、TOBYOが把握している「Consumer」の可視化を、現状よりさらに推し進めなければならないのではないかと考え始めている。 続きを読む

医療分野のTwitterメッセージを可視化する: The Health Tweeder

HealthTweeder

HealthTweeder は、医療関連のTwitterメッセージを可視化するツール。Twitterメッセージを病名や症状ごとにペトリ皿にまとめている。メッセージ数はペトリ皿の大きさによって表示されるから、今話題になっている医療関連テーマが一目でわかる。おもしろい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

変化し始めたPHR像について

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先月、RevolutionHealthは2月いっぱいでPHRサービスを停止すると発表した。このことは米国の医療ITコミュニティで少なからぬ波紋を呼んでおり、医療情報システムの中でもっとも注目されてきたPHRの将来を不安視する議論も出てきている。

だがRevolutionHealthのPHRは、ユーザーが自分の医療情報を手作業で入力するような「DIY型PHR」であり、結局、このようなモデルのPHRがワークしないことが実証されただけであるとの見方が多い。もともと、煩雑さがデメリットであることはわかっていたというわけだ。事実、RevolutionHealthでPHRを利用していたユーザー数は、わずか数百人に過ぎなかったと発表されている。

現在、個人医療情報を蓄積しているのはたとえば医療機関のEHRだが、GoogleHealthやHealthVaultなど新しいモデルのPHRはこれらからデータを入手し、ユーザーが自分で入力することはない。しかしGoogleHealthやHealthVaultなどのPHRが、今後順調に発展していくかどうかについても、最近これを疑問視する見方も出てきている。各種世論調査によれば、米国においてPHRは消費者にほとんど認知されておらず、またその必要性についても肯定的な意見は少ない。これらから、いわゆる「Direct-to-Consumer」型PHR市場の成立は容易ではなく、相当時間がかかるのではないかと見られはじめている。

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海外動向と今年のTOBYO

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新年になって海外のHealth2.0関連ブログをざっと見てみたが、新規性のあるプロジェクトやテーマはあまり見つからなかった。だが、今年はHealth2.0コンファレンスが3回も予定されている。4月にパリ、6月にワシントン、そして10月にサンフランシスコ。特にパリ・コンファレンスだが、ヨーロッパでHealth2.0がどのように受容されるかが興味深い。しかし、2007年秋に第一回が開催されてから、今年でHealth2.0コンファレンスも四回目になるが、PatientsLikeMeやSermoに続く成功事例が出てこないのが気になる。昨秋ローンチされたアダム・ボズワースのkeas(キーアス)あたりに期待したい。

さて新年になって、Microsoftの検索エンジンBingが医療情報検索時のパワーアップを図ったようだ。まだ米国だけのサービスのようだが、病名などをキイワードに検索すると、関連症状、関連薬剤、関連医療機関のリストが表示される。さらにたとえば医療機関を選択すると、医療機関プロフィール、HHSが公開している当該病院の患者満足度データ、そして近隣医療機関などが表示されるなど、通常の検索結果以外に特別の医療関連情報を表示し、スピーディーで適切な医療情報検索を目指している。

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